ウエスタンデジタル日本法人社長の小池淳義氏のもとで日本の生産部門の陣頭指揮をとるのは、ウエスタンデジタルコーポレーション・バイスプレジデントのマイトリー・マハジャーニ(Maitreyee Mahajani)氏だ。同氏は2012年、サンディスクコーポレーション・ジョイントベンチャー・ファブ・オペレーションのシニアディレクターとして入社した。前職は半導体装置メーカーのアプライドマテリアルズ。同社での15年間の在籍経験により半導体メーカーが多数存在していた日本とのビジネス経験も豊富だ。
ウエスタンデジタルとキオクシアとの提携を通じて、四日市工場等での共同開発や共同生産に携わるMahajani氏は、両社のパートナーシップとウエスタンデジタルにとっての日本市場の位置付けを次のように説明する。
Mahajani氏 ウエスタンデジタルはデータインフラソリューションを提供する世界のリーディング企業です。HDDとNANDフラッシュメモリを使った製品の開発や製造に大きな強みを持っており、クラウドコンピューティングを担うデータセンターなどの大規模ストレージを必要とする顧客を含む、全てのビジネスセクターに最新技術を提供しています。
Mahajani氏 日本は「顧客」と「生産」という2つの点で戦略的に極めて重要な国であるとともに、デジタルカメラやスマートフォンなど、特に先進のデジタル機器の開発においてパイオニア的な国であり続けています。だからこそ日本の顧客との戦略的提携は非常に重要なものとなるのです。ご存じのように、NANDフラッシュメモリという技術は東芝のエンジニアによって発明されました。キオクシアとの提携はフラッシュメモリの生産においてウエスタンデジタルを大変ユニークなポジションに位置付けています。NANDフラッシュメモリだけでなく、HDDも日立・IBMの時代から長年日本で製品開発が続けられてきました。こうした観点からも、開発・生産と顧客とのパートナーシップの面で日本が極めて重要だと考えています。
NANDフラッシュメモリの市場でのニーズは、昨今のスマートフォンやPCを見れば明らかだろう。スマートフォンやゲーミングで必要とされるストレージ容量は年々増大し、いまやPCではHDDに代わりSSD搭載が当たり前になっている。一方のHDDは、大容量HDDを中心にデータセンターなどのエンタープライズ市場で高い成長が見込まれている。
Mahajani氏は「データインフラ向けの市場はわれわれの事業セグメントで最も成長が見込めます」と説明しており、処理すべきデータ量の増大からフラッシュのみならずHDDの需要も引き続き大きいとしている。一方で高速動作が求められるアプリケーションではSSDが必要とされており、すなわちHDDとSSDの両技術を抱えているからこそ顧客のニーズを満たせる幅広いポートフォリオを持つというのがウエスタンデジタルの強みだ。
また昨今の新型コロナウイルス感染症が引き起こしている不安定な経済情勢の中においても、ウエスタンデジタルは大きな役割を果たせると考えている。
Mahajani氏 多方面の業界で不透明な状況が続いているのは確かですが、ハイテク企業、特にデータセンターやストレージを必要とする業種についてはまたとないチャンスになると考えています。人々がテレワークを活用することで、より高速なサーバや大容量のストレージ、さらにテレワークを実現させる技術の必要性が高まり、結果としてこれらの事業を押し上げることになると考えるからです。
Mahajani氏 もちろん、全ての市場が同じ状況とは限りませんが、クラウドコンピューティングのような仕組みのニーズは高まっており、われわれはこのトレンドをとてもポジティブなものとして捉えています。さまざまなものがオンラインで行われるコロナ禍のトレンドにおいて、大量のデータを記録する当社のデータインフラは非常に重要な立ち位置にあると言えます。
2000年ごろまでの半導体業界における日本のポジションから考えれば、昨今は半導体メーカーの数も減り、産業として人材流出さえ懸念され、日本の半導体の状況は厳しいと映るかもしれない。だがウエスタンデジタルの見解では、日本は形を変えて半導体の開発・生産、関連メーカーとして極めて重要な存在であり、今後も伸び続けると予想される需要のなかでユニークなポジションを築いていけるという。
ここで気になるのは、働く場所としての半導体業界だ。日本ではメーカーの工場勤務といえば男性中心の職場のような印象もあるが、今回話題に上っているMahajani氏は、前職時代から合わせて20年以上の半導体業界キャリアを持つベテランの女性である。ウエスタンデジタルの日本での生産活動は、同氏が陣頭指揮をとっており、ウエスタンデジタルのNANDフラッシュメモリ拠点として非常に重要な役割を担っている。
Mahajani氏 私のバックグラウンドはエンジニアです。大学ではマテリアルサイエンスを専攻していました。キャリアの一歩目はアプライドマテリアルズでのプロセスエンジニアリングで、そこでは半導体製造装置の開発においてさまざまなプロジェクトを統括しました。
Mahajani氏 そして現在のファブ・オペレーションというポジションですが、ジョイントベンチャーのパートナーは当然のこと、ウエスタンデジタルの米国、インド、中国、イスラエル、マレーシアなどの世界中のエンジニアと共に日々密に連携しながら日本での生産を統括しています。この業界に女性が少ないというのは確かかもしれませんが、イノベーションを起こすにあたり、新しいアイデアやコンセプトを出し合う上で「多様性(Diversity)」が大変重要になります。「多様性」は「あって良かった」「選択肢の1つ」というよりもむしろ、「革新的な企業にとって必要不可欠なもの」と考えています。社会が女性の働く場所を決めるのではなく、女性自身が働きたいと思う場所を選択することが重要です。もし日本の企業が製造分野での女性のエグゼクティブを任命したとしたら、それはあくまで始まりに過ぎません。
同氏はまた、ウエスタンデジタルや半導体業界に興味を持つ方々に次のようなメッセージも出している。
Mahajani氏 エンジニアリング、特に半導体エンジニアリングはとても面白い分野です。女性が少ないからというのは参加しない理由にはならず、やりたい、あるいは得意な分野での自身の選択が新しいチャンスになると考えるべきです。実際、私がこの業界に入ったときはほとんど女性はいませんでしたが、この選択が少しでも業界を変える一端になればと考えてきました。そしていまは将来の世代に向けて、皆さん自身が参加することで変化を起こしましょうと呼びかけています。
Mahajani氏 80年代や90年代を振り返ると、当時の日本の半導体業界は現在よりも盛況でした。しかしながら、今日の日本の半導体が成長していないわけではありません。ご存じのように、半導体業界は非常にスキルの高いエンジニアを要求していますが、日本人のたゆまない努力と世界トップクラスの半導体生産を実現しようというアプローチが日本の企業にとって優位に働くはずです。このため、若い世代には「この業界はまだまだ成長を続けている」とどんどん訴えていくべきです。半導体業界ではAIやマシンラーニングの世界での革新も期待でき、今後もさらに大きな可能性が開かれていると思います。
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