必要だったのは自動化してくれる会社ではなく、「自動化文化」を一緒に社内に広めてくれる会社JALインフォテック事例インタビュー

» 2021年04月05日 10時00分 公開
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 デジタルシフトを加速させるためには、機動性が高く柔軟なITインフラを実現する「ネットワークの自動化」が欠かせない。JALインフォテック(JIT)のハイブリッドクラウド基盤「CIEL(シエル)」で、SDN製品の設定変更作業の自動化に取り組んだ小熊氏と大西氏に、エーピーコミュニケーションズの「自律支援型ネットワーク運用自動化サービス」を活用した背景や感想を聞いた。

JALインフォテック システム基盤サービス事業本部 システム基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部部長の小熊孝洋氏(写真=左)と同システム基盤事業部 ハイブリッドクラウド運営グループの大西郁矢氏(写真=右)

―― JALインフォテックの事業内容とお二人が担当されている業務内容をお聞かせください。

小熊 当社はJALグループのIT中核会社として、JALグループが目指す「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社」の実現をITサービスで支え、社会に貢献することをミッションとしています。あわせて、これまでに培ってきた知見を生かし、JALグループ以外のお客さまにも業務に寄り添うITサービスを提供しております。

 そして私たち「ハイブリッドクラウド基盤部」のミッションは、JALグループのハイブリッドクラウド基盤「CIEL(シエル)」の、将来構想から、安心・安全な運用維持管理までをJALと一体となって実現することです。

JALグループのハイブリッドクラウド基盤「CIEL(シエル)」について語る小熊氏

―― 「CIEL」について、もう少しお聞かせいただけますか。

小熊 「JAL Vision」を策定した当時(2017年)はデジタルシフトへの対応が遅れていたため、古いアーキテクチャの基盤が足かせとなり、デジタル技術の進歩に人も物も追い付けていませんでした。「CIEL」は、この課題を克服するための施策の1つです。

 「CIEL」は次の5つのコンポーネントで構成されています。プライベートクラウド基盤「CIEL/J」、専有IaaSを利用したパブリッククラウド基盤「CIEL/D」、共有IaaS・PaaSを利用したパブリッククラウド基盤「CIEL/S」。そして、これらをつなぐためのネットワーク「CIEL/X(クロス)」と、統合的な運用管理をつかさどる管理基盤「CIEL/manager」です。

自動化の目的は、コスト削減や効率化ではなくビジネスへの貢献

――  JALインフォテックでは積極的に「CIEL」の運用自動化を推進されているそうですね。

小熊 はい。ただしそれは単純なコスト削減や効率化を目的としたものではありません。「CIEL」の構想段階でJAL・JITのプロジェクトメンバー全員が同じ思いを共有できるように、私たちは3つのコンセプトと6つのデザインポリシーを定義しました。この中に「自動化の活用・最適化」というデザインポリシーがあります。

CIELのコンセプトとデザインポリシー

 これは「JALの挑戦・成長を支えビジネスに貢献する」というコンセプトに基づいており、旧来型の非効率で多くの人手を介したインフラ基盤の運用を見直し、自動化・省力化することでアプリの提供スピードを向上させビジネスを加速させる。こうしたビジネスへの貢献に直結した自動化を目指し、推進しております。コスト削減や効率化はそれを目指す過程での副次的効果だと考えております。

システムの柔軟性と共に高まった運用負荷。Ansibleを使い作業時間を80%削減

―― 今回、エーピーコミュニケーションズ(以下、APC)の「自律支援型ネットワーク運用自動化サービス」を通してSDN製品の設定変更作業の自動化に取り組んだそうですが自動化に至った背景をお聞かせください。

小熊 CIELの中でもプライベートクラウドである「CIEL/J」は、ネットワークの運用維持管理を自社で行う必要があったため、設計や運用面で柔軟性を持たせる事ができ、自動化が進めやすいという観点でSDN製品を導入しました。

 しかしながら、実際の運用が始まってみると、ネットワーク領域の自動化の推進が遅れた上に、導入したSDN製品はGUIによる操作だったため設定変更にかなりの手間と時間がかかってしまって……。週2回行う設定変更作業では、6人体制で作業をしても5時間程かかっており、以前のシステムよりも作業担当者の負荷が高まるという状況に陥ってしまいました。

 この状況を解決するために、「ネットワーク自動化チーム」を組み、Ansibleを使ったSDN製品の設定変更作業の自動化に着手しました。このチームへの参加条件は、「自ら手を上げる」「自動化を楽しむ」の2つのみで部門内で募集をしたため、自主的に集まったメンバーではありましたが、自動化やAnsibleに関しては初学者が多く最初は苦労しました。

 しかし、APCさんのサポートもあり、結果として自動化した作業パターンついては、作業時間を80%削減、作業のヒヤリハットも0件という劇的な改善がなされました。また、自動化は業務を分解して検討することから、業務を根本から変えたり、断捨離したりと、仕事のやり方・考え方を見つめ直すきっかけにもなりました。

大西 当社に常駐しているAPCメンバーとAPC本社にいるネットワーク自動化チームが連携してスピーディーに対応してくれたため、壁に突き当たってもすぐに先に進めることができました。レスポンスが早く、回答も的確なのでとても助かりました。

 また、作業を自動化する際も、常駐メンバーが作業内容を理解しているので、現実に沿った具体的な案を出してくれて良い形で進められました。

決め手はネットワーク自動化に関するアウトプット量と常駐社員の熱意

―― Ansibleによるネットワーク自動化を進めるにあたり、APCを選ばれた経緯をお聞かせいただけますか。

小熊 自分で調べて信頼できるか否かを見定めて声をかけさせてもらいました。APCさんとの出会いは、2018年4月にファイアウォール更改案件でポリシーテストを自動化するために「NEEDLEWORK」をレンタルした時でした。いろいろなお話を伺う中で、特に私の心に残ったのが「ネットワーク自動化を推進している」ということと、「常駐メンバーが業務を把握し、自動化に精通したバックエンドの自動化チームと連携して、現場での自動化を進めることができる」という2点でした。

 その後12月に「CIEL」がサービスインし、本格的に自動化を推進する段階になっていろいろ調べた際に、APCさんのテクニカルエバンジェリストの方がSNSやブログ、イベントでこの分野の情報を発信しているのを見つけて、改めてAPCさんのネットワーク自動化に対する力の入れ様を実感しました。

 当社に常駐していたAPC社員の方も自動化に対する強い熱意を持っていて、その姿を見て信頼できると感じ「一緒にJITでの『ネットワーク領域の自動化文化』を作ってほしい」とお願いしました。

 また、実施フェーズにおけるプロジェクトのキックオフにおいて、「1年以内に共同で事例発表できるように一緒に楽しみながら結果を出していきましょう」という目標にも快く賛同して頂いたのは、非常に好感を持ちました。

技術力の提供だけではなく、社内文化も一緒に変えていけるパートナー

小熊 「ネットワーク領域の自動化文化」という新たな文化を醸成するには、マジョリティーの考えを変えなければなりません。そのためには「自動化によってどれだけ楽になるのか、それに取り組むことがどれだけ楽しいのか」を見せていく必要があります。APC社員のみなさんは本当に楽しそうに自動化に取り組んでいたので、そういった姿が部門内に良い影響を与えてくれると感じました。どんなに技術力があってもつまらなそうにしている技術者とは、『文化』を一緒に作ってはいけませんからね。

大西 常駐されているAPC社員の方がAnsibleに関する勉強会を開いて初学者にも分かりやすく説明をしてくれたり、「どんどんやっていきましょう」と雰囲気づくりをしてくれたりと、Ansibleになじめる環境づくりをしてくれたので、チーム全体でスムーズに自動化導入を始められました。

自動化文化の醸成という面でもAPCのサポートが助けになったと話す大西氏

小熊 「ネットワーク領域の自動化文化を作る」という私たちの目指す未来を一緒に見据え、案件の進め方を考えたり、常駐社員がJIT側の視点でAPCさんのバックエンドの自動化チームに本気でダメ出しをしたりと、常に私たちに寄り沿い信頼に応えてくれました。

トレーニングをマインドチェンジにも活用

――  「自動化トレーニング」も利用されたそうですが、いかがでしたか?

小熊 「自動化トレーニング」を利用したのは、技術力の向上だけではなく、「ネットワーク領域の自動化文化の醸成」も目的の一つでした。そのため、自動化に携わっていないメンバーにも、このトレーニングを受けてもらいました。彼らは、ネットワーク自動化チームが楽しそうに自動化を進めていく姿を横目で見ていて、気になっていたと思います。

 その状態でトレーニングを受けて「今まで苦労していた設定変更作業がこんなに楽になるんだ」と自動化のメリットを実感したことで、彼らの自動化に対する気持ちが前向きになったと感じています。実際に実施後のアンケートでは、Ansibleを触っているメンバーは「より理解が深まった」と、未経験のメンバーは「自動化やAnsibleの概要を理解できた」として、受講した約20人全員がこのトレーニングを非常に高く評価していました。

大西 当社の環境に合わせたハンズオンカリキュラムを組んで頂いたこともあり、Ansibleの基礎を理解していたメンバーは翌日から実務ができるレベルまで引き上げられました。とても効果的なトレーニングだったと感じています。

作業は人手から自動化へ。実績を増やし事例として発信してきたい

―― ネットワーク自動化の今後の方向性について、どのようにお考えですか?

小熊 将来的には、アプリ開発者がカタログメニューから申請した内容をわれわれが承認すれば、サーバ、ネットワーク、ストレージなどのリソースが払い出される『セルフサービス化』を、CIEL/managerとAnsibleなどの自動化ツールを連携して進めていく予定です。

 そうなると、ネットワーク含むインフラ基盤の“作業”に人を投入する時代ではなくなっていきます。今後はインフラ基盤全体のアーキテクトの検討や、運用維持管理の業務を分解・整理し自動化を設計できる、またはインフラのコードが書けるエンジニアが必要になってくると考えています。そのため、こういった需要に合わせてエンジニアを育成し、人財をシフトしていく必要があると考えています。

 また、こういったインフラ基盤の運用や人財育成における方向転換を迫られているユーザー企業は当社だけではないと思っております。APCさんと取り組んだ事例を発信し、同じ悩みを持った方々の参考となれば幸いです。

 今はコロナ禍で先が見えない状況ですが、目指す将来像だけは明確に持ちながら、CIELと共に成長し、JALグループの発展に貢献していきたいと考えております。

―― ありがとうございました。



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提供:株式会社エーピーコミュニケーションズ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年5月5日