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» 2021年09月15日 10時00分 公開

スマートニュースのグローバルなプロダクト開発を支える「プロダクトマネージャーの役割」とはアプリダウンロード数は日米で5000万超

[PR/ITmedia]
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 アプリのダウンロード数は日米合算で5000万以上。月間のアクティブユーザーも日米で2000万人以上を誇るなど、日本だけでなく米国でも急成長を遂げているのが、スマートニュース(東京都渋谷区)が運営するニュースアプリ「SmartNews」だ。

 「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」ことをミッションに掲げる「SmartNews」は日本発のプロダクトで、当初から世界をターゲットにしてスタート。「One Product, One Team」を掲げ、日米中の6拠点のオフィスが協働して同一のプロダクトを開発。世界に展開している。

 急成長するとともに組織が急拡大する中で、開発体制をリードしているのが、2018年9月から導入したプロダクトマネージャーを中心としたチームの存在だ。導入している企業は日本ではまだ少ないものの、Spotifyをはじめ米国のテック企業では一般的だ。グローバルワンプロダクトを円滑に進める鍵も、プロダクトマネージャーにあるという。

 そのプロダクトマネージャーを務めているのは、シニア・ヴァイス・プレジデントでプロダクト担当のJeannie Yang氏。サンフランシスコの拠点に勤務しながら、総責任者としてグローバルに展開するプロダクト全ての開発を率いている。就任後すぐに導入したグローバルスタンダードのマネジメント手法が、スマートニュースのプロダクト開発のプロセスを変えたという。

 Jeannie Yang氏と、エンジニアリングマネージャーの井口貝氏に、スマートニュースのチームマネジメントについて聞いた。

Jeannie Yang カリフォルニア大学バークレー校学士(電気工学、情報工学)、修士課程修了(経営情報学)。20年以上にわたり、Yahoo!やSmuleを始めとする米国のデジタル企業で、最先端のソフトウェアエンジニアリングとプロダクト開発を経験。手掛けた分野は、ソーシャル、モバイル、メディア体験など多岐にわたる。2018年、スマートニュースのプロダクト担当シニア・ヴァイス・プレジデントに就任。月間2000万人以上が利用するアプリであるSmartNewsがプロダクトとして優れているか、未知のニュースが発見できるか、必要な情報が届けられているか、その全ての視点で開発を統括している。自ら特許を多数保有し、数個の学術論文も発表している、多才な存在である
井口貝(いのくち・かい)東京都出身。国立東京工業高等専門学校で5年間の本科と2年間の専攻科を経て、中央大学大学院へ。合計9年間、情報工学を学ぶ。その後、新卒でNECソフト(現在のNECソリューションイノベータ)にSEとして入社。小売のECソリューション導入、要件定義から実装・運用までを4年間経験。2015年1月スマートニュースに入社。ニュース配信基盤全般の開発・保守運用を3年間経験し、2018年1月よりエンジニアリングマネージャーを務める

全社体制での開発からプロダクトマネージャー導入へ

 「SmartNews」のアプリは、設定画面から日米のニュースを切り替えることができる。この機能を持ったバージョンを米国市場に向けてリリースしたのは2014年。それから現在までに、アプリのダウンロード数は日米合算で5000万以上にまで伸びた。現在は、日本版、米国版、それに他の国々を対象にしたインターナショナル版の3つのサービスを展開している。

 特徴は同一のアプリで日本版、米国版、インターナショナル版を提供できるように、グローバルワンプロダクトの開発をしていることだ。国が違っても同じ見た目で、それぞれ使いやすいインタフェースや市場ニーズに合わせた機能を設計し、注目記事や、新型コロナウイルス、政治、スポーツなど、ジャンル別に新着記事を読めるようにしている。

 東京・渋谷に国内の拠点を置くスマートニュースは2012年に創業。2014年以降、ダウンロード数やユーザー数は日本だけでなく米国でも急拡大した。エンジニアリングマネージャーの井口氏は、エンジニアの人数も急激に増やさざるを得なかったと振り返る。

 「エンジニアの人数は立ち上げた当初は10人に満たないものでしたが、米国でリリースしてから採用を増やして、現在では約150人と、最近1年半ほどで3倍以上の規模に急成長しました。

 スマートニュースが扱っているのは情報です。政治、経済などのカテゴリーや、速報記事、解説記事、意見を表明する記事など種類の違いがあります。それぞれの記事を人間の手で分類できればいいのですが、毎日万単位の記事を整理しなければなりません。

 そのため、情報やユーザーの解析には、機械学習を使っています。急激な市場拡大に対応するために機械学習の基礎を固めるとともに、さらなる拡大を想定して将来に備えるためには、急いで多くのエンジニアを確保する必要がありました」

 エンジニアを増やすと同時に、開発拠点も世界に広がった。現在は東京のほか、米サンフランシスコとパロアルト、ニューヨーク、中国の北京と上海の計6カ所に拠点を置き、グローバルで開発を進めている。「One Product, One Team」は、創業当初から変わらない方針だ。

 井口氏によると、まだ組織の規模が小さかった頃は、エンジニアが良いと考える機能を自由に作ることで発展できたという。しかし、規模が拡大するにしたがって、数千万人ものユーザーを想定して、そのニーズを満たす開発が必要になってきた。そこでスマートニュースが考えたのが、プロダクトマネージャーの導入だった。

 「当初からプロダクトマネージャーがいたわけではありません。私は30番目に入社した社員で、その頃は、実質的には共同創業者の浜本階生と鈴木健がプロダクトマネージャーの役割を担っていました。

 当時はプロダクトアウト型の発想で、エンジニアが主体となって開発していました。この手法が初期の成長を支えた要因だったことは間違いありません。しかし、エンジニアだけの集団では、時として技術的な挑戦だけを優先してしまうことがあります。ユーザーのニーズを完全には把握できないこともあるでしょう。市場が急拡大する中で、どんなプロダクトを作っていくのかをコントロールする必要がありました。

 こうした課題を解決するために定義したのが、プロダクトマネージャーのポジションです。そこで2018年9月、音楽プラットフォームのSmuleを全世界で5000万アクティブユーザーを獲得するまでに成長させた実績を持つJeannie Yangを招聘(しょうへい)しました」

スマートニュースのオフィス

良質な情報を必要な人に届けるミッションに共感

 Jeannie Yang氏は、スマートニュース入社前からソーシャル、モバイル、メディア、音楽など、多岐にわたるテーマで研究開発やプロダクト開発に携わってきた。ソフトウェアエンジニアとプロダクトマネージャーの両方を経験した経歴を持つ。

 カルフォルニア大学バークレー校修士課程を修了し、2005年に米Yahoo!に入社。Yahoo! Research Berkeley(Yahoo!とバークレー校の協業リサーチ)として複数のモバイルソーシャルの研究プロジェクトを立ち上げた。Jeannie Yang氏は当時のことを「幸運なタイミングだった」と表現する。

 「Yahoo!には、ソーシャルメディアラボが立ち上がったばかりの頃に入社しました。まだiPhoneがなかった時代です。写真やビデオ、ジオタグなどの研究をしていて、当時はモバイル端末から写真を撮影することでその位置が分かることが斬新でした。

 その後、Yahoo!社内でスタートアップの環境をつくる部門が立ち上がり、新サービスの開発を担当する部門であるYahoo! Brickhouseに配属になりました。ここでYahoo!のビジネス規模に見合うレベルの事業を立ち上げるために必要なことを学び、プロダクトマネージャーのスキルを獲得しました」

 Jeannie Yang氏はYahoo!を退社後、数社のプロダクト開発やiPhoneに特化したプログラミングへのコンサルタントを務め、2010年にまだ社員10数名の規模だったSmuleに入社。プロダクトとデザインのチーフオフィサーとしてSmuleをけん引し、全世界で5000万アクティブユーザーを獲得する音楽プラットフォームに育てた。

 Smuleが成長を果たした2018年、Jeannie Yang氏はリクルーターからスマートニュース入社の打診を受ける。入社を決めた理由は、スマートニュースの理念に共感したからだという。

 「世界中の良質な情報を必要な人に送り届けることに、スマートニュースの皆さんが熱意を持っていたことが、入社を決めた理由の一つです。私は高校時代に学校新聞の編集をし、UCバークレーではジャーナリズムを専攻していたことから、ジャーナリストの道に進むことを考えたこともあります。ベンチャーでもジャーナリズムに関わっていましたので、リクルーターから話を聞いてすぐに興味を持ちました。

 その頃は、トランプ大統領の就任から加速し始めた、米国の情報の二極化と、民主主義への影響について考えるようになり、メディアに対してもシニカルな感覚を持っていました。良質な情報を届けることで米国における二極化を崩し、自分が見たい情報しか見えなくなるフィルターバブルを打ち破ることができると、浜本さんと鈴木さんが情熱を持って話しているのを聞き、入社を決めました」

Squadによる開発体制を導入

 Jeannie Yang氏が入社してから、すぐにプロダクト開発のプロセスの改革に取りかかった。井口氏は、Jeannie Yang氏の取り組みから、日本と米国のプロダクト開発の違いを実感したと話す。

 「日本とのプロダクト開発の違いを、大きく2つの点で感じました。1点は、グローバルスタンダードでは、データによって良しあしを判断していることです。アイデアを出すまでは同じですが、そのアイデアを実行してみて、ユーザーの滞在時間が何%増える、クリックした率や収益性が改善するといったことをデータで表した上で意思決定をします。

 もう1点は、データによる意思決定を支えるために、小さく試して、早めに失敗することです。専門的にはABテストと呼ばれています。例えばボタンの色の変更を検討するとします。でも、スマートニュースのボタンがある日いきなり赤から青に変わったら、ユーザーはびっくりしますよね。そこで、ユーザーが1000万人だとしたら1万人を選ばせてもらってテストをして、データを比較します。その結果、青の方がボタンをクリックする率が統計的に優位に高い効果が出れば、青に変えます。

 SmartNewsではすでにこの手法を取り入れていましたが、日本の類似サービスで起きている典型的な失敗は、プロダクトが良いものだと考えて、じっくり作り込んでしまったものの、蓋を開けたら効果がなくて、無駄に終わってしまうことです。残念ながら大企業や行政のシステムでも同じような失敗があります。最初から職人意識で作り込むのではなく、ごく一部のユーザーに試して、数字で検証しながら作り込むことが重要だと感じました」

 グローバルスタンダードを取り入れると同時に、Jeannie Yang氏はプロダクト開発をマネジメントするために、既存の組織の在り方も変えた。それはSquadの導入だ。Squadは、ミッションごとに小さなチームを編成するマネジメント手法。複数の部署にまたがる横の軸と、個人の職能である縦の軸を組み合わせるクロスファンクションによってメンバーを構成する。いわゆるマトリックス型組織のことで、その狙いをJeannie Yang氏は次のように説明する。

 「Squadの目的は、プロダクトのライフサイクルを適切にマネジメントすることです。プロダクトの開発は仮説を定義し、インパクトを検討し、技術仕様やスペックを作成するところから始まり、要件書の作成、マーケティング、テストリリースによる試行錯誤などを経て、ようやくリリースに至ります。

 開発フェーズの最初から、エンジニアだけでなく、多様な部門の人の協力が必要です。しかし、大きな組織では開発のスピードが落ちてしまいます。そこで、部門を越えたスタッフによる適切な規模のチームで取り組むことで、開発を高速に進めることができます。より多くの人数で取り組むプロジェクトの場合は、Squadを束ねるPillarという単位で取り組むこともあります。

 チームや人材をエンパワーできるのも、SquadやPillarの特徴です。開発のフェーズによって適切な人材を増やす、もしくは削減することも可能です。開発段階で10人必要だったエンジニアも、テストリリースの段階では少人数で十分ですので、他のプロジェクトに移ってもらいます。一方で、データサイエンティストが新たに加わるなど、あらゆる人たちの力を最大限引き出すことができます」

スマートニュースのオフィス内のカフェ

組織の規模拡大を後押しするSquad

 Squadによるプロダクト開発は、米国では一般的だ。音楽やポッドキャスト、ビデオを楽しめるデジタル配信サービスのSpotifyが導入したことで広まったといわれている。しかし、Jeannie Yang氏が導入を提案したときは、日本ではまだ言葉もあまり知られていなかった。

 そのため、Squadに慣れるためにはそれなりに時間もかかったという。Jeannie Yang氏が入社した当時のスマートニュースでは、1人が複数のプロジェクトに関わっていたものの、優先順位を明確にできていなかった。また、プロジェクトがいつ終わるのかも見えないものが多かった。

 それがSquadを編成して、何をやって、何をやらないのかを判断することで、メンバーの配置なども徐々にうまくいくようになる。SquadとPillarの体制は、最初はエンジニアだけに導入。徐々に部門を広げ、最終的には全社的に組織するようになった。現在の状況にJeannie Yang氏も試行錯誤ではあるが手応えを感じているという。

 「エンジニアもプロダクトマネージャーも、各拠点に分かれていながら連携する必要があるので、常に考えながら進めていますが、皆さんの協力もあっていい成果が出ていると思います。ここまですごく速いスピードで成長できているので、これで終わりではなく、今後さらに成長する仕組みを考えていきたいと思っています。

 Squadの別のメリットとしては、新しいメンバーが入社したときに、組織になじみやすくなる点もあります。メンバーは全員どこかのSquadに配置されるので、新しいメンバーもプロダクトマネージャーや他部門のメンバーと一緒にミッションに取り組みます。そのことによって、Squadのミッションも、組織としての目標もすぐに理解できるようになります。この点も、Squadが組織の規模拡大を後押しできている要因ではないでしょうか」

Squadのメリットは、新しいメンバーが入社したときに、組織になじみやすくなる点

日本ではプロダクトマネージャーの役割が弱い

 Jeannie Yang氏は、スマートニュース入社後にすぐ改革に取り組めたのは、Smuleで組織が急拡大する過程に関わったことが大きいと話す。

 「25人から50人、50人から100人、100人から数百人へとスケールが大きくなるに従って、必要なスキルやコミュニケーションの在り方も変わってくることをSmuleで体験できました。そのことが生かせています。今のスマートニュースはSmuleよりも大きな組織で、抱える課題は異なり、組織のサイズによって求められるプロセスも違います。それでも、SquadやPillarをうまく運用してメンバーそれぞれの観点を共有しながら、より良いプロダクトの開発につなげていきたいですね」

 日本の多くのスタートアップ企業でも、プロダクトマネジメントがどうあるべきかについて強いコンセンサスがあるとはいえない。有力なテックカンパニーであっても、プロダクトマネージャーがいないことも少なくないからだ。井口氏は、Jeannie Yang氏からマネジメントを学んだことで、プロダクトマネージャーの必要性をあらためて強く感じているという。

 「日本ではDXがうまくいかないといわれていますよね。その理由はおそらく、プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントを混同していることが一因ではないでしょうか。プロジェクトマネジメントで何かをまわすことはできても、何を作るのか、何を作らないのかを定義するといった本来プロダクトマネージャーが果たすべき役割が、日本では相対的に弱いのだと思います。

 彼女と一緒に働くことができたおかげで、一足早くグローバルのベストプラクティスを使うことができました。グローバルワンプロダクトの開発を進め、急拡大に対応するためには、プロダクトマネージャーの存在は欠かせないと感じています」

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