2017年からiPadを使い渉外業務のペーパーレス化を進めてきた京都銀行。保険申込業務を皮切りに、取次業務、投信申込業務、住所変更業務と対応業務を拡大し、19年4月からは全店で展開している。スピーディーなペーパーレス化を可能としたのが、PDFを共通基盤として活用した点だ。
働き方改革が叫ばれる中、業務をいかに効率化するかは企業の最重要課題の1つになっている。特に少子化の流れを受けて採用は厳しさを増しており、これまで人手に頼っていた業務をIT化によって自動化する動きが顕著だ。
これらに積極的に取り組んでいるのが国内各地の地方銀行だ。長引く低金利からビジネスモデルの再構築を迫られており、全国各地の60行以上の地方銀行は、業務効率向上などの経営の立て直しに取り組んでいる。
そんな中、ITを活用した業務の効率化を積極的に推し進めているのが京都銀行だ。
京都銀行は2017年から本格的に営業店業務の見直しに着手。タブレット端末などを活用しながら渉外活動のペーパーレス化を進めてきた。裏側の事務業務を削減しながら、営業力を増強し、顧客接点を強化するという狙いだ。
どのような観点でペーパーレス化を進め、どうやって短期間で実用化してきたのか。京都銀行のシステム部に話を聞いた。
京都銀行は17年10月に、iPadを使い保険申込業務のペーパーレス化の試行を開始した。その後、取次業務(18年4月)、投信申込業務(18年8月)、住所変更業務(18年9月)と対応業務を拡大。19年4月からは全店で展開するなど、ペーパーレス化を加速させている。
営業を行う行員がiPadを持ち、紙の書類の代わりに画面上で、顧客に申し込み書類の記入やサインをしてもらう。顧客側は、紙と同じようにiPadにサインをすればよく、スムーズなペーパーレス化を実現した。
こんな電子サインの活用を実現したのが、スカイコムのペーパーレス/電子サイン ソリューション「SkyPDF WebAPI」だ。
ペーパーレス化の出発点は、システムを実際に使う営業店の行員ヒアリングからだったという。
「窓口で紙で受け付けているのはどういったものか。営業店に対してヒアリングを行い、こういうものが電子化されたら『うれしい』『こういうところに事務の無駄がある』などをまとめていった。取次業務であれば、全店で1日3000枚くらい紙の取り扱いがあった。そういったものを洗い出してリストアップしていった」(システム部の西川哲史調査役)
これらの業務をペーパーレス化する上で、意識したのがシンクライアント化だ。重要な顧客情報を扱うため、持ち歩くiPad内にデータを保存することは避けたい。「ペーパーレス化して活動するのに、iPadにデータが入っていると端末を落としたら情報漏えいの可能性もある。顧客の情報を守るためにシンクライアントにこだわって、データはすべてサーバに置く。安全性を考えた上で進めた」と、システム部の矢島茂利次長は話す。
当初から重視していたのは電子サインだ。「本人の意思確認で電子サインは必要だということで、いろいろな製品を検討した」(システム部システム企画室の山本眞士室長)。その結果、PDFを使ったソリューション「SkyPDF WebAPI」を採用した。
PDFは法的にも私文書として扱われ、電子サイン画像を埋め込めば、PDFを原本として扱える。筆跡鑑定士の照合で自筆認定された事例もある。国税文書としても条件を満たせば利用できるなど、ペーパーレス化に向いた仕組みになっている。
その上で、顧客に控えをモバイルプリンターで印刷して渡す案と、iPad上で電子サインをしてもらい完結させる案を比較。業務に耐えられると判断して電子サインによる完全ペーパーレス化を決断した。サーバ側で申し込み項目をPDFとして生成し、iPad側で表示。PDF上に電子サインしてもらうという仕組みだ。
当初サーバと通信しながらスムーズに電子サインを行うには技術的な課題もあった。都度通信を行うため、どうしてもタイムラグが発生し、なめらかな動きを実現するのが難しかったのだ。仮想環境として使ったCitrixの改善もあり、実用に耐えると判断できたことが、シンクライアント環境での電子サインの実現につながった。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年8月30日