期待のシンプルFOMA、気になるのは…… :神尾寿の時事日想
厚さ16.7ミリ。FOMA最薄「prosolid II」は、ビジネスマンに人気の出そうな期待の端末だ。ビジネス市場で本格的に受け入れられる初のFOMAになるのではないかという予感があるが、心配な点が1つだけある。
10月3日、NTTドコモが利用スタイル重視型のFOMA端末4機種を発表した(10月3日の記事参照)。これらのラインアップはドコモが以前からムーバで投入してきた“企画端末”のFOMA版という位置づけになる。
さて今回登場した4機種の中で、筆者が特に注目しているのが「prosolid II」(型番は「P851i」)である。モバHO!対応ケータイ「MUSIC PORTER X」や音楽ケータイの「Music Porter II」、シルバー層向けの「らくらくホン シンプル」も確かにユニークだ。しかし、「prosolid II」のコンセプトは潜在ニーズおよび市場規模の大きさから“化ける”可能性があるからだ。
prosolid IIのコンセプトであり、提供するバリューは“コンパクトさ”と“シンプルさ”だ。そして、その結果として、ビジネスユースに適したパッケージが生まれている。これは従来のFOMAラインアップに乏しかった要素である。
これはドコモに限った話ではないが、日本ではコンシューマー層に牽引されて携帯電話の進化・高機能化が進んだ事もあり、今でもハイエンドモデルやエントリーモデルの商品企画は「コンシューマー向け」が中心だ。ビジネス向けに特化した高機能化や高級感の追求は行われず、結果として、コンシューマー向けの中庸なモデルがビジネス向け端末に落ち着くという状況が続いていた。特にドコモのFOMAでは高機能・全部入りの傾向が強く、ビジネス市場のニーズと乖離していた。
気になるのは「価格」のみ
今回、発表されたprosolid IIは、コンセプト的にビジネス利用に適している。カメラなしという点も、企業での導入やビジネス利用を前提にすれば、むしろプラスの要素になる。またシンプル路線ながら、iアプリに対応しているのは、ビジネスアプリケーションが利用できる点からも好ましい。ドコモは“ビジネスFOMA”としてモトローラ製のM1000を投入しているが、多くのビジネスコンシューマーや法人顧客層はそれほど高度な機能を求めているわけではない。その点で、prosolid IIはFOMAが初めて手にする本格的なビジネス向け端末と言える。
しかし、気になる部分もある。それは「価格」だ。
prosolid IIの最初のターゲットであるビジネスコンシューマーならば、価格はFOMAエントリーモデルと同等程度に設定できれば問題にならない。prosolid IIは高級感も追求しており、その点が評価されるからだ。
だが、法人市場をターゲットにするには、端末価格におけるライバルは値下がりしたムーバになる。特に中小企業や地方企業では未だにFOMAを敬遠することが多く、その理由のひとつとして「(FOMAの)端末価格の高さがある。『シンプルで安い在庫品のムーバでいい』という声は根強い」(地方のドコモショップ幹部)という。
prosolid IIがビジネス市場のFOMA移行を後押しできるかどうか。それはひとえに、発売開始時の端末価格がいくらに設定されるかにかかっている。
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