MVNO市場の活性化に繋がるボーダフォンの動き:神尾寿の時事日想
ボーダフォンがMVNOに積極的だ。日本のMVNO市場は未開拓であり、潜在的な可能性は多く残されている。MVNO市場の活性化のためにも、ボーダフォンの姿勢は歓迎すべきものといえる。
11月16日、ボーダフォンがMVNO(Mobile Virtual Network Operator)向けの回線貸出事業に積極的に取り組む事を明らかにした(11月16日の記事参照)。今後2年以内に10社と提携する考えだという。
この動きは、日本市場のMVNOを活性化させる上で歓迎すべきものだ。これまでもウィルコムがMVNO向けの回線貸し出しを行っていたが、既存の携帯電話キャリアは消極的。KDDIは通信モジュール向けとしてトヨタ自動車のG-BOOKなどに回線を提供しているが、これは「MVNOではない。相手先ブランドでサービスを提供する『ブランドビジネス』で、(サービス事業者が)自由に通信サービスを提供できるMVNOとは違うもの」(原口英之・KDDIモバイルソリューション商品開発本部モジュール企画部部長)というスタンスである。
以前のコラムでも述べたが、筆者は日本のMVNO市場は未開拓であり、潜在的な可能性は多く残されていると考えている(6月3日の記事参照)。例えば、今回ボーダフォンが挙げたISPやコンテンツプロバイダ、CATV事業者などは、新たな事業領域として「モバイル」の通信インフラを欲しがっている。コンシューマー向けとしては、ポータブルゲーム機や音楽プレーヤー、デジタルカメラなども、専用のモバイル通信サービスと融合したら、新たな可能性が生み出せる分野だ。
また、日本通信やKCCSが既に取り組んでいるが、法人向けのソリューションビジネスに特化したMVNOも成長が期待できそうだ。特に商用車テレマティクスやハンディターミナル分野などを取材していると、フィールドワーカー向けのデータサービスは未開拓の領域が多いと感じる。これらの分野に強いメーカーや専門性の高いSIヤーがMVNO事業者を兼ねれば、新しいモバイル通信市場を創出できるのではないか。
MVNOには新規参入事業者も関心を示しているが、既存キャリアであるボーダフォンが積極姿勢を打ち出すのは、市場に対する影響力が大きい。今後、この分野の競争が始まれば、MVNOの回線提供条件も充実してくるだろう。MVNO市場の活性化に期待したい。
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