市場に新風を吹き込む──韓国キャリア、メーカーの「次の一手」:韓国携帯事情(3/3 ページ)
HSDPAやWiBroの導入、携帯インセンティブの解禁など新しい動きが見られる韓国の携帯電話市場。キャリアやメーカーは、コンシューマー向けにも新たな試みを展開し、市場を活性化させようとしている。
HSDPAを多彩な端末で体験
SK Telecom(以下、SKT)は、HSDPA/CDMA2000 1xEV-DO/WiBroを利用できるモデムを開発し、「T LOGIN」と名付けてサービスを開始した。
USB端子がついているこのモデムをノートPCやデスクトップPC、PDAなどのUSB対応端末に差し込めば、携帯電話以外でもHSDPAなどのネットワークを使ったデータ通信が可能となる。現在はHSDPAとEV-DOに対応したモデムのみを販売しているが、今年の末頃にはWiBroとHSDPAを利用できるタイプのモデムを販売する予定だ。
さらに今後はUSBで接続するのではなく、元からモデムを内蔵するデバイスの販売も予定している。10月末にはポータブルマルチメディアプレーヤータイプのものを2モデル、来年1月頃にはデジタルカメラタイプを1モデル発表し、これで「サイワールド」や音楽配信サービス「MelOn」などの利用を促進したい考えだ。
またT LOGINを通じてDVD画質の動画を提供するサービスを年内に提供する計画もあり、現在、SKTの一部ユーザーを対象に試験サービスを行っている。
T LOGINサービスに使われるUSBモデムの価格は24万ウォン(約2万9000円)だが、インセンティブでさらに安く購入できる。SKTでは10月11日からインセンティブの金額を変更すると予告しており、インセンティブ額の幅は5〜26万ウォン(約6100〜3万2000円)になる
インターネット構造を抜本的に変更
KTFではインターネットサービスを、従来のエンタテインメントを軸に据えたものから、各種情報や知識、生活情報を中心としたものにシフトすると宣言している。
手始めとしてKTFでは、同社のインターネットサービスである「magic n」のトップメニューに、天気やニュースなどの無料で閲覧可能なコンテンツを配置し、通常のポータルサイトのような画面構成にするという。ユーザーが気になる情報があれば、そこから有料コンテンツにアクセスできる仕組みも用意する。
例えば映画情報をチェックしているうちに予告編が見たくなった場合、タイトルなどをクリックするとEV-DOサービスの「fimm」に接続して、よりスムーズな動画を見ることが可能となるという利用イメージだ。
magic nとfimmとの両方を運営してきたKTF。fimmはより高画質の動画が見られるなどのメリットはあるものの、サービス内容の差別化が難しく、利用料が高いというイメージもぬぐえなかった。そのためこうしたシームレスなサービス体系を用意し、より多くの利用を促したいのかもしれない。
実は今年7月にはSKTが、トップ画面に通常のポータルサイトのようにニュースや人気コンテンツを配置できる新しいブラウザを導入している。トップメニューをダウンロードすると、その直下にあるコンテンツも一緒にダウンロードされるため、見たいコンテンツにアクセスするプロセスが短縮される。またメニューをクリックすると、画面がポップアップして詳細情報を表示する機能も備えるなど、利便性が増している。
KTFによるインターネットサービスの改善はこれを意識したものともいえ、今後主流となるHSDPAやWiBroでのサービスを提供しやすいようにと導入したようにも見える。
携帯をブロードバンド化するHSDPAやWiBroが登場したといっても、「高画質の動画が見られる」「データ通信が速い」というだけではユーザーの興味を引きつけられない。そのためキャリアもメーカーも魅力ある端末やユニークなサービスで、飽和気味の市場を再度活性化させようとしているようだ。
佐々木朋美
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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