DCMXは、EdyともSuicaとも共存する――NTTドコモ夏野氏に聞く(後編) :Interview(3/3 ページ)
「村には村の掟があるのをご存じか」――iD/DCMX事業での協力を求める夏野氏に、大手クレジットカード会社幹部は思わずこう言ったという。しかしDCMXは既存のクレジットサービスとも、プリペイド型電子マネーとも対立するものではないと夏野氏は強調する、その根拠は?
裾野の拡大と富裕層へのアプローチ
おサイフケータイの登場以降、筆者は数多くの事業者を取材してきたが、その中で大きな課題になっていたのが、ユーザーの「利用促進」だった。おサイフケータイ関連サービスはICアプリの導入から初期設定がハードルになり、「使い出してもらうまでが難しい」ものだったのだ。
「DCMXは902iS以降のおサイフケータイすべてにアプリがプリインストールされますし、オンライン申し込みの手続きも徹底的に簡単にしました。利用開始のハードルはかなり低くしている。
特にDCMX miniは満12歳以上から使えるので、若年層への広がりばかりが注目されますけれど、少ない与信で申し込みが簡単、しかもサインレスということは、中高年層向けへの広がりも期待できる。
また、店頭での対面申し込みの部分ですが、DCMX miniやDCMXはALADIN(ALl Around DoCoMo INformation systems : ドコモの顧客管理システム)上で利用設定できますから、ドコモショップはもちろん、一般量販店でも申し込み受付できます。加入促進キャンペーンとあわせて、利用促進を図っていきます」(夏野氏)
ドコモの販売力を通じて、DCMX mini / DCMXの顧客拡大を図り、少額決済を軸とした身近な分野からクレジット決済の利用率向上を計る。これがDCMXの優位性になる部分であるが、一方で、一般的なクレジットカードビジネスでは、富裕層向け会員サービスの拡充が注目されている。ドコモもDCMXでは富裕層向けサービスを今後、充実させていく方針だ。
「ゴールド以上のセグメントについては、本業と合わせた形で何ができるか、まで踏み込んで会員サービスを投入します。今はここまでしか話せませんが、我々は本業(携帯電話ビジネス)を持っていますから。イメージとしては航空会社みたいなものをやりたいですね」(夏野氏)
インタビューを通じて夏野氏は、「クレジットカード業界はいろいろな意味で複雑で難しい。だけど僕は、この分野をおサイフケータイで便利にして、業界全体を大きくしたい」と何度も繰り返した。それは今後のドコモの成長にとって重要な柱であるだけでなく、携帯電話業界とクレジットカード業界の両方がWIN-WINの関係を築き、互いに発展するために意義深い取り組みであると、筆者も思う。
iDとDCMXが、おサイフケータイの電子決済分野における“よきカンフル剤”となることに期待していきたい。
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