QUICPayで儲けようとは思っていない――JCBの戦略(後編):Interview: (4/4 ページ)
共通インフラにQUICPayを想定した「モバイル決済推進協議会」設立の中心メンバーであるJCB。会員には別方式を進めるUFJニコスもおり、そもそもドコモと三井住友カードは同協議会に参加していない。QUICPay、そしてモバイル決済推進協議会に、JCBはどのようなスタンスで取り組むのか。
QUICPayの普及戦略
QUICPayに限らず、おサイフケータイのサービスで重要になるのが、使える場所と使うユーザーをバランスよく増やしていく「普及戦略」だ。この点についてJCBはどのように考えているのか。
「サービス開始初期は使える場所が少なかったので、高松シンボルタワーなどQUICPay対応が済んだ場所で局所的にPRするといった方法だったのですが、現在では対応店舗も増えて、ロイヤルホストなど全国チェーンでの採用も始まりました。今後は広くユーザーの獲得を目指していきます」(吉田氏)
エンドユーザーの獲得では、おサイフケータイユーザーに訴求するだけでなく、一般ユーザーにはカードタイプのQUICPayも広げていくという。この点は前編でも触れたとおり、「おサイフケータイありき」ではないQUICPayの特色と言える。
一方、QUICPayの利用可能な加盟店は、公表可能な2005年11月末時点のデータで1200店舗だが、「その後も順調に伸びている」(広報部)という。
「お恥ずかしい話なのですが、(2005年)12月、(2006年)1月などはかなりの数の加盟店様にQUICPay対応のお申し込みをいただいています。しかし、実際の設置が完了していない店舗が多くあり、対応店舗としてカウントされていない状況です」(吉田氏)
このように加盟店のQUICPay採用は加速がついており、JCBでは「2008年までに10万店」の対応を目指す。接触IC対応も未だ16万店舗程度という中で、これは「かなり速いスピードでの展開計画」(吉田氏)である。
また、ドコモ=三井住友カードのiDも「2008年までに10万店」の目標を掲げるが、店舗展開のスタンスではQUICPayとの違いもあるという。
「iDは新たなクレジット決済サービスということもあり、幅広く加盟店対応を進めているようですが、我々は『少額決済市場』にフォーカスしたいと考えています。そのためQUICPayの(加盟店)展開先としては絞り込ませてもらっている。これまでクレジットカードで十分にカバーできていた領域への展開は優先順位を下げています」(青木氏)
少額決済に絞り込んで狙うという点では、その大きな市場として、2005年に電子マネー採用が進んだコンビニエンスストア業界がある。JCBでは電子マネーと共存する形で、「QUICPayを導入してください、という提案は(各コンビニエンスストア事業者と)個別にさせていただいている」(青木氏)。ここでも重要な鍵は、リーダー/ライターの共用化になりそうだ。
QUICPayはツールに徹する
インタビューの間、何度も出てきたのが「QUICPayは非接触ICを使ったクレジット決済のツールである」という発言だ。これは今後も変わらぬスタンスとして、加盟店の拡大とエンドユーザーへの普及を進めていくという。
「我々はQUICPayを単独のビジネスとして考えていませんから、皆さんに使っていただきたい。イシュア事業者様であればクレジットカードビジネスの拡大のため、加盟店様には利便性向上や売り上げ拡大の目的で利用していただきたいと考えています」(青木氏)
クレジットカード利用率が低く、現金志向が強いと言われる日本市場。QUICPayは、クレジットカード業界や加盟店、そしてエンドユーザーにとって使いやすいツールに徹しながら、日本のキャッシュレス化にチャレンジする。JCBにとって2006年は、QUICPay本格普及に向けた正念場の1年となりそうだ。
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