ウィルコム、PHSコアをモジュール化
PHSコアをアンテナ含めてモジュール化した「W-SIM」を発表。無線機器の開発ノウハウを持たない企業でも、携帯電話機が開発できるようになる。
ウィルコムは7月7日、PHSの通信部分をカード型のモジュールに収めた「W-SIM」(ウィルコムシム)などを発表、「WILLCOMコアモジュール」構想を明らかにした。
開発が難しい通信部分をまとめることで、外側の端末部分を容易に作れるようにするのが狙い。「すぐれた技術をお持ちの会社がたくさんあるが、無線が得意ではないため携帯端末事業への参入が難しかった。企業のコアではない無線の部分の負担を軽減したい」(ウィルコムの八剱洋一郎社長)
W-SIMを使った端末は、「WILLCOM SIM STYLE」と呼ばれる。通信部分にモジュールを使うことで、少量生産にも対応できる。音声電話機のほか、データ端末などが想定される。年内に対応機種が投入される見込みだ。
ウィルコムではモジュールを使った開発を促進するため、「WILLCOMコアモジュールフォーラム」も設立する。通信機器ベンダーのほか、ソフトウェアベンダーなども参加する予定で、アップルコンピューターやカシオ計算機、京セラ、三洋電機、東芝、トミー、日本IBM、バンダイ、富士通、マイクロソフトなど約50社が賛同を表明している。フォーラムに参加することで、モジュールのスペックが開示されるほか、ウィルコムの無線ネットワーク改善プログラムにも参加できる。
アンテナ内蔵のW-SIM。通信速度は128Kbps
W-SIMは、PHSの通信機能からアンテナ、電話帳メモリなども内蔵するモジュール。音声通話のほか、回線交換/パケット通信も可能。台湾およびタイでの国際ローミングにも対応する。データ通信速度は最大128Kbpsで、電話帳700件分に相当する約600Kバイトのメモリも備える。構内PHS機能やトランシーバー機能は今回は省かれた。
独自の18ピン仕様で、ユーザーが抜き差しすることも可能になっている。モジュール自体が独立した電話機として認定される構造になっており、外側の電話機部分はTELECやJATEなどの認定が必要ない。
W-SIMの価格は未定だが、「1万円を超えることはなさそう」(八剱氏)。
現状のデータ通信速度は最大128Kbpsだが、今後高速化も図っていく。「今から10カ月のタイミングで1.5倍はできる。2年はかからずに3倍とか4倍を目指している。スピードが速くなればモジュールだけ取り替えて、速度を上げるという設計にすることも可能」(八剱氏)
W-SIMのほかに、データ通信に特化しテレメタリング用途を狙った「CSCエンジン」(中央)、およびそのチップ版である「PHSエンジン」も展示された。CSCエンジンを使った製品も年末にかけて登場する見込み
少量生産や、潜在市場へのアプローチにW-SIMを活用
今後、従来型の音声端末も並行して開発する。「従来型の端末は、数万から数十万台と最低の製造ロットが大きい。ある程度の数量が出る場合はW-SIMを使わずに対応する。個数がそれほど大きくない場合、W-SIMのほうが有利になる」(八剱氏)。W-SIMを使った端末は、まずは音声端末となる見込みだが、車両や家電などさまざまな分野への展開を見込んでいる。
「従来ターゲットとしていた市場よりも大きな市場が狙えるのではないか。潜在市場にアクセスできるものを投入したい。車であればロケーション、あるいは医療機器。例えば移動中の救急車両からドクターに状況を知らせる仕組み。または家電に組み込んでなど」(八剱氏)
W-SIMを使った製品の販売については、通信とハードウェアの分離が前提。「ハードはメーカーのブランド名で出る。修理などのサポートもハードのメーカー。ただしサポートはウィルコムも行う」(土橋匡氏)。家電などに組み込まれた場合も、利用者はウィルコムとの通信利用契約が必要となる。また、ハードウェアメーカーの販売形態にもよるが、販売のコミッション適用(インセンティブ)もあり得るとした。
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