いよいよPASMO開始。3月18日はFeliCaビジネスの記念日になる:神尾寿の時事日想:
私鉄・地下鉄やバス向けの共通IC乗車券「PASMO」が登場することで、首都圏の公共交通事情は大きく変わる。また、電子マネー機能に関連する、私鉄各社の取り組みにも注目だ。
12月21日、PASMO協議会加盟事業者が、関東エリアで利用できる共通交通ICカード「PASMO」のサービスを、2007年3月18日の始発から始めると発表した(12月21日の記事参照)。これにより私鉄やJRなど首都圏のほとんどの鉄道やバスに1枚のカードで乗り降りできるようになるほか、加盟店では電子マネー機能を利用できる。また、PASMOはSuica/モバイルSuicaとの連係機能を持ち、IC乗車券と電子マネーの両方で相互乗り入れが実現するほか、連絡定期券の利用も可能になる。
詳しくはニュース記事を参照してほしいが、PASMOに参加する私鉄・バス事業者は、サービス開始当初で54事業者。最終的には101事業者に上る予定だ。これほどまでに多数の事業者が参画するIC乗車券システムは、過去に例がない。さらにすでに普及しているJR東日本のSuica/モバイルSuicaとも連携することで、世界的に見ても類のない先進的な公共交通システムになる。
電車・バスなどの公共交通は、20世紀型の自動車交通システムに比べて、安全性や環境負荷の小ささでITSの世界でも注目されている。そこにFeliCaを使ったIC乗車券による利便性の高さ、サービス多様化の可能性、さらに電子マネーによる新規ビジネスの創出効果などが加わることで、公共交通システムが再び見直されることは間違いない。JR東日本の小懸方樹常務の「(SuicaとPASMOが)交通の歴史を変える」という発言は、むしろ控えめなくらいだと思う。
電子マネーに関わるのは7事業者
ビジネス的な観点での注目は、やはりPASMO電子マネーだろう。この分野は小田急電鉄、京浜急行電鉄、西武鉄道、東京急行鉄道、東京地下鉄、東京都交通局、東武鉄道の7事業者が加盟店開拓を行う予定であり、それぞれの駅ナカ・駅チカには順次PASMO電子マネーが広がる模様だ。
特に注目なのは、東急、小田急、西武、東武といった沿線の宅地・商業施設開発に強い事業者だ。彼らのビジネスは“まち作り”による関連事業全体のシナジー効果の創出にあり、そこにPASMO電子マネーの面展開への期待が持てる。
さらにマンションや新興住宅でのPASMO電子錠の登場や、関西のPiTaPaが立命館小学校に提供したようなPASMO機能付き児童証/学生証の登場も十分に考えられる(6月7日の記事参照)。Suica/モバイルSuica以上に、生活密着型のサービスや、関連事業・サービスの広がりが期待できるだろう。
また、私鉄各社のクレジットカードとの連携も興味深い。すでに私鉄のハウスカードからPASMOへのオートチャージや、ポイントサービス連携の動きは出てきているが、今後はPASMO一体型カードの登場や、PASMOと連携したFeliCaクレジット導入などの可能性が考えられる。
PASMOのサービス開始は、首都圏のFeliCa関連ビジネスにとっても、大きな追い風になる。Suicaとの併用で利用者も一気に増えるだろう。筆者自身、1ユーザーとしてPASMOの開始が待ち遠しくてしかたがない。
3月18日、その日はFeliCa関連ビジネスにとって1つの記念日になるはずだ。
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