「不満の夏」到来か、市場が覚悟すべき重大イベントスイス、日朝会談……

» 2018年06月07日 17時10分 公開
[ロイター]
photo 6月4日、金融市場にとって5月は慌ただしかったが、6月も覚悟が必要になる。写真はシカゴで2014年撮影(2018年 ロイター/Andrew Nelles)

[ロンドン 4日 ロイター] - 金融市場にとって5月は慌ただしかったが、6月も覚悟が必要になる。米朝首脳会談をはじめ、市場を大きく動揺させかねない重大イベントがいくつも予定されているからだ。

以下に市場が注目すべきイベントを日程順に挙げた。

スイス発ショックの可能性 10日

スイスで10日、通貨の信用創造を中央銀行だけに限定する「ソブリンマネー」制度を導入すべきかどうかを問う国民投票が実施される。可決されれば商業銀行による融資の際の信用創造が禁じられる。UBSやクレディ・スイスといった同国の銀行の利益も打撃を受けかねない。

世論調査では、同制度賛成派が35%にとどまっている。ただし2016年の英国民投票や米大統領選の例に見られるように、予想外の結果になってもおかしくない。

FOMCは利上げへ 12─13日

米連邦準備理事会(FRB)は12─13日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年2回目の利上げに動くのは間違いない。政策金利は1.75─2.0%になるだろう。

問題はFRBが、今年を通じて現在想定している3回ではなく4回の利上げに踏み切るかどうかだ。5月には年4回の観測が浮上してドルが16年11月以来の月間上昇率を記録した。

パウエル議長からタカ派的なメッセージが発せられれば、ドルと米国債利回りが再び上昇する可能性がある。

米朝首脳会談 12日

12日にはトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで両国初の首脳会談を行う。

トランプ氏は、経済制裁解除の見返りに北朝鮮の非核化を実現したい考え。北朝鮮指導部は核兵器を体制存続の鍵と位置付けているとみられるものの、金正恩氏は経済発展に注力すると発言している。

この会談で北朝鮮の核による恫喝がなくなるとの期待から、世界の株価は上昇してきた。

OPEC総会 22日

北海ブレント価格が1バレル=80ドルを一時突破する展開となった中で、石油輸出国機構(OPEC)が22日にウィーンで開く総会は世界中の政策担当者や市場参加者に注目されるだろう。

OPEC加盟国とロシアなど非加盟有力産油国は2017年初め以降、協調減産を続けてきた。合意期限は今年末で、OPEC総会では協調減産を延長するかどうかが話し合われる。

足元では、ロシアとOPECの事実上の盟主であるサウジアラビアがある程度の増産を協議したことで、原油価格が下落した。もっとも一部産油国は増産に反対しており、合意を得るのは難しそうだ。

北海ブレントは今年を通じて70ドル超で推移する、というのがアナリストの見立てだ。

トルコ大統領・議会選挙 24日

今年に入って通貨リラと国債の大規模な売りに見舞われているトルコは、24日に大統領選挙と議会選挙を実施する。エルドアン大統領が再選され、権限を強化する見通しだ。

エルドアン氏は再選すれば経済や金融政策への統制を強め、政治的には反対派をさらに締め付けると表明しており、多くの投資家を不安に陥れている。

ただ世論調査によると、エルドアン氏の与党である公正発展党(AKP)とその連携相手の極右政党の支持率は50%前後なので、議会で多数派を形成できなかった場合、大統領の権限はある程度相殺されるかもしれない。

中央銀行はリラ下支えのために既に3%の緊急利上げを実施しており、7日の次回会合で新たな措置を講じる可能性もある。

EU首脳会議 28─29日

28─29日の欧州連合(EU)首脳会議で、ブレグジット(英国のEU離脱)協議において行き詰まっている問題が進展することが期待される。

メイ英首相は、強硬離脱派とEUとの関税同盟維持を望む勢力の板挟みにあって依然として身動きが取れない。英政府は金融サービスや農業などの分野に関して、EUとの協議前に公表するホワイトペーパーで基本的な方針を示すことになるだろう。

EU側は、英政府がまだアイルランド国境問題で現実的な解決策を打ち出していないと不満を見せている。

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