「auだけ+α」を強化するKDDI:神尾寿の時事日想
Googleの次はGREE――他社と提携することにより、auユーザー向けのサービスに付加価値を付けようと動くKDDI。この動きは、ソフトバンク+ヤフー対策のために先手を打っているようにも見える。
7月31日、KDDIがソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「GREE」を運営する「グリー」が実施する第三者割当増資を引き受け、同社に3億6400万円を出資したと発表した(7月31日の記事参照)。KDDIとグリーはそれぞれの顧客基盤やブランド、事業ノウハウなどを融合し、携帯電話の強みを活かしたSNSサービスの企画・運営を共同で検討する。
具体的なサービス展開は検討中であるが、auユーザー向けのGREEサービスに「GPS連携機能やスケジュール連携、Eコマースとの連携機能を盛り込むなど展開が考えられる」(KDDI広報部)という。またLISMOの音楽サービスやコミュニティサービス「うたとも」(2月13日の記事参照)との連携も検討されている。
グリー出資はGoogle提携に近い位置づけ
auの強さは、主力商品であるCDMA 1X WINにおけるパケット料金定額制の加入率の高さと、様々なコンテンツサービスの利用率の高さだ。これがARPUの高水準安定に貢献している。
この高収益モデルを維持するために、auはコンテンツプラットフォームの囲い込みから一歩踏み込んで、自らが中心となってコンテンツやサービスを抱え込むビジネスモデルを採っている。EZナビウォークやLISMO、DUOBLOGなどはその好例だ。「auだけ」のコンテンツやサービスを増やすのが狙いだ。
さらに今年に入ってから、外部のネット企業との戦略的な提携や出資を通じて、auのサービスと外部のサービスを連携・融合させる方向性を打ち出した(5月18日の記事参照)。その代表的な例が、Google提携だろう。携帯電話向けのGoogleは3キャリアで使えるが、公式コンテンツ検索やフルブラウザ連携、広告ビジネスの展開までできるのはauのみ。いわば、「auだけ+α」である。
今回のグリーへの出資も、スタンスとして「Google提携に近い位置づけ」(KDDI広報部)である。GREEモバイルのサービスは3キャリアで使えるが、au向けでしか使えない“付加価値”や“シームレスなサービス”を増やすことで、auだけ+αの環境を作る。これがauのコンテンツサービスの魅力になる。
携帯電話とPC向けネットサービスの連携・融合については、ソフトバンクもヤフー・ジャパンを通じて行おうとしている(3月17日の記事参照)。その際は当然ながら、「ソフトバンクだけ+α」の付加価値・新サービスが用意されるだろう。auの一連の動きは、今後のPC向けネットサービスとの連携・融合において、実力や将来性のあるネット企業と提携し、「ヤフー対策」で先手を打っているという見方もできる。
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