ドコモがクレジット業界に参入する理由 (2/2 ページ)
通信事業者であるドコモがクレジットカード「DCMX」を発行、クレジット業界に本格的に参入する。通信事業者のドコモが参入する理由、iDとDCMX事業の違いについてまとめた。
ドコモがイシュアになりたい理由
携帯を利用した小額決済市場をターゲットにしたクレジットサービスを、ドコモが手がけるのはこれが初めてではない。そもそもQUICPayはドコモとJCBが共同で開発したサービスだし、またスマートプラスの前身と言えるサービス「VISAッピ」(2003年9月29日の記事参照)にもドコモは協賛している。iD、そしてDCMXがこれまでと大きく違うのは、ドコモ自身が主体となって進めるクレジット事業であるという点だ。
ブランドホルダとしてのドコモは、加盟店のクレジット手数料からインフラ(iD)利用料として収益を分けてもらう形になりそうだ。この場合、イシュアがどこであれ、iDの利用者が増えれば増えるほどドコモの収入は増えることになる。しかしインフラ利用料はそう高いものではない。インフラを設置するための初期投資をインフラ利用料で回収するには、相当な時間がかかるはずだ。
ドコモ自身がイシュアになるDCMXであれば、インフラ手数料だけでなく、クレジット手数料すべてがドコモの収入になる。ただし小額決済の場合、クレジット手数料は非常に安いため、「小額決済はもうからない」と断言するクレジット事業会社も少なくない。例えばJCBは「QUICPay単体ではとても儲からない。QUICPayの目的は、QUICPayの親カードがメインカードとなることと、小額決済の経験でクレジットカードに慣れてもらうこと」と話している(3月8日の記事参照)。
ドコモがより所とするのは、ユーザーの数と利用回数だ。簡易版サービスといえる「DCMX mini」は、1万円という上限は付いているが、アプリさえダウンロードすれば、審査を必要とせず、12歳から誰でも利用できる仕組みになっており、他の類似するサービスに比べて極端にハードルが低い。現在ドコモのおサイフケータイ契約数は約1200万。夏野氏はDCMX/DCMX miniの目標を「3年で1000万人程度」としたが、FOMAのおサイフケータイユーザーすべてがユーザー予備軍と考えれば、決して難しい数字ではない。ユーザー数が増え、利用が普及すれば、スケールメリットが出る。一回の手数料が少なくても、イシュア事業でペイできる、というのがドコモや三井住友カードの考え方だ。
ユーザーがDCMX miniで利用経験を積み、DCMXにアップグレードしてくれれば、ドコモにとってはDCMXの年会費が収入になるほか、キャッシングやローンの利息収入も見込める。DCMXの利用に際しては、携帯からの操作だけでなく、書類での申し込みや、ドコモショップでのサポートも予定している。また、携帯購入時の割引や、修理代金にポイントをあてられるようにするなど、ドコモのクレジットカードならではの特典も用意し、他カードとの差別化やユーザー獲得を狙う。
「小額決済市場は手つかずで残っている。しかしこれまで、本気で参入したところはなかった。だからドコモがやるのです」(夏野氏)
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