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電波で情報を送れる仕組み 1 :塩田紳二のモバイル基礎講座 第5回: (5/5 ページ)
無線で通信ができるのは、伝えたい情報を電波に載せる「変調」という操作のおかげです。ASK、FSK、PSKなどの変調方式のほか、より多くの情報を送るためのQPSK、16QAMなどについても解説します。
さらに多くのビットを送るためには、PSKとASKを組み合わせます。いま、振幅の大きさを円の半径、位相を角度によって決まる円周上の点とすれば、例えば16シンボルでは、下図のようになります。
これをQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)といいます。16種類のシンボルを送るなら、16QAM(あるいは16値QAM)といいます。これは、ケーブルモデムなどで使われる変調方式です。
4つの位相と4つの振幅を組み合わせ、多くのビットを送れるようにした16QAM
なお、変調関係などでよく、「直交」という言葉がでてきます。これは、文字通り、直角に交わるという意味ですが、関数などの性質として使われることがあります。「直交性」(あるいは直交関係とも)があるとは、簡単にいえば、直角に交わるX軸とY軸のような関係があることです。直交性がある場合、計算により、合成されたものを分解することが可能だという性質があります。たとえば、三角関数のsinとcosには、直交関係があるため、これらから合成された関数からsin、cosそれぞれの成分(係数)を取り出すことができます。この性質を使うと、sinとcosに対応する2つの信号に別々の情報をのせて合成した信号から、また元の2つの情報を取り出すことができます。
次回は、拡散処理(二次変調)について解説します。
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