ドコモ四国愛媛支店が考える「おサイフケータイ戦略」(後編):神尾寿の時事日想: (2/2 ページ)
地域密着の面展開で、おサイフケータイが使える場所を増やす努力を続けているドコモ四国愛媛支店。その結果、おサイフケータイの販売数も順調に伸びているという。
周知の通り、地場資本の中小規模小売りチェーンは、地方郊外に進出してくる全国区の大規模チェーン店や大規模ショッピングモールとの競争にさらされている。そこで、おサイフケータイを使ったCRMにより顧客満足度を高め、優良顧客のリピート率向上に貢献するという考えだ。これは先に紹介した仙台のスーパー「アサノ」に類似するモデルである(5月30日の記事参照)。すでにドコモ四国愛媛支店では、地元発の複数の小売りフェーン店におサイフケータイ対応を働きかけている。愛媛県では地域密着型チェーン店の勢力も強く、ここがおサイフケータイ対応になる事は、ユーザーの生活シーンでの利用頻度を上げる効果が大きいという。
「我々のおサイフケータイ戦略の大きな狙いは、CRMとモバイル広告の部分にあります。ここはメールやコンテンツを使う部分ですから、(パケット料金収入増という)キャリアのビジネスになります。しかしいきなりCRMやモバイル広告をやりましょう、と言っても、(リアルな事業者には)受け入れてもらえない。おサイフケータイの普及を図り、ユーザーの利用を促進するための環境作りを、組織的に戦略性を持って推し進める必要があったのです」(大西氏)
この狙いを逆にたどると、第1段階の「道後温泉Edy導入」、第2段階「伊予鉄のおサイフケータイ対応」の“役割”が見えてくる。第1段階では観光地の先行事例作りでユーザーと地域経済の注目を集める。認知度を上げ、先行ユーザー層の構築をするフェーズだ。第2段階では伊予鉄グループによる公共交通の対応により、本格的に一般ユーザー層の利用促進を図り、一方で県内の他企業の目をおサイフケータイに向けさせる。おサイフケータイを県内の「デファクトスタンダード」にする上で、地域経済の中で存在感の大きい伊予鉄と手を組むのは効果的な戦略だ。
ドコモ四国愛媛支店は、「県内の事情に詳しい」という立場とフットワークのよさをフル活用し、中央のドコモでは難しい“地方のおサイフケータイ普及”を戦略的に行っているのだ。
おサイフケータイの販売数も非常に多い
ドコモ四国愛媛支店による「利用環境整備」は、もう1つの効果としてPRのしやすさにもつながっている。地方在住者のおサイフケータイに対する声としてよく聞くのが、「おサイフケータイを使える場所が分からない」というものだが、愛媛県に限っては“使える場所”が効果的に整備されたからだ。おサイフケータイの積極的な広告宣伝が、無理なくユーザーに届く。
「今回の伊予鉄対応は大きなイベントでしたので、(伊予鉄と)共同で広告を多く出させてもらいました。お客様の認知も上がっており、それがモバイルい〜カードの初日利用数の多さにもつながったと思っています」(大西氏)
これらの効果により、愛媛支店のおサイフケータイ販売数は、ドコモ四国の中でもずば抜けて多い。具体的な数字は非公開とされたが、おサイフケータイがハイエンドモデル中心であることを考えると、「かなり大きい数字。今後、伊予鉄対応の効果でさらに販売数は伸びる」(大西氏)という。愛媛支店では、今年9月から投入されるauのおサイフケータイが本格普及に入る前に、先行者イメージを確立する方針だ。その点でも、リアル事業者の「利用環境整備」に積極的にコミットしている効果は大きいだろう。
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