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» 2018年09月03日 10時00分 公開

「ポストモダンERP」時代の財務管理ソリューション選び “4つのポイント”とは?

グローバルに事業を展開する多くの日本企業が、財務管理の高度化に取り組み始めている。自社の財務管理に合ったITソリューションを導入するためのポイントは何だろうか。アビームコンサルティングの杉田拓也氏に聞いた。

[PR/ITmedia]
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 企業経営において「財務」の重要性が高まりつつある。特に、企業グループ全体の資金を一元管理し、グローバルレベルで効率的に利活用しようという「グローバル・キャッシュ・マネジメント」の取り組みを強化する企業が増えている。

 そこで問題となるのが、財務管理を支えるITソリューション、すなわち「トレジャリー・マネジメント・システム(Treasury Management System、TMS)」の選択である。企業の業務改革・ITソリューション導入支援を手掛ける、アビームコンサルティング P&T Digitalビジネスユニット FMCセクター シニアマネージャーの杉田拓也氏に、最適なTMSの選び方について聞いた。

photo (画像提供:ゲッティイメージズ)

グローバル財務管理を強力に支援するTMS

──グローバル・キャッシュ・マネジメントの重要性が再認識されつつあるようです。

 もともとグローバル・キャッシュ・マネジメントの考え方自体は1990年代から存在していましたが、実際に導入に至っていた日本企業はごく一部に限られていました。またその多くが金融危機などで資金調達に苦慮する子会社を支援するためなど、危機対応で導入されたケースが多い印象です。

 ところが近年、グローバル・キャッシュ・マネジメントに積極的に取り組む企業が増えています。2014年に経済産業省が公開した『伊藤レポート』【※】によるROE(自己資本利益率)経営への注目、さらには15年のコーポレートガバナンスコード、スチュワードシップコード制定を受け、各企業とも手元資金を有効活用し、ROEを向上させることを強く求められるようになりました。

【※伊藤レポート:経産省が14年に公開した「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築」というレポートの通称。企業価値を持続的に向上させるための施策について語られ、コーポレートガバナンスの領域に大きな影響を与えた。特に高いROEを達成すること(ROE経営)の重要性が示唆された】

 本社の意向でいざ手元資金を活用しようとしても、資金の管理がグループ会社ごとに行われていては機動的に活用することは難しいです。まずはグループ全体の資金を一元管理することで手元資金有効活用の基盤を作ろう、と考える企業が増えています。

 また、海外子会社に対するガバナンス強化策の一つとして、グローバル・キャッシュ・マネジメントに取り組む企業も少なくありません。グローバルに事業を展開していく中で、海外子会社のガバナンスに悩む企業は多いです。実際に、海外子会社における不正のニュースが世間を騒がせたことも記憶に新しいかと思います。

 もちろんガバナンス強化の王道は内部統制強化ですが、それなりに時間も工数も要します。素早く取り組める施策として、まずは資金を握ってガバナンスを利かせるという発想から、グローバル・キャッシュ・マネジメントに取り組むケースもあります。

 こういったところが、近年日本企業が積極的にグローバル・キャッシュ・マネジメントに取り組んでいる背景ではないでしょうか。

――グローバル・キャッシュ・マネジメントに取り組む企業の悩みはどんな点でしょうか。

photo アビームコンサルティングの杉田拓也氏

 検討すべきポイントはいろいろありますが、多くの企業から共通して相談を受けるのは、ITソリューション選びです。

 グローバル・キャッシュ・マネジメントの実現にあたっては、仕組みの面で支えるITソリューションが不可欠です。ですから、財務管理ソリューション、すなわちTMSの導入を検討することになるのですが、複数ある選択肢の中でどれを選べばよいのか、悩む企業は多いです。

 TMS自体は以前から存在してるものの、選択肢はそれほど多くなく、ERPの財務管理モジュールが主流でした。一部の先行企業では、オンプレミス版の財務専門パッケージを活用する例もありましたが、価格の面で依然ハードルが高い存在ではありました。2000年前後、欧米を中心に、TMSをクラウド経由で提供するベンダーが相次いで登場し、支持を広げました。日本にも10年前後に上陸し、着実に支持を広げています。日本においてもTMSの選択肢が増えており、選択に悩む企業が増えているのです。

 一方で、財務に限らず、基幹システム全体を見ても大きな動きが出てきています。

 代表的なERPソリューションであるSAPのユーザーの中には、「2025年問題」というキーワードを聞いたことがある方が多いと思います。多くの導入実績があるSAP現行バージョンの保守期限が25年に切れるため、25年までに最新バージョンに切り替える必要があるというものですが、実際に基幹システム見直しの検討を始める企業が非常に増えています。

 基幹システム見直しにあたっては、従来の焼き直しではなく、「ポストモダンERP」という考え方を目指す企業が多いです。

 近年、ERPの導入にあたっては、各種業務を極力1つのERPで実現して統合していこうという考え方が主流でした。これが「モダンERP」です。データや機能の統合という点では優れているものの、ビジネス環境が大きく変動する中、その都度個別の要件をERPで実現するためにアドオンを繰り返した結果、システムの肥大化・複雑化、さらには運用コストの増大化が進んでしまいました。

 こういった状況を打破するために考えられたのがポストモダンERPです。

 変化の少ない業務はシンプルなコアERPで対応し、ユーザビリティや技術面の変化が大きい業務はクラウドサービスを活用、その2つを疎結合して構築・運用することで、環境変化やユーザーニーズに素早く対応できるようにしようという考え方です。

 ERPで実現する範囲をコアな業務に絞ることで、ERPの肥大化・複雑化を避けることが可能になりますし、比較的短期間・低価格で導入できるクラウドサービスをうまく活用することで、将来的に登場する新技術・新サービスを取り入れることも容易になります。

 財務管理も基幹業務の一つですから、TMS選びにあたっても、当然こういった基幹システムのトレンドを踏まえて検討する必要があります。

ポストモダンERP時代のTMS選びは4つのポイントで考える

──ポストモダンERP時代におけるTMS選びのポイントを教えてください。

 ポストモダンERPの考え方を踏まえたとき、TMSの主要な選択肢として次の2つが考えられます。

 まずはERP財務管理モジュールの活用、もう一つは「Kyriba」のようなクラウド型財務ソリューションを選択する方法です。ポストモダンERPでいうところの、コアERP内で対応するのか、クラウドサービスで対応するのかという選択です。どちらが優れている、劣っているというものではなく、各企業の考え方や状況によって最適な解は異なります。

 選択にあたっては、以下の4つのポイントをもとに判断されることをお勧めしています。

 1つ目のポイントは「TMSに対する期待値」です。ERP財務管理モジュールの強みは何といってもERP内での連携性です。例えば、ERP内のデータをもとにした資金繰表作成や金融商品の台帳管理、仕訳連携といった点です。TMSへの期待値として、こういった点を重視するのであれば、ERP財務管理モジュールのほうが向いています。

 一方で、口座の可視化や資金のプーリングといった資金管理の高度化を視野に入れるのであれば、銀行接続サービスに強みのあるクラウド型財務ソリューションの方が適しています。特に海外銀行との接続においては、SWIFTビューロとの連携など、手厚い銀行接続サービスを提供している点が強みになります。

 2つ目のポイントは「グループ展開の容易さ」です。グローバル・キャッシュ・マネジメントのように、グループ全体最適を目指すのであれば、TMSもグループ全体に行き渡ってこそはじめて効果を発揮します。そのため、TMSのグループ展開が容易かどうかも重要になります。

 ERP財務管理モジュールで実現する場合、どうしてもERP他モジュールとのセットでの使用が前提となります。スコープや体制にもよりますが、ERPのグループ展開には、全て導入しきるまで数年を要するのが一般的です。すでにERPがグループ展開されている場合は、そこに財務管理モジュールを後付けする形でクイックに対応することができますが、これからERPの本格的なグループ展開を図る場合は、グループ全体に行き渡るまでに相応の時間を要することでしょう。

 一方で、クラウド型財務ソリューションは単品での展開が可能です。できるだけ早くグローバル・キャッシュ・マネジメントを実現したいという場合には、身軽なクラウド型財務ソリューションで対応するほうが現実的といえます。

 3つ目のポイントは「追加開発の柔軟性」です。ERPの多くはユーザーの個別要件に沿ってアドオンすることが可能です。財務領域においても、アドオンによって固有の要望を満たしてきた例も多いと思います。特に、商社などで見られる社内為替予約制度など、自社の業務にとって重要性が高いと判断された部分については積極的にアドオンを行ってきているのではないでしょうか。

 一方で、クラウド型財務ソリューションにはアドオンの余地はほとんどありません。もちろんベンダーによって定期的な機能追加は行われますが、個々のユーザーの要望にマッチするかどうかは分かりません。従って、クラウド型財務ソリューションを選択する際には、ERP以上に「業務をシステムに合わせる」という大胆な判断が必要になります。

 ポストモダンERPは、アドオンを排してコアERPをシンプル化するという発想なので、極力アドオンは排除するのが望ましいですが、競争力に直結するような重要性の高い業務については、対応しないことでかえって競争力を損ねる可能性もあります。財務領域においてそういった業務がある場合は、ERP財務管理モジュールを選択する方が現実的といえます。

 4つ目のポイントは「新技術への対応」です。財務領域は資金決済の分野とは不可分であり、銀行などの外部機関との連携が重要です。資金決済の領域は、FinTechの登場によって大きな変革期を迎えています。例えば、仮想通貨による決済サービスは、国際送金をよりスムーズにするものとして商用化も進められています。

 当然のことながら、TMSもこうした新しい技術への対応が求められていくことが予想されます。この点においては、継続的に機能拡充が行われるクラウド型財務ソリューションの方が優位ではないでしょうか。専門パッケージでスコープが絞られているからこそ、最新技術への対応もスピーディーに行うことが可能です。

 ERPもアドオンによる追加開発は可能ですが、技術革新のスピードや規模感から考えても、このレベルをアドオンで対応するには限界があります。また、クラウドサービスであれば、いざとなれば、よりよい技術・機能を提供している別のクラウドサービスに乗り換えるという選択肢もあります。

 繰り返しになりますが、どちらが優れている、劣っているというものではありません。これらの4つのポイントをもとに、自社に最適なTMSを選択いただければよいと思います。

──ERP財務管理ソリューションは自社で使用しているERPで自ずと決まると思いますが、クラウド型財務ソリューションはいくつか選択肢があります。何を基準に選べばよいですか。

 オーソドックスに機能面・非機能面・コストの違いを確認することも重要ですが、より重要なのがベンダーのサポート体制です。日本国内での導入サポート体制、稼働後のサポート体制ももちろん重要ですが、グループ展開することを考えると国外でのサポート体制もしっかり確認しておきたいですね。

TMSの導入でどんな経営を実現したいのか

──TMSの選定以外で気を付けるべきことはありますか。

 事前に、TMSの導入を通じて「何を実現したいのか」「どういう効果を得たいのか」といった目的を明確にしておくことです。

 また、それを一度で達成することが難しい場合は、そこに至るまでのロードマップを定義しておくことも重要です。例えば、「最終的には余剰資金を100億円捻出して成長投資資金に充てたい、そのためにグローバル・キャッシュ・マネジメント、TMSを導入しよう。そのファーストステップとして今期はグループ会社全体の口座見える化を行って資金状態を把握しよう」というようなイメージです。

 分かりやすさからか、どうしてもユーザーはシステム導入に目が行ってしまって、「TMSどれがいい?」という話を先にしがちですが、その前にTMS導入の目的を明確にしておかないと、「いざ導入したものの投資対効果がよく分からなくなった」、あるいは「目指す姿にたどり着く前に頓挫してしまった」ということになりかねません。先に期待値を明確にすることで、その後の検討も進めやすくなります。

 こういった目的やロードマップの定義にあたっては、コンサルのような第三者の活用を検討されたほうが効率的な場合もあります。また、導入したものの十分に使いこなせていない、あるいは途中で頓挫してしまった、というケースについても同様に、外部の知見を活用して軌道修正するいう道もあります。もちろん私たちアビームコンサルティングも、TMSに限らず、さまざまな業務改革・ソリューション導入の知見を生かしたご支援が可能ですので、ぜひご相談いただければと思います。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年9月24日