「ケータイ活用」で客足を取り戻せ――iDを導入する仙台6商店街の狙いとは? :神尾寿の時事日想: (2/2 ページ)
ファミリー層を中心とする、慢性的な客足の減少――全国的なこの問題に悩む仙台駅周辺の6商店街では、「iD」導入や携帯用サイトの構築など、携帯電話を利用した活性化に取り組んでいる。商店街の狙いは何か? 仙台・クリスロード商店街振興組合に聞いていく。
街NAVI仙台の延長線上でiDを導入
街NAVI仙台の成功により、6つの商店街の連携体制が整った。またQRコードで始めた携帯電話機能の活用も予想以上の効果があることが判明し、次のステップとして注目されたのがおサイフケータイだ。
「街NAVIをさらに便利なものにするため、広告の電子化だけでなく、電子決済も活用したいと考えていました。そこで(ドコモの)iDを導入することにしました」(松沢氏)
おサイフケータイ対応については、街NAVIの制作時期の2005年中から構想はあったという。しかし当時はEdyの方が優勢な状況であり、また携帯電話連携の最初のステップだったことなども鑑みて、「まずはQRコードからドコモとの連携を始めようということになった」(松沢氏)という。
「街NAVI仙台の発行後、ドコモさんが自らがイシュアになるDCMXを始められた。(街NAVI仙台からの)ドコモさんとのコラボレーションを考えると、同じドコモが始めるiD/DCMXを採用するのが商店街にとってもメリットが大きい。
またドコモさんは少額決済に対する力の入れ方が違うと感じています。既存のクレジットカード業界はドコモが(iDを)始めると発表するまで、3000円以下の少額決済に消極的でした。ドコモのDCMX mini / DCMXユーザー数の伸びをみても、その将来性に期待できますね」(松沢氏)
商店街での導入の場合、決済金額も少額から高額まで幅広くなる。その点でも「(iDを使う)DCMX miniで少額の裾野が広く、高額の決済にはDCMXで対応できる。この点は商店街として導入しやすかったポイントです」(松沢氏)という。利用者の裾野の広さとポストペイならではの利便性の両立は、他のFeliCaクレジット方式にないiD / DCMXの強みである。
しかし、その一方で、iDは今のところドコモのおサイフケータイしか対応していない。KDDIやソフトバンクモバイルは、自社のおサイフケータイでのiD対応を拒んでいるのが現状だ。この点は導入の際の懸念にならなかったのだろうか。
「商店街としてはキャリアによってサービスの壁を作りたくありません。実際、街NAVI仙台のQRコード採用では全キャリアに対応しています。確かに現状ではiDはドコモユーザーしか使えませんが、(それでも導入したのは)いずれ他の携帯電話キャリアでも、急成長するiDを導入するであろうという期待からです」(松沢氏)
また将来的には「トルカの活用や商店街ポイントの導入なども検討していきたい」(松沢氏)という。
メディア連携の可能性と、ドコモショップの地域密着がiDの強み
仙台の6つの商店街でのiD導入は、それが「新たな決済手段」としてだけでなく、携帯電話を使ったメディア連携やおサイフケータイのCRM分野での活用まで踏み込んで考えられていた点が興味深い。また街NAVI仙台の創刊時からドコモ東北が地元商店街での携帯電話活用を積極的に支援し、ドコモショップが地域密着で街NAVI仙台やiDの後押しをしている点も特筆すべきところだろう。おサイフケータイならではのメディア/ネット機能の連携と、ドコモ地域会社やドコモショップによる地元密着の利用者数拡大や利用促進の取り組みが、他のFeliCaに対するiDの優位性になっている。
FeliCa決済方式は現在、合従連衡しながら勢力の拡大をしている。その中で、ユーザーや加盟店との距離が近く、「ケータイ活用」というソリューションが提案しやすいiDは、今後も注目の存在といえそうだ。
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