優れたサービスは「関西のお客さん」が育てる――スルッとKANSAIに聞く(後編):Interview(3/5 ページ)
関西の私鉄やバスで利用できる「PiTaPa」は、東京でSuicaを日々使っている身からすると羨ましいほどよくできたサービスだ。「便利に使ってもらうことで公共交通利用の促進を目指す」というその便利さはどのように生まれたのだろうか?
プリペイド領域を使って他交通相互利用を実現
PiTaPaの特徴は「ポストペイ」であるが、一方でPiTaPaカードにはプリペイド(前払い)チャージの領域も設けられている。これは他の交通機関との連携をスムーズに行うためだ。現在、交通乗車券部分についてはJR西日本のICOCAとの乗り入れに対応している(電子マネー部分は未対応)。Suicaとの相互利用についても実施時期を検討中だという。
「特にJR西日本へのシームレスな乗り継ぎはお客様のニーズが高く、当初から(乗り継ぎ対応を)考えていました。本来はポストペイでそのまま乗り継ぎできればいいのですが、JR西日本のICOCAはポストペイに対応していない。ですから、PiTaPaカード側にプリペイド領域を設けて、ここに利用額をチャージすることで相互利用を実現しました」(松田氏)
ここでもPiTaPaは、ユーザーにチャージの煩わしさを感じさせない方法を考えた。それが事前申し込み制による「オートチャージ機能」の実装である。
「プリペイド領域の残額が1000円以下になりますと、PiTaPa改札機にタッチした時に自動的に2000円がチャージされます。これにより、お客様はプリペイド領域を使っていても、特に『チャージ』を意識しなくてすみます」(松田氏)
しかし、JR西日本/東日本での改札機ではオートチャージ機能は利用できないため、JR管轄内でプリペイド分を使い切ったら、券売機やチャージ機で入金しなければならない。オートチャージ機能はあくまで、通勤で私鉄からJRに乗り継ぐような日常利用を想定しているという。
PiTaPaを活用、子ども向けセキュリティシステム
PiTaPaは公共交通乗車券や決済サービス以外にも、付加価値の向上に積極的だ。その中でもユニークなのが、「PiTaPaグーパス」と「あんしんグーパス」だ。
PiTaPaグーパスは駅改札機と連動したメール配信システムで、PiTaPa定期券の利用者に希望するお得情報やクーポンメールなどを配信している。大阪市営地下鉄、阪急電鉄、阪神電車、大阪モノレール、能勢電鉄、大阪モノレール、北大阪急行などで利用でき、現在のグーパス登録率は定期購入者の1割、2万人程度である。
あんしんグーパスは、グーパスの仕組みを子ども向けセキュリティシステムに転用したもの。児童が改札機を通過したタイミングで、親の携帯電話にメールを配信することで、“子どもが安全に移動している”ことがわかる仕組みになっている。今年1月10日からスタートし、月額315円の有料サービスになっている。
「あんしんグーパスは実証実験の段階からお客様の強いニーズがあったサービスで、正式サービス開始から約1ヶ月で300名ほどの加入がありました。さらに今年4月からは学校単位での契約体系を導入しています。その第1号が立命館小学校で、児童証にPiTaPa機能が搭載されます。立命館小学校では校門にもPiTaPa入退場システムが導入されて、通学時の駅利用と学校の出入りのタイミングで、親にメール連絡が入ります」(松田氏)
立命館小学校のケースでは、あんしんグーパスの月額利用料を学校側がまとめて負担するすることで、「児童証にPiTaPa」機能を融合してしまったのがポイントだ。むろん、この児童証PiTaPaを使えば、ポストペイで電車に乗り、自動的に利用実績に応じた割引サービスが受けられる。
子どもに対するセキュリティ意識が高まる中で、電車通学が多い私立校を中心に「公共交通連携のセキュリティ」は潜在市場が大きそうだ。
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