次のターゲットは「ロードサイド決済」市場 :神尾寿の時事日想:
関東圏の鉄道網に沿って利用されているSuica電子マネーは、鉄道の次はクルマへも普及を進めつつある。クルマへのアプローチは、ライバルEdyも進めているポイント。公共交通とロードサイドの決済手段が一致することには大きな意味と可能性があるためだ。
11月2日、駐車場業界最大手のパーク24が、コイン式駐車場「タイムズ」にJR東日本の電子マネー「Suica」を導入すると発表した(11月3日の記事参照)。11月4日からタイムズステーション川崎から対応し、「今後、タイムズの駐車場精算機におけるSuica導入拡大を検討していく」(パーク24)という。
パーク24は以前から駐車場のIT化に熱心な企業で、駐車場オンライン管理システム「TONIC (Times Online Network & Infomation Center)」の導入、クレジットカード決済への対応を行ってきた。また、パーク24が管理する駐車場は全国5800カ所、駐車可能台数は約12万台と業界随一。JR東日本の“お膝元”である関東1都6県に限っても、駐車場約3200カ所、駐車可能台数は約5万8000台に上る。
パーク24は昨年9月、代々木にビットワレットの電子マネー「Edy」が利用可能な「タイムズドコモタワーサイド」をオープンさせた。しかし、これはあくまで実験段階という位置づけであり、当時から「JR東日本のSuicaも検討している。例えば電車への乗り換えや駅周辺の繁華街の利用には(JRと連携する)Suicaの方がいいという考えもある」(パーク24担当者)とコメントしていた。
ITSの視点では、公共交通の決済手段と駐車場などロードサイドの決済手段が統一されることは、ユーザーや道路行政の視点でも都合がいい。シームレスな電子決済環境が整えば、利便性が向上できるだけでなく、パーク&ライドのように公共交通への乗り換えをした際の割引サービスがしやすいからだ。
Suicaは来年、東京メトロなど私鉄各社が導入する「パスネット」との相互乗り入れが予定されており、首都圏の標準的な電子乗車券システムに発展する可能性が高い。Suicaバリューを共有するSuica電子マネーは、公共交通とクルマの連携という点でロードサイド決済と手を組みやすい立場にある。
全国区で見ればEdyにもチャンスがある
今後、パーク24がSuica電子マネーの導入を積極的に進めれば、ロードサイド分野でSuicaは大きくリードする。特に鉄道利用率の高い東京圏で考えると、"都市型のロードサイドビジネス"との連携で有利な立場になるだろう。
しかし、ライバルのEdyもコスモ石油やガソリンスタンドチェーンの宇佐美グループ、ニッポンレンタカーなどに採用実績がある(5月20日の記事参照)。特にEdyが有利なのが、全国区で展開するサービスであり、クルマ依存率が高く、ロードサイドビジネスの重要性が高い地方での展開がしやすいことだ。さらにSuica電子マネーに比べて、顧客企業のCRM活用に力点を置いている点も(7月13日の記事参照)、中小規模の店舗チェーンも多いロードサイドでの導入を考えれば有利である。
今後、電子マネーや非接触IC型クレジットカードサービスの競争領域がロードサイド市場に広がるのは間違いない。この市場には、道路に隣接する様々な業種・様々な規模のビジネスが溢れかえっている。市場開拓の難易度の高さと可能性の大きさでは、鉄道や航空関連の周辺ビジネスを上回る。
SuicaとEdyの競争だけではない。おサイフケータイの今後にとっても、ロードサイド市場は重要だ。そして、その開拓は、既存のリアルビジネスとITSの両方からアプローチしていかなければならないというのが、筆者の持論である。
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