「Eseries」はビジネスニーズに応える携帯──ノキア・ジャパン
ノキア・ジャパンがビジネス向け携帯「Eseries」を日本でも積極展開するという。モバイルウェアなども含む総合的なサービスを提供するというが、勝算はあるのか。
ノキア・ジャパンは6月7日、Nokia(フィンランド)がワールドワイドで展開しているビジネス向けの携帯端末「Eseries」を、2006年秋以降、日本市場にも積極的に導入していくことを発表した。SIMロックのないモデルをNokiaブランドでリリースする計画もあるという(6月7日の記事参照)。
同社は、2005年11月にオーストラリアのシドニーで開催したプライベートイベント「Destination Nokia」で、Eseiresを早期に日本市場へ導入したい旨を表明していたが(2005年11月17日の記事参照)、いよいよ実現へ向けて動き出す。
ビジネス利用にフォーカスしたEseries
ノキア・ジャパンのエンタープライズ・ソリューションズ事業部 カントリー・ジェネラルマネージャーの森本昌夫氏は「現在日本市場で提供されている携帯電話は、基本的にコンシューマー向けに開発されているもの。企業向けの端末に求められている機能や性能は、コンシューマー向けの端末とは大きく異なる」と話す。
森本氏は、ビジネス向けの端末は以下の8つのポイントを満たしている必要があると指摘する。
- ビジネスで活用できるレベルのメール機能を有する
- PBX電話のような会議・保留・転送機能がある
- 無線LANなど携帯電話以外のネットワークを複数サポートしている
- セキュリティ機能やデバイス管理機能がある
- 2〜3年の長いライフサイクル
- アプリが開発しやすい共通プラットフォームを採用している
- ビジネス向けに最適化された高い性能を持つ
- サービスを含めた広範なサポート体制がある
しかし、日本市場ではまだこれらの条件を満たした端末がほとんどなく、ビジネスツールとしての携帯利用が普及していない。そこでノキア・ジャパンとしては、すでにこの8つの条件を満たしている企業向け端末Eseriesを投入し、日本のビジネス向け携帯電話市場でシェアを獲得していきたい考えだ。
いまだ発展途上のビジネス向け携帯市場
森本氏は、まず2006年中をめどにVoIP機能を使ったソリューションの構築と、オフィスで利用しているメールやPIMをモバイル端末でシームレスに使える環境の整備をしたいとする。
エンタープライズ分野では、VoIP機能に対応した携帯電話に注目が集まっている。VoIPは、社内で構内無線LANを利用した通話を行う際に必須の機能で、PBX電話の代替として携帯端末を利用するのに欠かせないためだ。市場規模は、2006年の段階では約30万台程度だが、2006年後半から本格的な普及期に入り、2008年までに50〜60万台程度にまで増えるとノキア・ジャパンでは見ている。Eseriesは無線LAN機能を標準搭載しており、VoIPにも対応可能なことから、日本でも積極的に採用を働きかけていくという。
森本氏はまた、企業ではExchangeサーバなどでメールを管理していることが多いため、これらのメールを端末にプッシュ配信できるEseriesの特長を生かしたシステムを提供していきたいとも話した。
現在、日本の携帯電話の契約数は9250万を超えている。しかし、そのうち携帯のメール機能を仕事で活用しているのは約2000万人程度。しかもそのユーザーのほとんどはコンシューマー向け端末のメール機能を利用しており、会社のメールサーバと内容を同期したりしているわけではない。実際にビジネス向けのメール環境に携帯でアクセスしているのは、Webブラウザや転送機能を活用しているものを含めても40万人程度で、会社のメールサーバなどに直接アクセスし、本当の意味で会社のメールをモバイル環境で送受信しているのはまだおよそ20万人ほどしかいない。
世界に目を向けてみても、ビジネス向けのメールやPIMが利用できるモバイル機器のユーザーは現在640万人しかいないという。利用者のほとんどは米国のユーザーで、使われている端末はRIMのBlackBerryが全体の約69%に上る。日本ではまだ未成熟な分野だが、今後利用者は急激に増えていくと予想され、Eseriesにとって大きなチャンスと考えているようだ。
Eseriesを利用したソリューションは、2005年11月に買収したインテリシンク(2005年11月17日の記事参照)の「Intellisync Mobile Suite」との組み合わせのほか、MicrosoftやVISTO、SEVEN、IBM、Oracleなどのパートナー企業から提供されるクライアントソフトを両軸にして展開していく方針。このあたりは顧客のニーズに合わせて柔軟に対応する。
ノキア・ジャパンでは、ビジネスシーンで携帯を活用する際のセキュリティソリューションはすでに提供しており、リーディングポジションを獲得しているという。しかし、エンタープライズ向けのデバイスや、メール/PIMなどを社内と外出先でシームレスに利用できるようなモバイルアプリケーションはまだ投入できていない。森本氏は「デバイスとアプリケーションはスタート地点に立ったばかりだが、2009年までにリーディングポジション獲得を目指す」とした。
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