IMT2000事業中止で2GHz帯の認可が取り消しに──どうなるLG Telecom:韓国携帯事情
3Gサービスの提供を目指していたLG Telecomだが、提供開始に踏み切れず、2GHz帯の認可が取り消しになった。体制の建て直しを迫られるLG Telecomは、今後どうなるのか。
「IMT2000事業計画」に沿って、3G事業を開始するとしていたLG Telecom。しかし、さまざまな事情からサービス開始に踏み切れず、韓国の情報通信部から事業権を取り消されることとなった。これにより社長の退任が不可避の状態に陥り、未納の周波数割り当て対価の支払いを迫られるLG Telecomは、体制の建て直しを余儀なくされている。
IMT2000よりも800MHzに魅力
7月19日、韓国の情報通信部は、LG Telecom(LGT)に対する「IMT2000事業」(CDMA2000 1x EV-DV)のライセンスを取り消す方針を明らかにし(7月21日の記事参照)、韓国で大きなニュースとして報じられた。さらにこれに伴い、LGT社長のナム・ヨン氏の退陣も法的に避けられない状態に陥り、周囲ではLGTの行く末を不安視する声が挙がった。
LGTが「IMT2000事業」中止の意向を明らかにしたのは、7月4日に開催された、同社の創立10周年記念記者懇談会の席上だった。この時、同社では現在SK Telecom(以下、SKT)のみが使用する800MHz帯を、共用したいとの考えを明らかにしていた。
同社によると800MHz帯を利用すれば、国内はもとより国際ローミングにおいても利用者の便宜を図れる一方、SKTとしては800MHz帯の利用料を受け取る形となるため、「Win-Win」の構図を取れるというものだ。こうした主張は今に始まったものではなく、SKTではそのたびに拒絶の意思を示している。
しかしそれでもLGTは、今年11月頃には800MHzと1.8GHzの両方に対応したデュアルバンド携帯を発表し、海外ローミングの際の利便性を高めると強硬姿勢を見せていた。
ここで疑問となるのが、LGTが事業者権を持つっている2GHz帯の使い道だ。これに関してLGTでは「IMT2000の周波数帯域を利用する計画はない」という意思を明らかにした。IMT2000事業の事実上の放棄を意味するかのような同社の方針が、認可の取り消しという措置につながったわけだ。
CDMA2000 1x EV-DV事業を中止する方針を打ち出した理由は、このサービスを行う事業者がLGTだけだったことが大きい。クアルコムやその他の関連業者が事業を積極的に支援する姿勢を見せず、サービスを提供できなくなったというのがLGTの主張だ。つまり通信方式に市場性がなく、メーカーも装備などを生産しなかったため、LGTでもやむなく事業ができなかったということだ。
LG Telecomが次に向かうところは
LGTはせっかく認可された2GHz帯を使わずに、何をしようとしているのだろうか。
LGTが2GHzの利用意思がないことを発表した同じ日に、1.8GHz帯をそのまま利用しながら、HSDPAやW-CDMAに対抗できる、「CDMA2000 1xEV-DO Revision A」(以下、EV-DO Rev.A)によるサービスを行うと発表している。
EV-DO Rev.AはCDMA2000 1x EV-DOの後継規格で、下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsの高速データ通信が可能だ。とくにLGTの場合は既存のネットワークをそのまま活用できるため、少なくともHSDPAなどをのサービスを提供するよりは設備投資がかからない。LGTの目線はすですでに、このEV-DO Rev.Aに向けられている。
しかし一方で、ライバルのKTFやSKTは苦い顔だ。とくにKTFは「LGTのEV-DO Rev.Aを共用することは、莫大な額を投資してHSDPAサービスを提供するKTFとSK Telecomに対する公平性を失う」「絶対に許容してはならない」というプレスリリースを出して強く反発している。3Gにかける意気込みで兆ウォン単位の投資を行ったKTFだが、これを機に資金力のあるSKTまでもがEV-DO Rev.Aを開始してしまうことを警戒しているのだ。
韓国情報通信部は27日、LGTに対して2GHzの周波数を返還させ、周波数割り当て対価の未納分1035億ウォンを徴収することを決めた。LGTではIMT2000事業のため、すでに2200億ウォンを納付済みだが、今回、周波数の返還に際して未納の1035億ウォンを支払うことになる。
ナム・ヨン氏は26日に退陣し、LGTでは同日に臨時理事会を開いてチョン・イルジェ氏を新しい社長として迎えることを決定した。ナム・ヨン氏はLGの戦略事業担当社長に内定しており、今後はこの会社で経営を受け持つこととなる。
3Gサービスに移行しないままKDDIに吸収合併されてしまったツーカーを想起させるLGTだが、そうならないためにもEV-DO Rev.Aは成功させたいところ。LGTのこの事業がうまくいった場合、他キャリアの動きも含め市場がどのように変わるのかにも注目したい。
佐々木朋美
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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