杜の都におサイフケータイクレジットを――仙台6商店街の「iD」採用 :神尾寿の時事日想:
仙台駅を中心とする6つの商店街は、この夏から一斉に「iD」を導入している。導入に至った経緯や、実際の店舗の様子をレポートする。
JR仙台駅から西に延びる中央通りが藤崎デパートでつきあたり、南北に延びる一番町通りに繋がる。このT字型に続く2つの大通りが、“杜の都”仙台の中心部になる。
今年7月、この2つの大通りにある6つの商店街が、ドコモと三井住友カードの推すFeliCaクレジット方式「iD」を導入した(7月24日の記事参照)。導入店舗数は約130店舗(8月末段階)。地続きとはいえ、異なる複数の商店街が同じFeliCa決済を一斉導入するのは全国初だ。
今日と明日の時事日想は特別編として、仙台6商店街の「iD」一斉採用にフォーカス。まずは商店街の模様についてレポートする。
「街Navi仙台」と連携してスタート
今回、iDを採用したのは、2つの大通りを形成する「ハピナ名掛丁商店街」「クリスロード商店街」「マーブルロードおおまち商店街」「サンモール一番町商店街」「ぶらんどーむ一番町商店街」「一番町四丁目商店街」の6商店街である。
通常、商店街という組織はひとつひとつが独立しており、互いに競争関係にある場合が多い。しかし、今回iDを採用した6商店街は、iD導入より以前からドコモ東北と連携して、無料のタウン情報誌「街NAVI 仙台」や「machinavi PRESS」の発行、携帯電話サイト「街NAVI仙台」(http://www.navi-s.com/)の提供で協力してきた。街NAVI仙台での協力関係がベースになり、さらにiD導入へ進んだという背景がある。
むろん、今回のiD導入に際して、6商店街の中にあるドコモショップはiDのアンテナショップ的な役割を担っている。例えば、ドコモショップ仙台店ではDCMX / iDの特設コーナーが設けられているほか、店内には6商店街でiDが利用できる店舗の一覧が用意されている。DCMXには、通常のクレジットカードサービスに近い「DCMX」と、利用可能金額は月に1万円までだが、幅広いユーザーがより簡単に使える「DCMX mini」の2種類があるが、特にPRされているのは、DCMX miniの方だ。
おみやげ物屋や飲食店でもiD
仙台6商店街では、特に業種・業態の偏りなくiDが導入されている。ユニークなところでは、おみやげ物や名産の飲食店でも採用されており、携帯電話で気軽に支払いができる。
しかしその一方で、取材時はiD導入からまだ間もなかったためか、一般ユーザーが利用する光景には出会えなかった。また店舗内のリーダー/ライター設置も戸惑いがあるようで、レジ周辺に所在なく置かれていたお店もあった。これは先の九州SA・PAの取材時にも感じたことだが(4月4日の記事参照)、現在のリーダー/ライターは狭いレジに設置するにはサイズが大きく、ケーブル類の取り回しも悪い。今後、幅広い業種にiDをはじめとするFeliCa決済が広がる中で、リーダー/ライターの小型化・スリム化や取り回しのよさは1つの課題になりそうだ。
高額商品も買えるiDのメリット
現在、FeliCaクレジット決済方式は「iD」、「QUICPay」「スマートプラス」の3種類があるが、この中でiDは“1回あたりの決済上限額がない”のが他方式との大きな違いになっている。例えば、QUICPayでは1回あたり2万円が上限だ。一方でiDは、親カードの限度額までならおサイフケータイでも上限額を気にせず利用できる。
商店街での導入では、この「決済上限額がない」こともメリットになる。例えば、眼鏡店の「水晶堂」では数千円の消耗品から、2万円を超えるメガネ本体までiDで購入できる。むろん、こういったお店では通常のクレジットカードも利用できるが、セキュリティや利便性の店でおサイフケータイが使えるメリットは大きい。商店街のように様々な業種が集まるところでは、FeliCa決済で特別な上限額がないことも導入のポイントになるようだ。
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