リビング+:ニュース 2003/05/19 23:52:00 更新


“ぐうたら”がロボットの未来を拓く?

決まったフローに従って動くのが一般的なロボットのイメージだが、それだけでは人間の“パートナー”を務めるには不十分だ。そこでNECが考え出した“ロボ格”とは?

 NECとNECシステムテクノロジーは、ロボット制御の基本部分と開発環境を提供する汎用ロボットソフトウェアプラットフォーム「RoboStudio(ロボスタジオ)」を発表した(別記事を参照)。自らハードウェアを製造するのではなく、パートナー企業にソフトやノウハウを提供して利益を上げるソリューションビジネスモデルは、米Evolution Roboticsの「ERSP」(Evolution Robotics Software Platform)と全く同じ。しかし、大きく異なるのが、ロボットに“キャラクターを持たせる”という点だ。

 鉄腕アトムのような感情を持ったロボットは登場するのか? という問いかけに、「現在のノイマン型コンピュータを使っている限り、まんがとのギャップは埋まらない」と答えたのはソニーの土井利忠氏。先月開催された「ROBODEX 2003」での1コマだ。

 しかし、感情は持っていなくても、感情があるように振る舞うことはできる。それが人間の感性に訴え、ロボットに対する親近感や信頼につながる効果は十分に期待できるはずだ。シュートを外して頭を抱えた「SDR-4X」をみて、「かわいい」「かわいそう」と声を上げた人が多かったのもその証拠。漫画やアニメでロボットに親しんできた日本人は、ロボットを単なる労働力(ロボットの語源は労働を意味するロボタ)として見てはいない。

 NECが狙うのは、そんな日本人気質に合った「パートナーロボット」だ。同社が試作した「PaPeRo」は、可動部分こそ少ないものの、口や頬、耳などの部分に計13のLEDがあり、首や本体の動きと合わせて表情を作り出す。人の顔を記憶し、音声認識技術と音声合成技術を使って会話できるのはもちろん、LANやPHSを介してインターネットに接続し、情報を取り込んでユーザーに提供するエージェント機能も大きな特徴だ。

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1998年のハードウェアは発表当時と変わらない。Celeron/500MHzに64Mバイトもしくは128Mバイトのメモリを搭載し、Windows 98SEが動作している。したがって、フリーズすることもあるらしい

 ただし、感情表現はあっても、行動パターンがいつも同じではユーザーは飽きてしまう。1998年に「PaPeRo」を開発したNECは、2年間にわたり、計95家族にPaPeRoを貸し出して実証実験を行ってきたが、「当初は予想以上に飽きるのが早い家庭もあった」という。飽きた理由は、顔認識や音声認識の認識率が悪いといった点と、ロボットの反応が画一的という点の2つだった。

 そこで、対話内容を改良して認識率をアップするようにユーザーを誘導する手法を採用し、一方で人とロボットの関係を構築するキャラクター(性格。NECは“ロボ格”と呼ぶ)の要素を取り入れた。

6つのキャラクター

 ロボットの動作というと、行動パターンがあらかじめプログラミングされていて、命令に対応していつでも同じ動作を繰り返すというケースが多い。メカトロニクスの進歩は動作の幅を広げたものの、決まったフローに従って動くのが一般的なロボットのイメージだろう。

 アプリケーションごとに、あらかじめシナリオを与えておくのはRoboStudioの場合でも同じ。異なるのは、ハードウェアの動作を規定した部分(ワーカと呼ぶ)をシナリオから分離しておき、行動を起こす際には、知識データベースを参照、総合的に判断して使うワーカを決定するという点だ。

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RoboStudioの概念図

 知識データベースには、ユーザーの情報と対話履歴、インターネット経由で取り込んだ情報などのほか、ロボ格のパラメータもXML形式で保存されている。つまり、ロボ格という新しいパラメータ(変数)が、ロボットの行動の幅を広げるわけだ。

 ロボ格には、「積極性」「協調性」といったパラメータがあり、例えば積極性を高めに設定しておけば、ユーザーに頻繁に話しかけるようになる。また、行動の結果を反映してパラメータ自体を変化させる機能も盛り込まれているため、話しかけてもユーザーが良い反応を示さないことが増えると、積極性のパラメータが下がり、話しかける回数が減る。ユーザーの対応をフィードバックして、ロボットの性格も変わってくるという。

 ただ、脈絡もなく性格が変わってしまったらユーザーはとまどう。そこで、6つのキャラクターをあらかじめ用意して、ロボ格の変化にも一貫性を持たせた。

キャラクター特徴
もの知りPaPeRoインターネットが好きで、積極的にいろいろなことを教えてくれる
ダンスPaPeRoロボットアイドルを夢見て練習にはげむ。ダンスをほめると喜ぶが、ほめてあげないとアイドルになるのをあきらめてしまう
パソコンPaPeRo頼みごとはこなすが、話しかけてはこない。話すときは、いかにも機械的なしゃべり方をする。可愛がると、動き回ったり、話しかけたりするようになる
ゲームPaPeRo人なつっこい甘えん坊。みんなでゲームをするのが大好きだが、ひとりぼっちにしておくとすごく悲しむ
ぐうたらPaPeRo面倒くさがりロボット。好きなことはボケーっとすること。嫌いなことはお仕事
アンビエントPaPeRo放っておかれすぎてすっかりスネちゃったPaPeRo。曲に合わせて自由に動くのが好き。動くのを邪魔しなければやがて元にもどる

 なかでもユニークなのは「ぐうたらPaPeRo」だろう。本来、人間を助ける労働力になるはずのロボットだが、会話のテンポやイントネーションはまさに“ぐうたら”。いかにも面倒くさそうに話す。もっとも、話しかければ一応答えるし、声や話し方、仕種にも妙に愛嬌があり、見ていて不快感は感じないのだが。

大学との共同研究で進化

 今回、NECが発表した「RoboStudio」は、こうした研究成果をパッケージ化した汎用ソフトウェアプラットフォームだ。機能的には、物体認識や自分のいる場所を特定する機能がないなど、Evolution Roboticsのプラットフォームよりも劣る部分もあるが、それは想定するアプリケーションの違いに起因している。

 「Evolution Roboticsは、自律掃除機や配達など移動型のアプリケーションを狙っており、ナビゲーション技術に力を入れている。われわれは顔認識技術にくわえ、“シナリオエディタ”“モーションエディタ”といった専用スクリプト言語で簡単にアプリケーションを制作できるGUI環境を充実させた。また物体認識は、今後、大学との共同研究で進めていくつもりだ」(NECシステムテクノロジーラボの土岐泰之主任研究員)。

 NECでは、将来のユビキタス社会実現をにらみ、RoboStudioプラットフォームを、自動車に搭載する情報機器やゲーム機、情報家電などに向けて活用していくという。“ぐうたらなカーナビ”はちょっと勘弁してほしいが、親しみやすいキャラクターを持つロボットや情報機器なら使ってみたいという人は多いことだろう。

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▼NEC Personal Robot Center

[芹澤隆徳,ITmedia]



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