活躍の場が広がるニューロポインター :神尾寿の時事日想:
携帯電話で見られるコンテンツの幅が広がるに従い、ユーザーインタフェースに求められるものも変わりつつある。今後便利に使えるシーンが増えそうな入力インタフェースが、NECのニューロポインターだ。
8月25日、本誌記事でユーザーの「フルブラウザ」に対する意見が公開された(8月25日の記事参照)。詳しくはレポート記事に譲るが、この中で筆者が注目したのが、N901iSのニューロポインターが高く評価されていることだ。
ニューロポインターはNECがこだわりをもって搭載してきた入力インタフェースであったが、これまで活躍の場はほとんどなかった。それでも同社は研鑽を積み続け、歴代の搭載機でニューロポインターの反応バランスは確実によくなってきていたと思う。本体機能とニューロポインターの親和性も高められ、N901iSでは「デスクトップ上の時計をクリックすればスケジュールソフトが起動する」といった直感的インタフェースも“さりげなく”実現している。
さらに「フルブラウザ」という、PCタイプのUI(ユーザーインタフェース)を好む強力なアプリケーションが登場したことで、ニューロポインターは大きな活躍の場を与えられた。PC向けのサイトを表示するフルブラウザは、限られたUI環境に合わせてデチューンされた携帯電話サイトを表現する従来型のブラウザとは基本コンセプトがまったく異なる。マウスのように自由移動が可能なUIの方が好ましいのは言うまでもない。
フルブラウザより期待値が大きい地図サービス
将来を見れば、ニューロポインターにはもうひとつ、大きなニーズになりそうなものがある。携帯電話向けの「地図サービス」や「ナビゲーションサービス」の急成長だ。ブレークスルーポイントは2007年である。
以前のコラムでも書いたが、2007年4月から、携帯電話の位置情報通知の「搭載義務化」が行われる(5月23日の記事参照)。総務省のスケジュールでは、2007年4月時点では「GPSもしくは代替方式」による位置情報通知機能が認められるが、2009年4月時点では「GPS方式普及率を50%」と数値目標が設定される見込みだ。携帯電話の買い換えサイクルを勘案すると、この数値目標を達成するには遅くとも2007年時点からGPS搭載携帯電話を主力に据えなければならない。すでにGPS搭載端末が主力のauは問題ないが、ドコモとボーダフォンでは2006年から2007年にかけて主力ラインナップへのGPS機能搭載が進むはずだ。
特に市場シェアの大きいドコモがGPS機能を標準採用することは、地図サービスやコンテンツサービスに大きな影響を及ぼす。すでにゼンリンとゼンリンデータコムが、GPS携帯電話時代を見越した「歩行者向け高精度地図」の準備を進めており、歩行者ナビゲーションサービスも投入される予定だ。将来的には、高精度地図にタウン情報を載せる「地図のポータルメディア化」が進むと筆者は考えている。
ドコモのGPS採用が引き金になり、地図やナビゲーションサービスが急成長すれば、携帯電話の入力インタフェースにも少なからぬ影響を及ぼす。カーナビゲーションをイメージしてもらえばわかりやすいが、地図を扱う入力インタフェースは自由移動できた方が使いやすい。さらに地図のポータルメディア化が実現すれば、ユーザーは地図上の施設アイコンをクリックすることで、その情報にアクセスできるようになる。この場合、カーソルの自由移動ができることを必須に近い要素になる。
NECが着実に成長させてきたニューロポインター。携帯電話の進化を考えると、今後、重要な入力インタフェースになっていきそうである。
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