立命館小学校はなぜ「FeliCa」を選んだのか :Interview: (2/2 ページ)
関西の交通乗車券「PiTaPa」を使った児童証で、児童の安全を守っている立命館小学校。GPSを利用したシステムと比較して、FeliCaを選んだ理由は何だったのだろうか?
むろん、GPS端末を使ったセキュリティと比べれば、「居場所の確認」の精確さでは劣る。しかし、重要なのは、“もしも”の異変に早く気づけることだと、前川氏は言う。
「(メール通知では)いつもの時間に乗換駅を通過しているか、学校に到着したかがわかる。もし、メール通知が届かないと、早いタイミングで保護者から問い合わせが入ります。それは異変があれば早いタイミングで気づくという事です」(前川氏)
例えば、事件・事故に巻き込まれなくても、低学年の児童では電車で寝過ごしたり、乗換駅を間違うといったことが起きる。こういった場合でも、「(メール通知が来ないと)保護者からの連絡はとても早い」(前川氏)という。
また、保護者の中には、児童証のセキュリティ以外に、ココセコムのようなGPS端末を子どもに持たせている親もいるという。この場合、児童証のメール通知が届かなければ、すぐにGPS検索で居場所を検索できる。
「今、当校には3学年までで368名が在籍していますが、その中の9割近くの児童が電車を使って通学しています。(立命館小学校は京都にあるが)滋賀県、大阪府、奈良県、兵庫県など県外からの通学者も多い。通学の安全を考える上で、PiTaPa児童証で公共交通と連携したセキュリティが実現できる点は重視しました」(前川氏)
いずれは全国の学校に広がってほしい
日常的な安全確認、保護者の安心のためのツールとして、立命館小学校の児童証システムは有効に機能している。その上で、同校がさらに期待するのは、位置確認ができる駅の増加だ。
「PiTaPaを運営するスルッとKANSAIには対応駅を拡大してもらっていますが、通学という視点でいえば、JR西日本の駅でも(改札通過情報の提供に)対応してほしい。スルッとKANSAIとJR西日本には、この部分でも連携してもらいたいと考えています。児童の中には、JR西日本を利用する生徒もいますので」(前川氏)
また、将来的には、FeliCaを使った公共交通連携のセキュリティシステムが、全国規模になって欲しいという願いもあるという。
「我々は、このセキュリティシステムが立命館小学校だけのものだとは考えていません。例えば関東にも多くの私立校がありますが、そういった地域の学校と関東の公共交通事業者が連携して、(PiTaPa児童証のような)セキュリティシステムが実現して欲しいと考えています。いずれは全国に広がり、いろいろな地域で子ども達を守ってほしい。そのためには我々も、(児童証セキュリティの効果を)しっかりと情報発信していきます」(前川氏)
立命館小学校のFeliCa/PiTaPa児童証は、いくつかの恵まれた環境の中で実現した。新設校であり、新たな技術を取り入れやすかったこと。新たなサービスの実現に熱心なPiTaPaが存在したこと。そして、私立校ゆえに“安全・安心”という保護者のニーズに応えやすい経済的な環境があったことも事実だ。
だが、学校に対する安全ニーズの高まりは全国に広がっており、私立・公立ともに存在する。公共交通分野でのFeliCa採用の広がりに歩調をあわせて、私立・公立で「通学セキュリティ」分野としての共通仕様を考えてもいいのではないだろうか。全国の学校で採用していくという事ならば、機器のコストは下がり、各地の公共交通事業者も対応しやすくなるだろう。
通学時に児童の安全に繋がるシステムやサービスが、「いずれは全国に広がってほしい」と願うのは、前川氏や筆者だけではないはずだ。
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