「PCからスマートフォンの時代へ」──英SymbianのクリフォードCEO:Symbian Smartphone Show 2006
携帯向けOS市場で最大のシェアを持つ英Symbianが、「Symbian Smartphone Show 2006」を開催。CEOのクリフォード氏は今年の戦略のポイントとして「途上国のニーズ拡大」と「スマートフォン世代の台頭」を挙げた。
10月17日、携帯電話向けOS市場で最大のシェアを持つ英Symbianのプライベートイベント「Symbian Smartphone Show 2006」が、英ロンドンで開幕した(2005年10月の記事参照)。2日間に渡って開催されるイベントの展示会場には120社以上がブースを構え、Symbian OSに対応したアプリケーションやソリューション、端末を披露している。
イベント初日に基調講演を行ったSymbianのCEO、ナイジェル・クリフォード氏は、今年も同社の事業が好調であることを、Symbianの市場シェアを挙げながら説明した。
2006年第2四半期中に出荷されたSymbian OSベースの端末は1230万台。これには、富士通の「F902iS」やシャープの「SH902iS」、三菱電機の「D902iS」などのNTTドコモの端末も含まれる。すでに100機種以上のSymbian端末が登場し、累計で8280万台のSymbian携帯電話が出荷されたという。スマートフォン(ここでは、通話以外の多彩な機能を備えた高機能端末を指す)全体に占めるSymbianのシェアは約70%。3Gに限れば、第2四半期に出荷された3G端末の92%がSymbianベースだという。
スマートフォンの成長はPCをしのぐ
急成長しているスマートフォンは、近い将来PCの成長をしのぐと予想されている。クリフォード氏が示した表によると、スマートフォンは2007年にはデスクトップPCの売上げを上回り、デスクトップPCとノートPC、両方を上回ることになるという。また、デジタルカメラなどの一部家電製品も携帯電話に統合されつつある。
こうした市場の変化についてクリフォード氏は「パラダイムシフトが起こっている」と説明する。スマートフォンはPCからの自然な進化であり、「(市場のニーズは)25年前に(米Microsoftの会長兼チーフソフトウェアアーキテクトの)ビル・ゲイツ氏が示した“すべての家庭にPCを”から、Symbianの示す“全員のポケットにスマートフォンを”に変わる」と続けた。
“初のインターネット体験が携帯電話”の発展途上地域にフォーカス
このパラダイムシフトを現実のものとするためには、“スマートフォンをマスマーケットへ”という、Symbianが昨年来掲げてきたテーマが重要になる。Symbianは今年、これに新しいテーマとして「発展途上国へのフォーカス」を加えた。
発展途上国では、PCからインターネットにアクセスするインフラが整備されていないことから、携帯電話が最初のインターネットアクセスデバイスとなりうる。ユーザーは、成長国が経てきたステップを飛び越えて、モバイルインターネットを体験することになるわけだ。
スマートフォンの普及率は、日本と欧州がリードしているが、モバイル端末の出荷台数が多い(=市場規模が大きい)中国におけるスマートフォンの成長率は140%。これは、欧州の20%、北米の88%をしのぐ数字だ。そこで、Symbianでは中国とインドに拠点を置き、現地パートナーと協力しながら、ニーズに応じていくという。
台頭するスマートフォン世代、厳しい要求に対応しうるOSを
クリフォード氏が挙げるもう1つのトレンドが、“スマートフォン世代”の台頭だ。1990年以降に生まれたこの世代のユーザーは、常にネットに接続し、場所や時間を問わずに情報を得たりコミュニケーションすることが当たり前になっている。スマートフォンを“持っているのが基本”のこの世代は、機能に対する要求が高く、容赦ない点が特徴だという。
彼らは各種機能をマルチタスクで利用するなど、これまでの世代とは異なる使い方をするため、それに耐えうる端末やサービスの提供が必要になる。またこの世代の台頭により、PCで人気が高まっているSNSなどのWebサービスがモバイル分野でも拡大すると予想される。
Symbianはこうしたニーズに対し「堅牢で安定したプラットフォームを提供するとともに、柔軟性を提供することで、サイクルが短いトレンドに迅速に応じられるようにする」(クリフォード氏)という。
このパラダイムシフトとスマートフォン世代の台頭により、5年後には全携帯電話の30%がスマートフォンとなり、そのうちの50%が途上国ユーザーになるという。コンテンツも増加し、インターネットサービスの50%が携帯電話からアクセスできるようになると予測する。
クリフォード氏は、具体的なフォーカスエリアとして、音楽・TVを含むマルチメディア、SMS/電子メールなどのコミュニケーション、ビジネス、ゲームなどを挙げる。特にゲームでは、Symbianユーザーにゲーマーが多いことから、チップベンダーなどと協力しながら、ユーザー経験の向上に務めているという。
これまでと同様、端末ベンダーやオペレーター、アプリケーション開発者などとの協業関係を保ちながら、Wi-Fiネイティブサポートなどの機能強化が図られたSymbian OSの最新版「Symbian OS v9.3」(7月12日の記事参照)でも、前バージョンとの互換性を確保し、全員が収益を分け合うエコシステムを維持すると述べた。
なおこの日、韓Samsungと韓LG Electronicsがそれぞれ、HSDPAに対応したSymbian端末「SGH-i520」「JoY」を発表している。
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