「失敗は恐れない」――社内改革を成し遂げるためのトリドール・石川暁氏の信念とは?

「丸亀製麺」などを店舗展開するトリドールで、メールを撤廃して社内SNSを導入するなど、さまざまな業務改革を推進してきた石川暁氏。彼がリーダーとしてプロジェクトを成功させるために心掛けていることとは何か――。

» 2017年02月01日 10時00分 公開
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 讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」をはじめ、焼鳥店やカフェ業態など国内外で1000店舗以上の複数ブランドを展開するトリドールホールディングス。出店攻勢を強めたここ数年間、それに連動して業績は右肩上がりで、外食不況と言われる中にあって、飛ぶ鳥を落とす勢いでビジネス成長している好業績企業だ。

経営層も失敗を良として、挑戦を奨励

トリドール 営業サポート部 次長の石川暁氏 トリドール 営業サポート部 次長の石川暁氏

 そんなトリドールで新規プロジェクトを推進し、社内のさまざまな業務改革に取り組んでいる一人の旗振り役がいる。それが営業サポート部 次長の石川暁氏だ。石川氏は現在、プロジェクトをファシリテートする営業企画課に加えて、店舗業務などを支援する営業サポート課、全店舗の求人計画策定などを行うPS採用推進課、店舗配属される新入社員のOJTを担当する営業社員育成課の4部署を統括する役割を担っている。

 石川氏は飲食チェーン、人材サービス会社などを経て、2009年にトリドールに入社。店舗現場で経験を積み、2013年から主に新規プロジェクトの専任メンバーとして本社オフィスで働いている。最初に担当したのが求人広告費の適正化である。その次に任されたのが社内業務の生産性向上を実現するための店舗への「iPad導入プロジェクト」だ。これにより、電子帳票やWeb会議の活用、さらには社内SNSの導入などを矢継ぎ早に進めてきたわけである。いわば同社のプロジェクト請負人といっても過言ではない。

 プロジェクトでの具体的な取り組みについては後述するが、数々のプロジェクト成功の要因は石川氏自身の仕事に対するスタンスにあると言えるだろう。そのスタンスとは、「何でも新しいことに挑戦する」ということである。その理由は明快で、他社や他人と同じことをやっていても、長期的な成長は望めないからだ。

 「現状に引っ張られた発想だと業務改善は進みません。例えば、新しいテクノロジーなどを使うのは難易度が高いけれども、その分飛躍につながります。少しでも気になったらまずは試してみるようにしています。やってみないと何が起きるか分かりません。ただ、今自分たちが気付いているものや、既にやっていることには、今後のビジネスの可能性はほとんどないと思うのです」

 新しいことを試すことで伴う失敗は恐れない。むしろ失敗という壁までなるべく早くぶつかったほうがいいというのが石川氏の信念だ。「早めにぶつかって、早めにリカバリすれば、すり傷程度で済みます。そうすれば失敗には見えないでしょう」。

 仕事におけるリスクはあまり考えない。結局、何をするにもリスクは生じるからだ。では、石川氏がリスクを取ってまで手に入れたいものとは何か。それは、確固たるキャリアを築くことである。

 「私は学校を中退していますし、店舗の現場でも長く苦労してきました。本社でポジションを上げればそれがロールモデルになります。同じような境遇で辞めてしまう社員が多い中、彼らに対して『あんなキャリアもあるのか』ということを示せればいいと思っています」

 トリドールには、仕事にこだわりを持っていて、成果を出したいと願う社員が多いという。彼らに対して成功への道標を作るだけでも価値があると石川氏は考える。そして幸いなことに、同社の経営陣やマネジメント層にも、失敗を良として、どんどん成果を出すことで評価しようという気概がある。「何もしないことを嫌う人が役員にも多く、挑戦することへの理解がある環境が同社には整っています」と石川氏は述べる。

プロジェクト成功のカギは?

 石川氏がリーダーとしてプロジェクトを円滑に進め、成功に導くために心掛けていることは何だろうか。石川氏は関係各所への事前のコミュニケーションが重要だと説く。そのために日ごろからアイデアレベルで「こんなことがやりたい」「あんなものがあったらいいよね」といろいろな社員と話しながら、いかに納得感を与え、お互いにメリットがあるような共通項を探すようにしている。人は、メリットを共有すると腹落ちをするもので、それは相手が1人でも、複数人でも基本的なやり方は変わらないという。そしていざプロジェクトメンバーが一堂に会すキックオフミーティングの時点では、既に各担当者への根回しが済んでいるのが理想的だという。

讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」などを運営するトリドール

 もちろん、石川氏も初めからすべてのプロジェクトに成功していたわけではなく、すり傷レベルと呼べない失敗も重ねてきた。そして、プロジェクトがうまくいかなかった原因の多くは、プロジェクト参加者同士のコミュニケーションエラーだった。「参加者それぞれが『うちの部署はこうだから』と主張するだけで、キャッチボールではなくドッジボールしているようなコミュニケーションの取り方でした」と振り返る。そこから学んだのは、お互いのコミュニケーションという礎があるなしで、プロジェクトの命運が決まることが大きいという点だ。

 一方、プロジェクトへの投資判断をする経営層に対しては、どのように働きかけているのだろうか。

 「一人だけでも協力者を作るのが好ましいです。たいていは役員全員が反対するということはなく感性が近い人もいるので、一人一人、順に説明していくことが肝要です。本当に心の底からプロジェクトを立ち上げたいのであれば、それくらいのコミュニケーションはとるべきです。もしそこまでできないのなら、本当にやりたいこととは言えないので止めた方が賢明です」

 プロジェクトリーダー個人の覚悟がないと、プロジェクトは成功しない。「私は変革してやりたいんですよ!」と虚勢を張る人は多いが、本当に何としてでもやり遂げたいという真のリーダーは、できる、できないということはそもそも考えておらず、どうすればできるかを常に試行しているものだと石川氏は断言する。

コミュニケーション改革で目指したものとは

 そんな石川氏がリーダーとして推進し、大きな成果を上げたプロジェクトが社内SNSの導入である。

 社員の生産性向上を目的に、それまで店舗で使っていた紙の帳票の電子化、Web会議システムの採用とともに、事業を拡大する中で、業務スピードの向上の手段として、従来のメールによるコミュニケーションを止め、メールに代わるコミュニケーションツールとして社内SNSの導入を検討した。背景にあったのは、メールによって生まれるコミュニケーションの無駄だった。一般に業務でメールを送る際、関係者全員を「Cc」に入れることが多いが、同社でも同様だった。共有することによる安心感がある一方、本質的には必要のないメールも届いてしまい、その処理作業に追われてしまったり、重要なメールを見落としてしまったりという事態が起きていた。

 そうしたコミュニケーションの状況を社内SNSで改善できないものかと、石川氏は関連セミナーなどに参加して情報収集した後、ツールを選定し、2014年8月、まずはプロジェクトメンバー4人で試験的に利用を開始した。

 1週間ほど日常業務のやり取りの中でSNSを集中的に使い、まずは、簡単な確認をSNSで行い、既読が付くので次のコミュニケーションは省けるところは省いた。また、メールではありがちな時候の挨拶やサンクスの返信などもどんどん止めて、ムダなものは徹底的に排除した。そうした取り組みの中でSNSの使い方の基準を作っていくとともに、SNSによるメリット(成功事例)を標準化した。成功事例はほかのユーザーに導入させる際の説得材料になるのである。

 次に、社内の他のユーザーに横展開していくわけだが、しばしば企業で見られるケースは、一気にツールを全社導入しようとすることである。しかし、石川氏はそれでは失敗することを理解していて、「使いたい人が、使いたいから使う」ツールとして社内SNSを位置付けた。従って、他の社員自らが使いたいと言ってくるまでユーザー追加はせず、たとえ追加したとしても一定期間使用していないユーザーは遠慮なく外した。

 一方で、ツールを効果的に普及させてくれそうな社内のインフルエンサーとなるキーマン社員などに対しては、業務の中で積極的に紹介していった。実際、その後、彼らがほかのユーザーにOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)してくれるなど、大きなメリットを生み出したのである。

 この社内SNSは、スタートから2年強経った現在、760人以上が利用するまでに至った。もちろんユーザー個々によって活用度合いはさまざまだが、例えば、石川氏の場合、今では社内コミュニケーションでメールを使うことはまずないという。

 社内SNSの具体的な成果については、メール作業に関する時間が大幅に削減した。全社で見ると概算で月に2500時間に上るという。加えて、コミュニケーションのリアルタイム性、迅速性が増したことなどによって、わざわざ関係者全員が集まるような会議の数も少なくなった。

 この数字を見ると非常に大きな成果が出たことが分かるが、あくまで石川氏は時間の削減だけが目標ではないと考える。

 「メールや会議の削減はいずれも手段でしかなく、手段と目的がすり替わらないように注意することが必要です。コミュニケーションはビジネスの基礎なので、本来は欠いてはならないものであり、やみくもにメールや会議だけを減らすことはむしろ危険だと思います」

 それよりも石川氏はメールや会議にかかわる時間が浮いた分、複数のプロジェクトを掛け持ちして推進したり、新しいビジネスのアイデアを考えたりと、別の業務に集中できるようにすることを目指し、実際にそれを実現したのだという。

どんな仕事でも全力でやったほうがいい

 社内SNS自体もこのまま従来と同じような使い方を続けていくのではなく、より大きな成果が生まれるために新たな手を打っていかないと駄目だという。「効果が出なくなるタイミングはいつか来ます。そうならないためには、変化しているうちに次の変化を与えていくことが大切です。いったん硬直してしまうと、再開するのは大変なのです」と石川氏は強調する。

「何事にも全力で」と語る石川氏 「何事にも全力で」と語る石川氏

 そんな石川氏が今取り組んでいる新規プロジェクトが、社内に蓄積されている各種データを活用することによって、さらなる売り上げ成長と顧客満足度アップを実現することである。既にプロジェクトは着々と進んでいて、目に見える結果も出つつあるという。

 「誰もやらないのであれば、自分がやったほうがいい」

 「何をするにも寿命は減るから命がけ。だったら全力でやったほうがいい」

 石川氏が仕事に向き合う姿勢は、常に上記のような考え方が色濃く映し出されている。言葉は上司からの受け売りだというが、話す一言一言からもそのスタンスを感じとることができる。トリドールが好調を維持しているのは、店舗など営業現場での取り組みだけでなく、社員が生き生きと働く環境を作るために、常に新しい視点を持って業務改革に打ち込んでいる石川氏のようなリーダーの活躍があってこそなのだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年3月1日