的確なスタートを切ったiD。期待と、その影響は大きい:神尾寿の時事日想
おサイフケータイを利用したクレジットカード決済システム「iD」がいよいよスタートした。ドコモにとって大きなチャレンジであるだけでなく、クレジットカード業界に与える影響も大きそうだ。
12月1日、三井住友カードはおサイフケータイによるクレジット決済サービス「三井住友カードiD」のサービス提供を開始した(12月1日の記事参照)。これはドコモにとってもクレジット決済市場に本格的に乗り出す意欲的なチャレンジだ。NTTドコモマルチメディアサービス部長夏野剛氏の「クレジットカード業界については我々が新規参入」や「(携帯を使ったクレジットカード決済には)ほかにも方式があるが、我々は使える店舗数でぶっちぎる」という発言に、ドコモの力強い気概を感じる。
むろん、意気込みだけではない。ドコモはiDの普及にあたって、かなり綿密な戦略を持っている。それはドコモがターゲットにしたiDの初期導入企業(11月8日の記事参照)を見れば分かる。
iDの普及にあたっては、今回のセレモニーが行われたビックカメラをはじめ、ヨドバシカメラ、コジマ、上新電機など家電量販店の多さが目立つ。これは、これらの店舗が携帯電話販売などでドコモと繋がりがあるという点はもちろんだが、クレジットカード市場の“成長株”である点も理由であろう。日本信販が2年に1度公開する「クレジットカードについての消費者調査」によると、クレジットカード利用市場として家電量販店の順位は第3位。利用率の増加幅は13ポイントで、衣料品店に次ぐ第2位の高い伸びを示している。おサイフケータイ利用者の属性を鑑みても、「最初に家電量販店」を重視したのは当然の成り行きといえる。
一方、今後に向けては、伸び率が高い衣料品店はもちろん、利用規模が第2位と大きく、サインレス化の浸透でクレジットカード利用率が急増しているスーパーマーケットなどの対応も注目だ。さらに非接触IC「FeliCa」の特長である“スピーディで触れずに済む”という使い勝手は、今年になってから注目されている医療機関のクレジットカード対応増加にも合致しているかもしれない。
周知の通り、日本のクレジットカード市場は欧米や韓国など一部アジア諸国に比べて未発達である。それだけに新ビジネスの領域が大きい。ドコモのiDは、おサイフケータイという新たなUIにより、日本のクレジットカード市場に大きな影響を与えそうだ。今後のドコモとiDの動向に注目していきたい。
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