メッセージングを重視、MVNOも視野に──ボーダフォン
低迷していた2005年を折り返し、契約者増を目指すボーダフォン。社長会見で、コアターゲットを絞り、MVNOなどにも取り組むなど、ユーザー増を狙うための事業戦略について説明した。
ボーダフォンは7月12日に社長会見を行った。会見には、会長の津田志郎氏と社長のビル・モロー氏が登場。同社の現状について述べると共に、今後の事業戦略について説明した。
ターゲットを絞ってよりよいサービスを
まず津田氏が登場。電気通信事業者協会(TCA)が発表した携帯電話/PHSの2005年6月の契約者数(7月7日の記事参照)について触れ、「6月は約半年ぶりに純増に転じた。しかし、上位2社には大きく水をあけられている状態。5月までの純減の結果、(累計の)1500万契約を割り込んでしまった。まずは1500万契約を回復し、その先の目標に向けて攻勢をかけていかなくてはならない」と話した。
現状を脱却するための方針としてモロー氏が挙げたのが「携帯電話をメッセージングデバイスとして位置付け、先進的でリッチなコミュニケーションを提供する」というもの。
具体的な内容については触れなかったが「あらゆるお客様に満足していただくことは難しい。コアターゲットを絞って、よりよいサービスを提供する」と説明。ターゲットはコンシューマーユーザー、企業ユーザーの中をそれぞれいくつかのセグメントに分け、そのうちの4〜5つのセグメントに対して重点的にサービスなどをターゲッティングするという。例として「写メールなどを受け入れてくれた、17、18歳〜20代後半といった、非常にアクティブで人生を楽しむ若者層」と、「企業の規模でビジネスセグメントを3つくらいに分け、その真ん中あたり」を挙げた。
MVNOも検討中
ネットワーク戦略として挙げたのが「ホールセール、MVNOへの進出」「マルチアクセス技術」「FMC(Fixed-Mobile Convergence、固定と移動との融合)」の3つだ。
「津田さんは、MVNOは嫌いではなかったのか」という問いに対し、津田氏は苦笑しながら「設備を持ち、リスクを負って事業を行っている事業者が、投資のリスクを負わずに(設備を)借りているだけの事業者に負けるようなことがあってはならない。安売り的には提供しない」と回答。「データ通信だけか、音声事業もやるのか、その辺はまだ何ともいえない」とした。
マルチアクセスは、携帯電話網に加え、Wi-FiやWiMAX、ADSLなどの回線も利用できるようにすることを指す。「W-CDMAだけでいいだろうと考えていたが、今は考えを変えた。より速い通信手段があれば、それを選ぶこともいい。無線LANもあるだろうし、DSLもありうる」(モロー氏)
FMCは、最近多くの事業者が口にする課題だ。しかしボーダフォンの場合、固定通信を事業の中心とする日本テレコムをすでに手放している(5月13日の記事参照)。「固定網を買うということにはならない。タイアップなどの方法をとることになると思うが、まだ検討中。具体的に交渉はしていない」(モロー氏)とした。
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