キーワードは“地域密着”。ICい〜カードの1年を振り返る――伊予鉄道 :Interview: (3/3 ページ)
“地域の足”である公共交通の衰退は、日本各地の地方都市に共通する問題だ。しかし伊予鉄道が松山市で導入したICい〜カードは、導入1年で大きな効果を上げ、乗車券だけでなく電子マネーとしても使える場所を広げている。伊予鉄道が成功した理由は、どこにあるのだろうか?
公共交通事業者としては希有な「利用客増加」傾向
伊予鉄道は地方におけるモータリゼーションがもたらす「中心部の経済空洞化」や「地元商店街の衰退」、そして今後の「高齢化社会でのモビリティ問題」など対して高い問題意識を持ち、公共交通の建て直しのためのサービス改善に力を注いできた。ICい〜カードはその一環であるが、これら総合的な取り組みの成果は着実に現れているという。
「サービス改善はICい〜カードだけでなく様々な分野で行っていますが、これら総合的な取り組みの結果、今年4月〜7月までで利用客は前年比で6.7%伸びています。これだけ伸びるのは全国的に見ても珍しい事例といえます。伊予鉄の公共交通部門は平成13年から利用客が伸び続けており、その上でのポイントアップですので、ITサービスの導入や輸送体系の見直しは大きな効果を上げています。
我々は公共交通や電子マネーにおいて、“地域密着”と“地元貢献”が重要だと考えています。あくまで地域指向で、松山に住む皆様に1人1枚もってほしい。そして地域の皆様が本当に喜んでもらえるサービスを提供していきたいと考えています。そこが全国区で展開されている他の電子マネーやクレジット決済との違いになります」(西野氏)
地域に根ざし、公共交通を軸に街作りと地元経済に根を張る。ICい〜カードは確かに、全国区のFeliCa決済とは明らかに方向性が異なる。
首都圏に目を向けると、伊予鉄と似たような展開ができそうなのが、私鉄・メトロ各線が導入する「PASMO」だ。周知のとおり、私鉄各社は「鉄道と街作り」を連携した沿線開発を行ってきており、スーパーやコンビニ、飲食店などもあわせて事業展開しているケースが多い。PASMO導入に際して沿線密着型で積極的な利用促進を図れば、ICい〜カードのように早期の普及が可能になるのではないか。
FeliCa決済と地域経済の関わり、変化の促進を考える上で、ICい〜カードの取り組みは今後も注目していく必要がある。
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