「法人向けは別のソリューションとして展開」するauのPTT戦略 :神尾寿の時事日想:
プッシュ・ツー・トーク(PTT)技術を使って、auが提供開始する新サービスは、完全にコンシューマ市場に照準を合わせたものだ。PTTは北米では法人向けに普及しているが、auでは法人向けにどのような展開を考えているのだろう。
10月24日、KDDIが新サービス「Hello Messenger」を発表した(10月24日の記事参照)。これは携帯電話版のIM(インスタントメッセンジャー)にPusu To Talk技術を使った音声コミュニケーション機能を加えたようなもの。先だって一部の新聞で、ドコモのプッシュトークと同じ俎上で紹介されたこともあり、PTTサービスの側面が注目されているが、記者会見では「PTTと言われるのが一番イヤ。新しいコミュニケーションサービスだ」(重野卓・KDDI商品企画本部モバイルサービス部)とKDDI側は一線を引いている(10月24日の記事参照)。
発表会後、筆者もHello Messengerを試してみたが、確かに主機能はテキストチャットであり、PTTを使った音声メッセージは“オマケ”といった印象だ。
例えば、Hello MessengerではPTTを発信する際は通話ボタンを長押しする使い方になっている。ドコモの902iシリーズのように専用ボタンが割り当てられておらず、少々分かりにくい。筆者や斎藤編集長も、「これ、どうやって(PTTを)送るんですか?」と説明員に尋ねてしまったくらいなので、携帯電話リテラシーの高い一部のユーザーはともかく、一般ユーザーが迷わずPTT機能を探し当てられるかは疑問だ。UIの面だけ見ても、Hello MessengerにとってのPTTが付加的要素であることがわかる。
法人向けは別アプリで展開だが……
周知の通り、海外のPTTは「法人向け」として普及したが、今回のHello Messengerは法人市場をまったく考慮していない。
法人市場へのPTT訴求で重要なプレゼンス機能はなく、コミュニケーション画面にはかわいらしいキャラクターが表示される。ドコモのプッシュトークのように「基本はコンシューマー向けだが、法人向けのサービスプランも用意する」というスタンスではないのだ。
この点について先述の重野氏に質問したところ、「法人向けサービスは別の展開で考えている」という答えが返ってきた。
「(KDDIのPTTサービスは)BREWアプリで提供しているので、フロントのソフトウェアを変更して、UIや機能を変えれば『法人向けサービス』も作れる。Hello Messengerはコンシューマー向けというコンセプトで開発したが、法人向けPTTでは当然ながら、法人市場のニーズにあったものを用意する」(重野氏)
その登場時期については明らかにされなかったが、「PTTの基本部分は既にできあがっているので、(BREWアプリなどフロント部分の)開発にはそれほど長い時間がかかるわけではない」(重野氏)という。ドコモのプッシュトークも登場初期から法人市場で大々的に受け入れられるとは考えられず、市場の様子見をしながら開発をする猶予はある、ということだろう。これはBREWを使うKDDIの強みでもある。だが、一方で、“誰でも使える”が重要な法人市場において、専用ボタンを持たないKDDIのPTT機能は、使いやすさ・わかりやすさの点でドコモに劣る。この弱点をソフトウェアUIやサービスでどのようにカバーするのか。KDDIの手腕に期待したい。
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