同一労働同一賃金のガイドラインも策定・発表されようとしている。これは、正社員と非正規社員の差だけに関するものではない。正社員の中でも、同じ仕事・職務なら年齢・性別・勤続期間などの要素を除いて、同じ賃金・処遇にするという方向に導くものである。
そうなって恩恵を受けるのは、若年層だ。景気低迷期などに新卒での就職が上手くいかなかった若い非正規社員の賃金が、上昇傾向になる。仕事・職務・能力が変わらないのに、定期的に昇給を積み重ねてきた中高年正社員の人件費が徐々に抑えられ、若い正社員たちに配分されるような仕組みに変わっていくだろう。
「収入が低いから」が結婚しない理由の上位にあるのだから、若い人たちの給与が増えれば、未婚率は低下していく。あまり知られていないが、既婚者は単身者に比べて寿命が7〜8年ほど長い。栄養状態、生活のリズム、ストレス、相互扶助などさまざまな理由が考えられるが、いずれにしても、同一労働同一賃金によって中高年よりも若者たちに多く配分されるようになれば、既婚者の割合が増えて、長く健康を維持できる人が増えるだろう。
働き方改革は、現時点においてはもちろん労働問題(働き方の変革と企業の生産性・収益力強化を同時に図ろうとする取り組み)だが、長期的な視点では、高齢化が今より進んでいく将来に向け、それでもなお健康寿命が延伸していくことで社会保障制度を持続可能にする取り組みにもなっているのである。(川口雅裕)
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