早期に「iDはドコモだけ」の解消を :神尾寿の時事日想
ドコモと三井住友カードが推進する、おサイフケータイで利用できるクレジット決済サービス「iD」が利用できるのは、現在ドコモのおサイフケータイのみだ。iDの普及を進め、利用率を上げるには、いくつか打つべき手があるのではないだろうか。
7月12日、東京・お台場の複合商業施設「デックス東京ビーチ」の全館で、ドコモ+三井住友カードの推進するクレジット決済サービス「iD」が利用できるようになった(7月19日の記事参照)。詳しくは関連ニュース記事に譲るが、iDはドコモがイシュアとなるDCMX/DCMX miniをバネに急速に会員数を増やしており、それに期待する加盟店の獲得も急ピッチで進んでいる(5月9日の記事参照)。ドコモでは年内10万台、年度内15万台のリーダー/ライター設置を目標に掲げているが、都内ではiD対応店舗を目にする機会も増えた。おサイフケータイ向けFeliCa決済サービスの急先鋒といってもよい存在である。
しかし、iDは今のままではFeliCa決済サービスとして不十分だ。利用可能なユーザーが「ドコモユーザー」に限られており、決済サービスに必要な“誰でも使える”普遍性がない。もちろん、ドコモユーザーの多さと、ドコモであれば極めて簡単に使えるDCMX/DCMX miniの存在は大きいが、決済サービスであるならば全キャリアのユーザーが使えなければならないだろう。
iDのauとボーダフォンへの拡大については、以前、NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛氏へのインタビューの席で尋ねたことがある。ドコモはイシュアとしてDCMXを推進する立場であるが、「(クレジットブランドとしての)iDを推進する立場からすればauやボーダフォンへの展開は歓迎する」(夏野氏)スタンスだ(1月11日の記事参照)。
むろん、ドコモ自身がイシュアとして他キャリア向けにサービス展開するのは難しい。そこで三井住友カードなどiDを採用するイシュアが、auやボーダフォン向けにサービス提供する形になる。だが、現実的には「仕様や条件の問題でうまくいっていない。特にアプリ仕様や提供条件がクローズドなau向けは難しい状況」(夏野氏)なのだという。
筆者の立場では、iDの3キャリア展開が遅れている理由として、どのプレーヤーにより多くの責任があるのかまではわからない。しかし、iDの推進にドコモが深く関わっている事を理由に、ドコモと対立関係にあるauやボーダフォンへの展開が遅れているとすれば、誰に責任があるにせよそれは残念なことだ。ユーザーと加盟店にとって迷惑なだけでなく、FeliCa決済市場やおサイフケータイ全体の発展にとってもマイナスにしかならない。iDもFeliCa決済の一角を担う存在になっている以上、3キャリア対応は早急に実現すべきだ。
カード型iDが登場してもいいのでは?
iDについては、もうひとつ要望がある。それはおサイフケータイ向けだけでなく、FeliCaカード型iDの検討である。これはiDの本来のコンセプトから外れるかもしれないが、ユーザーの裾野を広げて、その後におサイフケータイ利用に誘導する上でもFeliCaカード型はあった方がいいと思う。特に今後、コンビニエンスストアや自動販売機での対応が増えるのだから、より多くの人に“iD体験”してもらう機会の拡大を考えるべきだ。
まずサービスを使ってもらう・慣れてもらうには、「いきなりおサイフケータイだけ」ではハードルがやや高い。例えば三井住友カードが、普通のクレジットカードにiD機能を内蔵するというのはどうだろうか。
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