伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか (前編):神尾寿の時事日想: (3/3 ページ)
おサイフケータイで電車に乗れるサービスを開始した、愛媛県の伊予鉄グループ。FeliCa採用は単発的な取り組みではなく、総合的なサービス向上施策の一環として導入された。慢性的な利用客減少と戦う、地方交通事業者の実情とは……?
しかし、これほど大規模にFeliCaのシステムを導入するとなれば、当然ながら初期投資も膨らむ。また、おサイフケータイ対応に関しては、JR東日本よりも早いタイミングだ。平成12年度まで交通部門の不振に苦しんでいた伊予鉄が、なぜ、これほどまでにスムーズなFeliCa導入ができたのか。
「大きな要素としては、タイミング的に改札機などの更新時期が近づいていたという事があります。このまま従来型のシステムを使うか、FeliCa対応の新しいシステムを追加投資してでも導入するか。収益性の観点からも検討し、今後の伊予鉄グループ戦略の軸と位置付けて先行投資しました」(西野氏)
さらに重要なポイントになったのが、伊予鉄グループが百貨店事業や不動産事業など、県内の街作り全般に経営の多角化を行っていたことだ。同社はすでに、市中心部の開発と交通事業の改善を連携させる事で、利用客の増加を実現していた。交通事業の効率化とともに、この「他事業との連携」が重視された。
「い〜カードは最初は交通利用からですが、いよてつ高島屋などグループ内の販売店事業と連携させ、総合的な決済サービスにすることができる。ここも(FeliCa ICカード)導入の決め手になりました。システム改変に伴う初期投資負担についても、(伊予鉄グループの)百貨店や不動産事業の収入があることが有利に働きましたね」(西野氏)
地方のクルマ依存社会化に、公共交通の利便性向上と街作りの連携で対抗する。その総合的な取り組みの中で、伊予鉄のICカード事業は誕生したのだ。そこが「まずは鉄道ビジネスのため」として誕生したSuicaと、似ていながら異なる部分だろう。
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