インセンティブモデルの是非、理想論だけで考えないでほしい──KDDIの小野寺氏
総務省が「モバイルビジネス研究会」を立ち上げ、携帯電話のビジネスモデルについて再検討する動きが出ていることを受けて、KDDIの小野寺社長が意見を述べた。
総務省が「モバイルビジネス研究会」を立ち上げ、携帯電話のビジネスモデルについて再検討する動きが出ていることを受けて(記事1、記事2参照)、KDDIの小野寺正社長が1月26日に開催した決算発表会見で意見を述べた。
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- →「携帯市場活性化」の議論は、バランス感と慎重さが重要
- →インセンティブとは
モバイルビジネス研究会は、携帯電話市場における競争の活性化や利用者の利益向上を目指して、現状のビジネスモデルを検証することを目的に開催される会合。検討課題の中には、日本市場で定着しているインセンティブ(販売奨励金)やSIMロックのあり方も含まれている。
諸外国と異なる2つの点を明確にしてほしい
日本の携帯電話市場で通信キャリアは、端末価格と料金プランが密接な関わりを持つインセンティブモデルを採用している。インセンティブモデルとは、通信キャリアが端末を販売するにあたって販売奨励金を出し、元々の端末価格より購入しやすい価格で販売するモデル。値引きした端末の代金は、実質的には月々の基本使用料や通話料に上乗せされる形でユーザーが支払うことになる。
小野寺氏は、インセンティブの善し悪しを議論する際に、なぜ日本が海外とは異なるビジネスモデルになったのかを考える必要があると説明。その理由は2つあるとした。
1つは、通信料金に対して1年、2年という契約期間を設けられない点だ。「諸外国の料金プランを見ると、通信料金に対して1年とか2年という契約期間を決めたものがほとんどで、例えば“2年契約であれば、端末はこの値段、通信料はこの値段”という定め方ができる。しかし日本では郵政省の時代から、“契約期間を作ることはまかりならない”といわれており、どんな契約であろうが同じ料金にせざるを得なかった」(小野寺氏)
もう1つは通信キャリアが端末価格をコントロールできない点だ。「アメリカとヨーロッパはショップによって多少値段の差があるが、多くの諸外国はオペレーターショップのストリートプライスはすべての店が同じ。つまりオペレーターが価格をコントロールしている。我々はこれで何度も痛い目にあっており、公正取引委員会から注意されている。端末価格は高いが通話料金は安い、端末価格は安いけれど通話料金が高いというものを作りたいというが、端末価格を誰がコントロールするのか」(同)
小野寺氏はこの2つの要素が諸外国との大きな差であるとし、販売奨励金をなくす政策をとりたいなら、この2点をはっきりさせるべきだと主張。また、さまざまなビジネスモデルがあり得るが、メーカーや販売店に、急激な影響を与えるような方法をとるべきではないとも付け加えた。
「いずれにしても、メーカーや販売店に対して急激な影響を与えるような方法をとった場合、われわれ携帯電話の事業者ではなく、事業者以外のメーカーや販売店に対する影響があまりにも大きいのではないか。軟着陸をどうするのかを考えずに理想論だけでやったら、日本の携帯電話産業そのものがおかしくなる可能性が充分にあると思う」(小野寺氏)
「コミッションがあるからワンセグが普及する」──小野寺氏
キャリアのインセンティブ負担の大きさが通信料値下げの抑制につながることなどから、ネガティブな面をクローズアップされがちなインセンティブモデルだが、新サービスの普及を後押しし、新たなビジネスモデル創出のチャンスを広げていることも事実だ。
最近の例として小野寺社長が挙げたのがワンセグだ。「ワンセグがこんなに普及するのも、われわれが入れているからで、入れなければ普及しない。コミッション(インセンティブ)があるから(本来は端末価格が高いワンセグ端末を、手ごろな値段で提供しているから)ワンセグが普及している」(小野寺氏)
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