連載 2002年9月20日 09:10 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
ストリーミングの存在意義〜ポイントは音だ

「時間の『尺』を持った、ストリーミングである意味はどこにあるのか?」と突き詰めていくと、意外な結論に行き着く。実は動画より、音声のほうがよっぽど大事ということ。少し「メディア」について真面目に考えてみようではないか

 実は私、ストリーミングに関する本を、尊敬する方々と一緒に執筆している。何度かミーティングしているのだが、どなたも「業界の知恵袋」みたいな方々で、いつも勉強になることばかりである(いろんな意味で)。で、先日、ミーティングの中で、ある方から面白い疑問が提起された。「ライブカメラでJPEGをガンガン送りつけるのと、ストリーミングとでは、いったい何が違うんだろう?」ということである。

 いや、もちろん、パケットがどうのこうのなどという話ではない。技術については知り尽している方が言っているのだ。つまり、「メディアとして本質的にどう違うのか」という意味である。で、少し話した結果、「基本的に、映像を伝えるという目的においては同じようなものであろう」ということになった。

 私が思うに、「映像を伝えるという目的においては」という部分がポイントなのである。ムービーやら音声やらのような時間的な長さを持ったメディア(以下、適当な言葉が見つからないので『時間軸メディア』と呼ぶ)において、動画というのは静止画の連続でできているものである。だから、それが情報として十分かどうかという話は別として、動画の情報を切り出して静止画として表現することは可能なのだ。だから、動画は「JPEGガンガン送りつけ戦法」で代用できるものなのである。そうやって考えていくと、わざわざ時間軸メディアにしなくても済むコンテンツは、世の中に腐るほどあるのだ。

 が、この戦法では代用できないものがある。いうまでもなく、「音」である。音は必ず長さを持っていて、どんな技術をもってしても、「静止音」を作り出すことはできないのだ(ひょっとしてエラい学者の中では理論的にそういうものがあったりするかもしれないが、基本的にありえない)。となると、「何がなんでも時間軸メディアでなければ表現できない」のは、実は音声ではないだろうかという気がするのだ。

間違いだらけの「ブロードバンド=動画」オヤジ

 「いやいや、そうは言っても時代はブロードバンドですからなー、これだけ環境が整えば動画を流さないワケにはいかないでしょう! ワッハッハ!」って? いったい、どこまで考え方が「バブって」(*バブリーな感覚になって)いるんだろうか? 読者の方で、そういうことを言う輩を発見したら、是非、以下の質問をぶつけてみていただきたい。

1.あなたは道路が太くなったら車をデカくしたくなるタイプですか? アメ車とかリムジンとかにしますか?

2.あなたは広い家に引っ越したら、それに合わせてデカい家具を買いますか? あるいは、子供をガンガンつくって一緒に住む人を増やして、とりあえずスペースを埋めたくなるタイプですか?

3.あなたは、もし便器の容量が増えたら、「ヨシ、ものスゴい量のウンコをしてみよう!」って思うタイプですか?

 どれも似たようなものである。因果関係がぜーんぶ逆なのだ。普通は「ウンコの量が多くて困るから便器を特注しよう」と考えるべきなのだ(そんな人……いるかな?)。だから、「もともと映像を扱っていて、ブロードバンドの普及を待ちわびていた人」が、「これからはわれわれの時代!」と気合いを入れて活動に力を入れるというのは正しい姿なのだ。大いに応援したい。

 そうではなくて、たまたまブロードバンド時代になったから何かしたいということであれば、まずは乗り物(=コンテンツの内容)から検討するのが普通だと思うのだ。そう考えれば、小回りが利く車がいいとか、混雑を避けた方がいいとか、自転車にも看板をつければ目立つとか、いくらでも考え方はあるだろう。と言いたいのである。データ量の比較的小さい音声は、重要になるはずだ。

音声ナシと映像ナシ……どちらを選ぶ?

 それだけではない。音声はテキストと並んで、非常に高い表現力を持つのだ。これは、ストリーミングにおいて比較的人気が高いコンテンツを考えただけでもわかる。

 まず、有名ミュージシャンのライブ。音が重要だというのは明白だろう。たとえゴミのようなCDを連発している人のライブでも、その人がミュージシャンである限り、重要なのはやはり音のハズだ。歌の下手なアイドルであっても「生の声」を聞きたいと思うだろう。ラジオのように映像ナシの中継は考えられるが、音声ナシの中継というのはあり得ない。

 あとは、カンファレンス系。きちんとした統計がないのだが、MacWorld ExpoにおけるSteve Jobsのスピーチというのは、おそらくストリーミングの同時接続数としては世界最高規模ではないかと思う。ああいったコンテンツも、中心は音だ。できれば、プレゼンテーション画面や時々製品の写真があったほうがうれしいが、Jobsが動いていることはさほど重要ではない。静止画が何枚か見られれば十分。これはeラーニングの場合も同じだ。

 ……ということをしっかりと認識した上で流すべきコンテンツというものを考えれば、もう少し違った形態のコンテンツが増えて然るべきではないだろうか?――すなわち、テキスト、音声、動画をうまく組み合わせたコンテンツだ。

 もちろん、これは「PCへの配信を前提とするのであれば」という話である。PCの利点というのは、あらゆるコンテンツを扱える点だ。Real PlayerやQuickTimeならSMIL(記事参照)が使えるし、Windows Mediaなら、ブラウザと併用することができる。

JPEG+音声もアリなのだ

 これらのオーサリングは難しいと思われがちだが、考えようによっては四苦八苦してエンコードの設定を工夫するよりは楽である。私はよく、ナローバンド用のストリーミングについて意見を求められると、「映像部分を2秒間1フレームの大きなJPEG画像にして、そのぶん、音声に気を使って、QuickTimeでストリーミング送信すれば?」という。そういうスライドショー・ストリーミングもありなのだ。あまり見たことはないと思うが、画像がデカければなかなかの迫力である。

 要は、どこに必然性があるかということを見極めるのが大切なのだ。こういうのは、「ブロードバンドだから何かを発信せねば」という発想で動いている人にはなかなか理解できないだろう。そうではなくて、マジメに発信したいものがある人には、是非、考えてみてほしい。私の中での今のところの結論は、「時間軸メディアは音である」ということである。



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[姉歯康, ITmedia]

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