わが家のブロードバンド計画〜リスクもある8M ADSLサービス速くなったと喜んだのも束の間。8Mサービスにはリスクも同居していた。「フレッツ・ADSL」の1.5Mサービスから8Mサービスに乗り換えた作者の実体験レポート。マンションに住んでいる人は要チェック。
3万円/月を超える金額でOCNエコノミーを使い続けてきたわが家が,はじめてのブロードバンドインターネットに触れたのはちょうど一年前。すっかり1Mbpsを超える速度が当たり前になっていたが,わずかなコストアップで8Mに移行することが可能だとか。これを見逃す手はないと,管轄の練馬北町局の受付開始日,1月10日に116番へと電話してみた。
ダウンタイムの短さが決め手……で本当にいいのか?まずは,わが家のアクセスラインに関する環境報告をしておこう。管轄局の練馬北町局までの距離は,直線で400メートルと非常に近い。150戸を超える大型のマンションで,かつ入居後2年を経ていない比較的新しい建物であるため,完全な光収容施設となっている。しかし,わが家の場合は光ファイバーと同時に引き込まれている20ペアのメタルのうち1ペアを利用して「OCNエコノミー」を利用していたため,この回線をADSLに切り替えることでブロードバンド化を果たすことができた。導入したサービスはNTT東日本の「フレッツ・ADSL」である。 と,このような環境でリンク速度はダウンストリームが1536Kbpsでアップストリームが512Kbps。つまりADSLレベルではフルスピードでリンクしており,かつ非常に安定していたのである。モデム内のアクセスログを見てもリンク切れは全くなく,まるでデジタル専用線のように快適な環境だった。 こうした非常に安定して,かつ高速な環境なだけに,より高速なADSLへの移行には躊躇する気持ちもあった。一時,「Yahoo! BB」の導入を検討したこともあったが,切り替えを断念したのは当時スムースな移行が期待できなかったうえ,集合住宅ということで宅内配線でISDNからの強い干渉を受け,Annex Aではかえって不安定になってしまう危険性があったからだ。 NTTの説明によると,通常はADSLとISDNが同じように電話局から信号との間で送受信され,その間,均等に減衰して到達する。しかし光収容の集合住宅では,ISDNが宅内収容装置で光信号を電気信号に変換・増幅して送受信されるため,電話局から減衰して到達するADSLよりも信号強度が強い。つまり,光収容の集合住宅では,近接回線にあるISDNの影響をより強く受けるという。 そこでAnnex Cの8Mbpsフルレートサービスが始まるのを待ったのだが,そこで新たに問題となったのは,サービス切り替え時の空白時間だ。現在は,異なる会社が提供するサービスに切り替える場合でも,ADSLが利用できなくなる時間は24時間程度のようだが,アッカ・ネットワークスが8Mbps Annex Cのサービスを開始した当時は「フレッツ・ADSLの廃止から,アッカのサービスに切り替える際の時間的ギャップに関しては分からない」と言われた。 さらに悪いことに,もともとが光収容の建物のところに空いているメタルをたまたま使えたという状況のため,普通に申し込んで机上調査を依頼しても「光収容のためADSLは利用できません」という結果になってしまう。すると「いや,自宅はすでにタイプ2のメタル回線を使っていまして,それを切り替えたいんですが……」とネゴシエーションしなければならず,しかもエンドレスにループしてしまうのだ。 あくまでわが家での事例でしかないが,フレッツ・ADSLからほかのアクセスラインに切り替えるには,膨大なエネルギーが必要になってしまう。過渡的なものかもしれないが,日常的な仕事や海外出張をこなしながら,こうしたコミュニケーションを取り続けることは難しく,フレッツ・ADSLを選択することにしたのである。 これに対して,フレッツ・ADSLの1.5Mから8Mへと移行させるのは,非常に簡単な手続きで済んだ。基本的に116番に電話をして(もしくはNTT東日本のWebサイトから申し込んで),既存サービスの切り替えを申し込むだけである。わが家の場合,1月10日に申し込んで,2月1日にはモデムが到着。2月4日には8MへとグレードアップしたADSL回線が開通した。
もちろん「面倒だから」という理由でADSL事業者を限定してしまうのは問題があるとは思うが,移行に関わるエネルギーと事業者を変えることのメリット・デメリットなどを考慮すると,積極的にフレッツ・ADSLから別のサービスへと切り替えるのは難しい。本来であれば,事業者を変更する場合でも,簡単な手続きだけで済むような作業の枠組み作りが必要だと思う。
モデムをつないで待ちかまえるだけさて,実際の移行手順だが,最近のフレッツ・ADSLはレンタルで借りるモデムが,すでに1.5M,8M両対応のものに切り替わっているそうだ。筆者のモデムは1年前のものであるため1.5Mのみの対応だが,8Mサービス申し込み時にモデムのレンタル,あるいは買い取りを申し込むとNTT東日本ブランドの両対応モデムに取り替えてくれる。 NTT西日本では住友電工製のADSLモデム「MS」とNEC製のADSLモデム「MN」,2種類が採用されているそうだが,NTT東日本の場合はMNの方に統一されているようだ(中身はNECブランドで販売されているADSLモデムと同一)。 エンドユーザー側の作業としては,モデムを新しく送られてきたものに交換しておくだけ。1.5Mにも対応しているため,8Mに切り替わる前でも問題なく繋がってくれる。あとは電話局側の端子をつなぎ変えてもらうのを待つ。 切り替え時のブランク時間はほとんどなかった。「あれ? 繋がらないな?」と思っていると,しばらくしてすぐに再リンクする。1.5Mから8Mへの切り替えを申告しなくてもいいISPを使っている人なら,そのまま知らない間に高速になっているはず。何ら面倒くさいことはない。移行作業が大変かもしれないと二の足を踏んでいる人には,全く気にせずに移行できると進言したい。 しかし,世の中そうそううまくはいかないもので,8Mに移行するなりいくつかの問題が発生してしまった。なにも締め切りが立て込む時期に,回線のトラブルが起きなくても……と思いつつ,現象の把握と対策の検討に入った。
ノイズに厳しい8M。距離が近くても安心できないすでにアッカ・ネットワークスやイー・アクセスなどが提供しているAnnex Cの8Mサービスがあるため,8MのADSLが回線品質に大きく影響されることは,周知のことと思う。すんなりと繋がる場合は,距離が2キロ近くあっても安定して4Mbps以上の速度が出ることがある反面で,回線品質が悪い場合には1キロ程度の距離でも1.5Mのサービスと大して違わない結果しか出ない場合もある。むしろ1.5Mのままの方が安定して(リンクが切れやすいなどの問題なく)利用できていたという人の数も,決して少なくないようだ。 だが,我が家の場合は電話局から直線距離で400メートルと極端に近いことや,1.5M時にモデムステータスを見ると信号の減衰が20dB台前半と小さかったこと,1.5M時には常時フルスピードでリンクし,かつ切れることが無かったことなどから,心配な反面で楽観的な気持ちでいた。 実際,8Mに切り替わった直後は「フレッツスクエア」にアクセスし,速度テストで6Mbps近い速度が出ているのが確認できた。これはめちゃくちゃに速い!8Mbpsに変更して良かったと思ったのだが,そう思ったのも束の間,しばらくすると再度回線が切断されてしまった。 しばらくして再度リンクが確立されたのだが,今度は速度が先ほどよりもかなり遅くなっている。遅くなっているといっても,2.8Mbpsほどの実効速度は出ているのだが,当初と比べると半分になってしまったわけだ。そこでモデムのステータスから,どのぐらいの速度で接続されているのかを確認してみた。 するとダウンストリームは3584Kbps,アップストリームは928Kbpsでリンクしている。ADSLレベルでのリンク速度は約3.5Mbps出ているわけだから,特別不満というわけではない。これでも1.5Mの時から比べると2倍以上の速度は出ているのだから。しかし,気になったのはリンク速度そのものよりも信号の減衰が切り替え前の20dB台前半から34dBまで劇的に増えていることである。 そこで今度は,モデムを1.5Mモードに切り替えて接続してみる。フレッツ・ADSLの8Mサービスでは,強制的にG.liteで接続することもできる。回線の品質が以前と同じサービスは1.5Mbpsで接続することも可能だ。ところが,今度はダウンストリームが800Kbpsでしかリンクしない。実効速度で言えば700Kbps程度。 ついさっき,8Mに切り替わるまでと比べると,同じG.liteでも約半分の速度しか出ていないことになる。8Mに切り替えて調子が悪ければ,もとの1.5Mに戻そうと思っていたのだが,これでは元に戻しても従来と同じ品質で接続できるとは限らない。
悪いことはこれだけでは終わらない。今度はリンク切れが不定期に発生するようになった。リンク切れが発生するタイミングは完全にランダムで,再接続が完了するまで少しの間,通信ができなくなる。リンク切れし始めると続けて何度も切れるため,どこかから特定の発信源からのノイズを拾っているものと思われる。 そこで電源とADSLの接続ケーブルにノイズフィルターを入れ,さらに接続ケーブルをギリギリの長さまでカットして端子をカシメ直し,ケーブルの周りにアルミホイルを巻いてシールドしてみた。リンク切れが減ったような気もするが,大きなファイルを連続してダウンロードしている最中など,急にデータの流れがストップし,しばらくすると堰を切ったように流れてくるといった不安定な通信状況のまま現在に至っている。 フレッツ専用の故障受付ダイヤルが非常に混雑していて繋がらないため,現状で詳しいことは分からず,また根本的な対策の方法や今後の方針は固まっていないが,NTT板橋の担当者に確認したところ,回線データベース上ではいったん利用回線が削除されたものの,同じ線番で再登録されており,物理的な回線に変更はないという。その割に信号の減衰量が8dBも多くなっているの解せないが,それも含めて今後,改善されるようであれば再度,その対策方法や原因などについて報告したい。 ひとつ言えるのは,8Mサービスは想像していたよりもリスクが大きいということだ。前述したように距離が2キロ離れていても,うまくいく場合はうまくいく。特に一戸建てで屋内にISDNをADSL回線とは別に引き込んでいない場合は,わが家のように光収容の集合住宅に住んでいる人よりも成功率が高いと思う。 一方で,距離が近いからといって安心するのも早計だ。なにしろ,わが家は直線で400メートルしかないにも関わらず,不安定さに頭を悩ます状況に陥っているのだから。特に光収容の集合住宅では,冒頭で少し述べたようにISDNと屋内で強い干渉を受ける可能性があることは知っておいた方がいい。
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