ニュース 2002年11月17日 05:04 AM 更新

デュアルバンドに5GHz帯メディアコンバータ。ソニーの高速無線LAN機器3製品をチェック

ソニーのIEEE 802.11a対応アクセスポイント「PCWA-A520」、ワイヤレスLANコンバーター「PCWA-DE50」、デュアルバンド無線LAN PCカード「PCWA-C700」を使ってみた。いずれも魅力的な製品に仕上がっているが、PC用途を考えるなら、もう1つ加えてほしい機能がある

 ちょうど1年ほど前に、コンシューマー向けとしては初となる無線LANアクセスポイントの「PCWA-A500」とIEEE 802.11a無線LANカード「PCWA-C500」をリリースして以来、ソニーは積極的に最大54Mbpsの速度を実現する802.11a製品の拡販に努力してきた。もっとも、いくらブロードバンドが普及し、ADSLで実効10Mbps近い速度が出るようになり、さらに条件さえ整えば上り/下りとも数10Mbpsも帯域がある環境も比較的容易に利用できるようになったとはいえ、インターネットアクセスのために5.2GHz帯を導入するというのも、あまり説得力のない話だ。

 ソニーが家庭向けに5.2GHz帯の製品を売り込んでいる背景には、ホームAVネットワークを構築するために広帯域のワイヤレス接続の普及が必要不可欠であることが挙げられる。テレビ録画で使われる4〜8Mbps程度のMPEG2をレスポンス良く、しかも途切れずに再生させるには2.4GHz帯のIEEE 802.11bでは力が不足しており、有線LANでは家庭での利用シーンを限定してしまう。

 そうしたこともあってか、ソニーの802.11a対応無線LAN製品はとても魅力的な製品に仕上がっている。新製品の802.11a対応のアクセスポイント「PCWA-A520」、ワイヤレスLANコンバーター「PCWA-DE50」、デュアルバンド無線LAN PCカード「PCWA-C700」の3製品を使ってみた。

スマートな配線と低価格が魅力

 アクセスポイントのPCWA-A520とワイヤレスLANコンバーター(ワイヤレスに対応できないイーサネット対応アプライアンスを無線LANに接続するためのコンバータユニット)のPCWA-DE50は、いずれも共通の、そして特徴的なフォームファクタを採用している。ACアダプタに相当する部分に100BASE-TXポートを設け、コネクタ先端の形状に少しアレンジを加えたRJ-45(100BASE-TXなどで使われているコネクタ)からイーサネットの信号と電源を1本のケーブルで本体へと接続するようになっている。


写真はワイヤレスLANコンバーターの「PCWA-DE50」。本体サイズは約98(幅)×98(高さ)×33(奥行き)ミリで、ほかにパワーユニットが付く。「PCWA-A520」も同デザイン

 両製品とも同デザインで、約10センチ角の非常にコンパクトな本体を採用しているが、その上ケーブルが1本しかないため非常にスマートかつ柔軟な設置を行える。そのまま置く場合も、壁掛けで利用する場合にも、シングルケーブルは都合がいい。

 機能的にはいずれも特別なものはないが、ケーブル管理を含むデザイン的な仕上がりの良さやわかりやすいWebユーザーインタフェースに好感をもてる。そして何より、価格が安いのだ。


PCWA-DE50の管理画面。Webブラウザの画面と設定ガイドがあり、初心者でも扱いやすい

 ルータ機能を持たないとはいえ、PCWA-A520の約3万円という市場価格は、802.11a対応製品として現在のところ最廉価。PCWA-DE50は2万5000円前後と、802.11b対応のワイヤレスLANコンバーターと比較すると1万円近く高い設定になっているが、802.11a対応のワイヤレスLANコンバーターは本機以外に発売されておらず、その有用性を考えれば決して高すぎる値付けとはいえない。

 たとえば、ソニーの「RoomLink」をワイヤレスで使いたい場合、GigaPocketの映像を再生するためには802.11aの高速なワイヤレスLANコンバーターが必須となる。むしろまだ普及が進んでいないこの時期に、ワイヤレスLANコンバーターまでをラインナップする徹底ぶりを評価したいところだ(もちろん、将来的には802.11b対応製品と同程度の価格になることを期待したいが)。

 両製品とも、機能、デザイン、価格がすべてそろっている。802.11a対応製品を選ぶ際には、選択リストの最右翼に入れておきたい。

サイズはそのままにデュアルバンド化

 PCWA-C700は802.11aと802.11bの両方に対応するデュアルバンド無線LANカードだ。サイズやデザインは昨年発売されたPCWA-C500と変わらないが、異なる2つの周波数帯に対応するダイバシティアンテナが内蔵されており、受信感度もアップしているという。手元にPCWA-C500がないため、直接の比較はできないが、以前試用した時の記憶をたどってみると、確かに壁を1枚隔てた時の感度に差はあるようだ。


「PCWA-C700」。外観は「PCWA-C500」と変わらないが、アンテナ部に周波数別インジケータが付き、LEDの色によって使用中の通信方式が一目で分かるようになった

 さて、PCWA-C700で注目されるのは「デュアルバンドで何が変わるか」だ。

 ソニー自身による新製品説明などでは、出先のホットスポットで802.11bを使い、自宅では高速な802.11aを利用するといったユーゼージの提案が行われている。だが、利用する場所が全く異なるのであれば、シングルバンドの製品2枚でもあまり困ることはない。1枚で済む便利さは捨てがたいが、かといってどうしてもデュアルバンドである必要はないはずだ(もちろん内蔵デバイスとなると、圧倒的にデュアルバンドの方が良いが)。しかし、既に802.11bで構築している家庭内LANアップグレードを考えているならば、デュアルバンドはとても有用なソリューションである。

 5.2GHz帯を用いる802.11aは、2.4GHzの802.11bよりも壁などの干渉を受けやすい。このため、802.11bのアクセスポイント1台で家中をカバーできる環境でも、802.11aでは電波状況が悪化してしまう場合がある。

 シングルバンドの802.11a無線LANカードの場合、802.11aのアクセスポイントとの接続が切れてしまうと、802.11b無線LANカードに入れ替えるか、受信できる場所まで移動しなければならないが、デュアルバンドのPCWA-C700は802.11aの接続が切れると、802.11bで接続できるアクセスポイントが別に存在する場合は自動的に接続を切り替えてくれる。

 本製品に付属する「ワイヤレスパネル」というユーティリティは、両方のネットワークで利用できるアクセスポイントの一覧が表示され、それぞれの受信強度も示されるため、最適なアクセスポイントを自分で選ぶことも可能だ。また、802.11a/bそれぞれを個別にオン/オフすることもできる。


「ワイヤレスパネル」の画面。詳細は7日の記事を参照してほしい

 もし802.11b無線LAN機能を内蔵したPCを使っているならば、シングルバンドのカードでも同様のことをこなせるが、無線LANを一切内蔵していないユーザーはデュアルバンドカードを選ぶことを勧める。価格は約2万円と最廉価の802.11a対応カードよりも6000円ほど高価だが、2種類のカードを使い分ける手間を考えると価格差分のメリットはある。

 また、ホームAVネットワークを802.11aの主たる目的としている同社の製品らしく、「ストリーミングモード」という機能を有している。これはWindows XPが約1分に1度行う無線LANの自動構成処理を抑制するモード。Windows XPの自動構成機能は、チャンネルを切り替えながらアクセスポイントを定期的に最検索し、使っていたアクセスポイントとの接続が切れてしまう場合でも自動的に別のアクセスポイントに再接続できる。

 ただし、アクセスポイントのスキャン時にはチャンネル切り替えが発生するため、一時的にではあるがスループットが低下してしまい、結果としてAVストリームが途切れてしまう事がたまにある。54Mbpsでリンク中の実効速度はおよそ18〜24Mbpsあり、8MbpsクラスのMPEG2映像でもアクセスポイントスキャンを無効にすれば、スムースにストリームを再生可能だ。

将来はバンド間ローミング機能を

 デュアルバンドの無線LAN機能は、来年の春ぐらいには一部機種でノートPCの中に内蔵される見込みだ。高速無線LANの方式は5.2GHzの802.11aになるのか、それとも2.4GHzのまま高速化を図ったIEEE 802.11gになるのかは現時点で不明確だが、長期的にPCの買い換えまでを考慮に入れれば、徐々にクライアントのデュアルバンド化が進んでいくことは間違いない。現時点で速度が必要ならば、802.11aのアクセスポイントを導入しても、将来無駄になることはないだろう。価格的にも802.11bの普及が急激に進んだ2年前の状況に似ている。h

 しかし、PC用として使う場合は、まだ若干の不満もある。PCWA-C700は、簡単なマウス操作で適したアクセスポイントを選ぶことが可能だが、通信中のノートPCを隣の部屋に持っていくだけで通信が途切れ、再接続されるまで待たなければならないことがある。このとき、別のアクセスポイントで再接続が行われると通信セッションを新たに開く必要がある。

 デュアルバンドの無線LANクライアントが、よりユーザーフレンドリーになるためには、状況に応じたアクセスポイントの切り替えとローミングの仕組みが必要だ。そのための技術的な枠組みは存在するが、現実的なソリューションとしてはデュアルバンドのアクセスポイントとセットで、最適な接続手段の自動選択と自動バンド間ローミングを実現することかもしれない。

 802.11aの問題が電波の“飛び”(伝達距離)にあるとするなら、電波状況に応じて802.11bへと自動的に切り替わる(単なるアクセスポイント切り替えではなく、きちんとAPローミングする)仕組みを提供することでそれを解決できる。

 ということで、802.11aに積極的なソニーには、次の製品で是非ともバンド間のローミングを実現できるデュアルバンドアクセスポイントとデュアルバンド無線LANカードに取り組んで欲しい。もちろん、帯域保証を行うためのIEEE 802.11e(5月の記事を参照)などの規格への対応も、AV指向の強いソニーならば盛り込んでくれることだろう。

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関連リンク
▼ 製品情報(PCWA-C700)
▼ 製品情報(PCWA-DE50)
▼ 製品情報(PCWA-A520)

[本田雅一, ITmedia]

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