「新リース会計」は無視できない! 全企業に求められる対応、今からできることは?

国際財務報告基準「IFRS」の最新基準であるIFRS16。未適用の多くの日本企業にとって、あまり意識する必要がなかったこの基準が、無視できない存在となりつつある。背景にあるのは、企業会計基準委員会(ASBJ)によるコンバージェンスだ。

» 2019年09月09日 10時00分 公開
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 国際財務報告基準「IFRS(International Financial Reporting Standards、イファース)」の最新基準であるIFRS16号(IFRS16)。IFRS未適用の多くの日本企業にとって、これまであまり意識する必要がなかったこの基準が、無視できない存在となりつつある。

日本でもリースの資産計上が不可欠に

 日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が、リース取引の全てを貸借対照表に資産計上する会計基準の作成で合意――。2019年3月、こうした内容のニュースが大手新聞で報じられて話題を呼んだ。

 経理スタッフであれば、そのインパクトの大きさを容易に理解できるだろう。国内では従来、業務で広く利用されているオペレーティングリースについて、借り手側の資産計上を必要としなかった。この状況が根本から覆されるわけである。

 プロシップのシステム営業本部 FS営業2部2グループでグループリーダーを務める葭葉類氏は、今回の合意について次のように説明する。

 「ASBJは以前から、日本基準の『国際会計基準への収斂(しゅうれん)』に向けて、IFRSと日本基準のコンバージェンスを進めてきました。今回の報道はその一環として、国内のリース会計の在り方をIFRSに準拠する形に見直すことを表明したものです」

 今後、ASBJによる新リース会計基準の開発が本格的に進むこととなる。そして、近い将来の強制適用により、IFRS16と同様のリースの資産計上が、あらゆる国内企業に新たに義務付けられることになるのだ。

photo (写真提供:ゲッティイメージズ)

早ければ2023年にも新基準が強制適用

 ただし、この制度変更への対応が一筋縄ではいかないことは、IFRS16の対応法を紹介してきた本連載からも明らかだ。リース契約の把握や資産計上のためには業務の見直しが欠かせず、実務的な作業量も大幅に増加する。それらへの対応に向け、システム側の改修も避けられない。

 加えて、時間的な猶予もそう多く残されていないようだ。ASBJは今回の「リース」に先立ち、「収益」のコンバージェンスを推進。そこでは、15年3月に開発着手を決定後、18年3月の基準書公開を経て、21年からの強制適用開始がすでに決定済みだ。

 対するリースは、開発着手の決定が収益より約4年遅れであり、強制適用の開始は25年頃と考えられている。ただ一方で、リースは収益より影響範囲が小さいこともあり、早ければ19年中に公開草案が公表され、強制適用も23年頃までに早まるという指摘も少なくない。

 「ともあれ、対応の困難さを考慮すれば、強制適用まで時間は多く残されていないのが実情です。この点を踏まえ、円滑な制度対応に向け、早期に対応作業に着手すべきであることは明らかです」(葭葉氏)

photo 新リース会計基準の適用の見通し

 とはいえ、リース取引の資産計上に向けた取り組みは多くの企業にとって初めてのことだ。何を、どう進めるべきか、戸惑うことも多いはずである。

 そうした中、ぜひ参考にしたいのが、新リース会計基準の“ひな型”として共通点も多いIFRS16と、その適用に向けた先行各社の取り組みだ。

制度対応で新たに発生する6つの業務

 葭葉氏によると、IFRS16適応にあたってまず理解が求められるのは、「年度決算」「月次業務」「日次業務」「予算策定業務」のそれぞれで、次のような業務が新たに発生することなのだという。

 最初の「年度決算」では、IFRS16適用に伴う情報の適切な開示に向けた「開示資料作成」と、使用権資産としてオンバランス化したリースの「減損兆候判定」の業務が新たに発生する。そのために構築を求められるのが、開示に必要な広範な情報収集のための仕組みと、使用権資産の減損を適切にシミュレーションするための仕組みの2つだ。

photo プロシップ システム営業本部 FS営業2部2グループ グループリーダーの葭葉類氏

 「IFRS16では、オペレーティングリースや不動産の賃貸借契約が固定資産に計上されることで、減損処理の対象が一気に拡大します。そこで、特に後者の整備にあたっては、漏れなく適切に処理できるよう留意する必要があります」(葭葉氏)

 次の「月次業務」では、仕訳数の急増と、リース契約の条件変更時の対応作業の煩雑化が想定される。

 このほか、「日次業務」では、従来のオペレーティングリースを資産登録するための「業務プロセスとシステムの構築」が、「予算策定」では、「減価償却により使用権資産の将来予測が行える仕組みの構築」がそれぞれ求められるという。

業務委託やクラウドも資産化の対象になる可能性も

 葭葉氏は、「こうした対応を適切に進めるには、次の4つのポイントの理解も併せて求められます」と語る。最初に挙げるのは「リースの対象範囲」だ。

 一口にリースといっても、その対象や形態はさまざま。そうした中、作業を進めるには、まずはどれがリースに該当するかを適切に判別できなければならない。

 この点について、IFRS16ではリースを「資産を使用する権利を、一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約」と定義している。これに照らし合わせると、一般的なオフィス機器や自動車のリース契約だけでなく、前述した不動産の賃貸借契約、さらに業務委託契約やプライベート・クラウドといった、従来はリースとは捉えられていなかった契約もリースに含まれることになる。新リース会計基準でも、この定義は踏襲されると見込まれている。

 「このように、リースの範囲は極めて広範です。必然的に、契約相手や自社の窓口が膨大となり、資産計上対象となるリース契約の把握だけでも極めて困難なことを認識しておくべきです」(葭葉氏)

 この点を踏まえ、まずはリースの棚卸しに向け、組織としてリースに該当しそうな契約を漏らさず把握可能な体制を整える。その上で、IFRSの定義に基づきリースを判別し、契約期間が1年未満の「短期リース」と、新品でも少額の「少額資産リース」について、オンバランス化の免除規定の利用を判断することが、適切な資産計上の基本的な流れになるのだという。

photo 資産計上の範囲

「リース期間=契約期間」とは限らない

 ポイントの2つ目は「リース期間」だ。一般にリースの契約期間は、契約書に記された期間だと考えられがちだが、IFRS16では両者は必ずしも一致しないことに注意すべきだ。「IFRS16では、法的に解約不能な期間に加え、合理的に延長が確実な期間を含めて契約期間とみなします」(葭葉氏)

 具体的には、「解約オプションおよび延長オプションの有無」「それらの行使の可能性」を確認した上で、合理的に延長が見込まれる期間を加味してリース期間を判断するのである。

 もっとも、外部環境の変化が大きい飲食業や流通業では、延長期間を合理的には算出しにくい。その場合は、過去の出店での平均的な契約期間や、経営計画などで掲げられた出店戦略や売り上げ目標などと整合性をとる形で合理的な延長期間を算出することが可能だという。

 「契約期間はリース資産の減価償却額に直結します。そのため、多くの物件を賃貸借している企業では、相応の検討期間を要し、またそのバランスシートへの影響も大きくなることを覚悟しておかねばなりません」(葭葉氏)

photo 延長/解約オプションを含むリース期間の検討方法例

状況に応じて集中管理と分散管理の使い分けを

 3つ目は、「業務影響」である。IFRS適用により、社内の業務フローは資産計上や減価償却が発生することで大きな見直しが必要とされたが、これは新リース会計基準の適用でも同様だ。そこで課題となるのが、それらの作業に必要な情報をどう収集するかということだ。

 葭葉氏によると、そのための手法は「集中管理」と「分散管理」に大別されるという。前者は本社経理がリース情報を一元的に収集/管理する手法だ。メリットは、専門知識を備えた経理スタッフにより、前述の契約期間やリース資産の適切な算出や計上が可能になること。ただし、リースの数が増えるほど、本社経理の負担が増すことがデメリットだ。対して後者は、現場がリース情報の登録作業を行い、そこに誤りがあった場合には、本社経理が修正作業を行う方法。これにより本社経理の負担は解消されるが、登録作業を任せることで現場から反発を受ける可能性があることが難点だ。

 「双方のよしあしを踏まえ、自社の状況に合った体制を整備することが大切です。それ抜きには、業務が回らなくなる可能性も否定できません」(葭葉氏)

photo 集中管理と分散管理

在外子会社の対応も忘れずに

 4つ目は、「在外子会社」だ。ASBJの実務対応報告18号では、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」において、連結決算手続きでの在外子会社の会計処理の統一を要求している。つまり、日本本社に新リース会計基準を適用するのであれば、在外子会社も同様に切り替える必要があるということだ。そのために、本社経理の主導で現地作業を進めることが望ましいのは、前回の記事でも説明した通りである。

 プロシップは、こうした適用作業の全てを進める上で、企業の頼れる右腕だ。IFRS16対応の資産管理ソリューション「ProPlus」は、システムと業務の双方の見直しを強力に支援する。

 加えて、リース資産管理における豊富な経験も同社の武器だ。「新リース会計基準の適用支援に向けた当社の財産といえるのが、18カ国135社のIFRS適用を支援することで培ってきた豊富な経験とノウハウです。それをもとに、企業の幅広い疑問に対して、とるべき方法や考え方などをアドバイスし、さまざまな側面から支援します」(葭葉氏)

 新リース会計基準への関心が高まる中、プロシップの果たす役割は今後、さらに大きなものになりそうだ。

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提供:株式会社プロシップ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年9月15日