強制適用見込み間近!? 「新リース会計基準」について今から取り組むべき課題をプロが徹底解説

» 2023年12月01日 10時00分 公開
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 企業の経理や会計業務に多大な影響を与える「新リース会計基準」が、2026〜27年にも強制適用される見通しとなった。このスケジュールに対応するには24年3月ごろまでに自社の財務諸表にどれくらいのインパクトが出るのかを算出する必要があり、リース契約が多い企業は対応に追われている。一方で、まだ様子を見ていて、影響額の試算や対応方針の検討を進めていない企業も多い。

 強制適用を見据えて経理担当者が始めておくべきことは何か。ワークスアプリケーションズの藤原誠明氏(ERP事業本部 プロダクト営業&マーケティング部)に聞いた。

藤原誠明(ふじわら まさあき) ワークスアプリケーションズ ERP事業本部 プロダクト営業&マーケティング部。年間300件以上の商談に出席し、システム導入を支援するとともにHUEエヴァンジェリストとして活動。新リース会計基準に関する情報発信も積極的に行い、IFRS16号を適用した企業についての実態調査レポートのとりまとめも行った。

リース契約のほぼ全てがオンバランス化へ

 企業の経理や財務部門に大きな影響を与える「新リース会計基準」。国際財務報告基準「IFRS16号」との整合性を図ることを目的に、企業会計基準委員会(ASBJ)によって会計基準の開発が進められ、23年5月に公開草案が示された。

 正式な改正基準の公表は24年ごろと予測され、26〜27年にも強制適用されるスケジュールが濃厚だ。強制適用された場合の影響の大きさを、藤原氏は次のように解説する。

 「今回の改正は、基本的には全ての日本企業が対象になります。これまではファイナンスリースとオペレーティングリースの区分があり、バランスシートに載せるリース資産は限定的でした。それが、新リース会計基準では原則として全てのリース契約がオンバランス化の対象になります。つまり、オンバランス化が必要なリース資産の数と種類が激増するのです」

新リース会計基準では、オンバランスとなる対象契約とリース期間の考え方が変更となる

 藤原氏が「特に大きな影響を受ける業種」として指摘するのが、不動産を多く抱える小売業や多店舗展開をしているサービス業などだ。「店舗や支店用に多くの不動産を借りている企業では、バランスシート上の数字が大きく変わります。他にも、一括で借り上げてから貸し出す形態の不動産業や航空、海運などの業種にも影響が及ぶと予想されます。航空機や船舶のリースはこれまではオンバランスする必要はありませんでしたが、強制適用されればオンバランス化の対象です。大企業では債務の金額が10倍にもなるケースもあります」

対応に動く企業と、様子見の企業に二分化

 これまで、不動産賃貸契約等では、請求書が毎月届いてその支払いをすればよかった。しかし新リース会計基準が適用されると、新たな契約を結んだ場合、支払いをするだけでなく資産や債務として計上することや償却計算、減損などの複雑な会計処理も必要になる。そのため、企業としてどう対応するかを判断し、余裕を持って準備しなければならない。

 強制適用に向けた各企業の動きについて、藤原氏は「業務フローの改善やシステムの変更を検討している企業と、あまり現実的に捉えず、どのような影響が出るかを把握していない企業に二分化している」と指摘する。

 「リース契約が数件程度であればMicrosoft Excel(以下、Excel)でも対応できます。ただ、契約数が多い場合はシステムの導入が必須になってくるでしょう。強制適用の直前には駆け込み需要なども予想され、ベンダー各社も対応に追われます。システム導入を考えている企業は、将来を見据えて早めに動くべきです」

24年3月末までには影響額の試算を!

 では、新リース会計基準への対応は何から始めればいいのか。藤原氏は4つのステップを挙げる。1番目のステップは影響額の試算だ。

 「まずは影響額を把握し、金額が大きければ大きいほど本腰を入れた対応をしなければなりません。オンバランス化することで、資産計上の仕訳はもちろん償却計算や利息費用の計算なども必要になります。その結果、バランスシートや損益計算書にどれくらいのインパクトが出るのかを試算します」

 藤原氏は、影響額の試算を終わらせる目安として「24年3月末まで」と呼び掛ける。システムの選定や業務フローの検討など、強制適用が始まる26〜27年を考慮すると対応は待ったなしだ。

リース期間の算定・再見積もりにどう対応するか?

 すでに影響額の試算を進めた結果、「従来通りExcelで対応できるはずだ」と考えた企業もあるだろう。しかし、注意しなければならない点がいくつかある。藤原氏は2番目のステップとしてリース期間の算定方針の決定を挙げる。

 新リース会計基準では、「合理的に確実」な期間をリース期間として見積もる必要がある。合理的に確実な期間とは、すなわち契約の延長が確実な場合は延長期間分もリース期間に含めるということ。例えば、契約期間が4年の場合でも10年は退去しないことが明らかな場合、資産算定は10年で設定しなければならないこともある。この期間の見積もりの方針は各社に裁量が残された形になっており、自社の実務的な状況に合わせて判断しなければならない。

 また「新リース会計基準の運用が始まった際に、きちんとオペレーションが回るルールを構築することも重要」と藤原氏。「多くの契約について個別にリース期間を判断するのは大変なので、画一的なルールを設定した方がいい場合もあります。リース期間をどのくらいに設定すると経営数字にインパクトが出るのか、また同業他社がどのように設定しているのかも見ながらリース期間の算定方針を決めた方がいいでしょう」

 3番目のステップは、再見積もりへの対応方針を決めることだ。新リース会計基準では、契約締結のタイミングだけでなく、更新の際にも資産や債務として計上した金額の「再見積もり」が必要となる場合がある。この場合、更新の情報をキャッチした上で、割引現在価値を計算しなおし、増減の仕訳を作成し、償却もやり直す必要がある。契約件数が多いとオペレーションが煩雑になり、Excelでの対応は難しい。

 そして4番目のステップで、リース期間や再見積もりといった契約の情報をどう集め、管理するかを検討する。

 リース契約情報の管理は、比較的現場に近い部門や事業所ごとに行われていることが多く、経理部門は月々の支払い依頼を処理すればよかった。しかし、新リース会計基準適用後はリース契約の締結時から会計処理が必要で、経理部門は随時その情報を把握していなければならない。そのため、経理部門は各事業所の情報をどう収集するのか、業務フローの抜本的な変更も迫られる。

新リース会計基準適用後は、経理部門が随時状況を把握する必要がある

 藤原氏は、こうしたステップを踏んでいくと、システム導入が必要になる企業が多いだろうと話す。「件数が多い場合、契約情報の現場からの収集をExcelで行い続けたり、再見積の履歴を全てExcelで保持するのは現実的ではありません。新リース会計基準に合わせて適切な会計処理を行うためには、システムを導入するとともに、実際の運用をどうするのかを社内の各部署に適切にマッピングしていくことが重要です」

新リース会計基準対応に必要な4つのステップ

  • 影響額の試算
  • 「リース期間」の算定方針の決定
  • 再見積もりの方針の決定
  • 契約の情報をどう集め、管理するかの検討

影響額を試算するツールなどを無料で提供

 ここまで見てきたように、新リース会計基準に対応するには検討すべきことが多い。それだけに、早く準備を始めた方がいいと藤原氏は強調する。

 「多くの経理担当者は、現状ではインボイス制度や電子帳簿保存法への対応に追われていると思います。そのため、『新リース会計基準の対応は、もう少し先でいいだろう』と考えているかもしれません。しかし、想定されるスケジュールを逆算すると、準備を進める時期に来ています。特に、どのくらいの影響が出るのかを把握することは、今すぐ始めるべきでしょう」

 新リース会計基準の対応に役立つのが、ワークスアプリケーションズが提供するさまざまなサービスだ。23年11月6日には、Excelで影響額の試算ができるツールの無料提供を開始した。契約期間など最低限の情報を入力するだけで、最大10年分の影響額を簡単に算出できる。

 新リース会計基準の基になったIFRS16号の対応を支援した豊富な実績を生かして、リース期間や再見積もりの方針について各企業がどのように決定したのかをまとめた実態調査レポート(無料)も用意している。いずれもWebサイトで申し込める。

 影響額を把握した上でシステムの導入が不可避と判断した企業には、新リース会計基準に対応するシステムも用意している。ワークスアプリケーションズの固定資産管理システム「HUE Asset」は、リースと不動産の会計処理に必要な専門的な機能を網羅している。

 HUE Assetについて詳しく知りたい読者は、こちらの記事「新リース会計基準にいち早く対応! 『HUE Asset』の魅力を徹底解説」を参考にしてほしい。藤原氏に、システム導入時に検討すべき3つのポイントを解説してもらっている。

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