期末ギリギリまで売上着地を予測できない企業は危ない! 営業のブラックボックス化を防ぐために経営層が考えるべきことは?

» 2024年02月15日 10時00分 公開
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 先行きが不透明なVUCA時代とも呼ばれる昨今、DXや組織改革といったお題目の下で各社はさまざまなツールを導入している。特に企業活動の根幹とも言える営業部門では、コロナ禍以降に組織の在り方を見直したり、商談のデジタル化を中心としたプロセスを刷新したりする流れが目立つ。一方で、気合を入れてSFAツールを導入したものの活用し切れていないなど、本来の目的を達成できずもがいているという企業もあるのではないだろうか。

 そこで今回は、営業やマーケティングといった組織を横断して売り上げや利益の最大化を目指す取り組み「Revenue Operations(レベニューオペレーションズ 以下、Rev Ops)」に詳しいウイングアーク1stの久我温紀氏(執行役員 マーケティング本部 本部長)に取材した。先行きが見通せない時代でも成長を続けていくための経営層の在り方や、営業部門との関係性について解説する。

「期末でギリギリ目標達成」で喜んではいけない

 4年ほど経過して、ようやくコロナ禍が落ち着きを見せようとしている。ここ数年のビジネスを眺めてきた久我氏は、特にコロナ禍が営業部門に与えた影響について「オンライン化やデジタル化が強制的に進み、当たり前になりました。それによって生産性を高めることに成功した組織が出てきたと感じています」と話す。

 これまで経営層にとって「ブラックボックス」になりがちだった営業部門の実態が、セールステックやマーテックなどのIT技術の進歩やプロセスマネジメントの浸透によりようやく理解できるようになりつつあるとも指摘する。これまで日本企業は月次や四半期の予算に対する進捗(しんちょく)を、あくまで現状の結果だけを見て議論しがちだったという。

 そのため、プロセスを追いながら計画的に予算にアプローチするのではなく、月の後半や四半期の終盤になって帳尻を合わせるケースも多い。年度の最終四半期や最終月に売り上げを何とか創出して目標を達成した経験がある読者も多いだろう。

 こうした風潮を助長していたものとして、久我氏は「営業あるある」を挙げる。

ウイングアーク1st久我温紀氏(執行役員 マーケティング本部 本部長)。創業時から事業に参画。法人向けソフトウェアのアカウントセールスとして5期連続トップセールスを達成し、マネジャーに最年少で就任。成績不振の営業部門の再建に関わり全部門予算達成を実現し、過去最大の事業成長をけん引する。2016年に営業統括責任者に就任。17年に経営戦略担当を兼任し、18年からマーケティング統括責任者。19年9月から現職。セールス&レベニューエヴァンジェリストとして、メディアへの寄稿や講演などを行う。

 「営業は予算を低く設定したがるものです。経営層から『55億円』という目標が下りてきたときに『いやいや、それはちょっと難しいので50億円が現実的です』などと保険を考えて返すことがあります。にもかかわらず、最終的には当初の55億円を少し上回る成果を出し、『何とか達成しました!』と自部門の努力を示す。そんな場面がよくあります。55億円の数値をどのように達成するかという考え方よりも、可能な範囲で目標値を低く設定することの安心感が勝るのだと思います」

 ギリギリで何とか達成した営業が称賛されることもある日本だが、このような取り組み方はプロセスをしっかりと追い掛ける「マネジメント方式」が浸透している企業では白い目で見られがちだという。なぜならば、本来予算を大きく達成できたのであれば、期初からもっと計画的に取り組むことで業務負荷や工数を平準化し、より適切なタイミングで将来の成長に向けた投資や人員配置もできたはずだからだ。

 また、早期に予算未達成の予測をプロセスマネジメントにより客観的事実や過去実績からできるのであれば、適切な対処ができるはずだ。「こうした動きは、経営のための重要な意思決定の機会を失ってしまうもの」と久我氏は強い口調で警鐘を鳴らす。

状態把握のために必要とされるプロセスマネジメントの理想的なサイクル

 米国の先進企業を追い掛ける形でSFAツールを導入する企業は多いが、こちらも注意が必要だ。久我氏が営業に関する相談を受けたある有名企業はSFAツールを日報程度にしか活用できておらず、本来の目的である営業状況の可視化や営業活動の情報資産化、営業プロセスの最適化によるパフォーマンス向上ではなく、導入自体が目的化してしまっていたという。

 「日本企業の多くの営業部門は欧米のベストプラクティス企業と比べ、生産性に大幅な差があると指摘されています。SFAなどのITツールを入れることで何を改善したいのか。この点に関する経営、マネジメント層の理解が及んでいない、または危機感はあるが具体的な浸透に苦労しているケースが多いと感じます」

 コロナ禍で進んだインサイドセールス部門を整備しようとする動きも同様だ。対面営業ができなくなったことから、インサイドセールスの導入に踏み切る企業が目立った印象もある。しかし導入後も営業組織の機能的な役割に変化はなく、インサイドセールスならではの組織機能を導入して収益機能全体をアップデートする“本来の狙い”を見失っていることが多い。

まず取り組むべきは「型化」 収益の生産ラインを作るべし

 SFAやMAなどのツールの導入や、マーケティングやインサイドセールスの組織整備など、営業に関する施策は突き詰めると企業の売り上げや利益を向上させることを目的としたものだと言える。しかし、それらは各部門が個別最適に取り組んだだけでは成果を最大化できない。

 こうした考えから、企業内のマーケティングやカスタマーサクセス、インサイドセールス、そしてフィールドセールスなどの組織を横断して売り上げや利益を最大化する取り組みであるRev Opsに注目が集まっている。

 従来のオペレーションでは、各部門がそれぞれ独自の目標とプロセスを持っていることが多かったのに対し、Rev Opsは部門横断で全員の焦点を顧客に合わせ、顧客提供価値と全体収益の最大化を目指していく。

 Rev Opsでまず重要なのが、最先端のツールを導入することではなく「型」を作ることだ。先ほどブラックボックスの例にも触れたが、営業の型化=プロセスの標準化に苦労している企業はまだ多い。商談のフェーズを進めるために顧客と酒席を設ける営業メンバーもいれば、足を運んで接点を増やすことが重要だと考えるメンバーもいるだろう。それが収益最大化のためのプロセスになっている事が重要だ。

 究極的には、成果が達成できるなら投資は少ない方がよい。収益が最大化するのであれば経営として実行できる選択肢は増えるからだ。顧客への提供価値を高めるための製品やサービス開発に投資することも、社員やステークホルダーへ還元することもできる。

 各メンバーが自身のポリシーに沿って活動してしまうと、どのような行動が売り上げにつながるかの再現性を得にくい。逆に、組織全体として勝率が高まる動き方を標準化し、各自が決まった動きをしていけば定量的にデータの比較ができるようになる。

 データの蓄積量を増やせば、成功と失敗の再現性は高まる。営業が強い企業として知られるキーエンスの営業経験者に久我氏が話を聞いた際、同社のすごさは「営業の型を全員が知恵を絞り出して作り、自身で細かくチューニングしていること」だと感じたという。

 「どこまで厳格な型を定めるかは組織によるものとして、標準化された『営業の生産ライン』を作ることは重要だと考えています。工場は生産ラインを設け、同じものを標準化した工程で作ることによって、ボトルネックがあればすぐに特定できるようにしています。工場には機械の導入や再整備に多大なコストがかかりますが、営業組織の主な原資は『人』です。それが故に難しい点はありますが、生産ラインを構築し改善を続けることは容易にできるはずです」

作った型を観察し、PDCAを高速で回す

 型を作る上でも作った上でも必要となるのが「観察」だ。

 「経営層が営業部門などの現状を観察し、状態を把握することもRev Opsにおいて非常に重要です。意外とこの部分ができていない企業は多いと感じています。営業、マーケティング、インサイドセールスなどの活動がどのような結果に結び付いているのか経営層が理解できないのは、現場が透明化していないからです。

 企業の経営戦略は、シンプルに表現すればA地点からB地点に行くための道筋を明らかにするものです。中期経営計画はあくまで特定の指標を基にした計画であり、それらをどのように実現するのか、実行可能な計画を経営層は描く必要があるのです。そのためには、自組織の現在の状態が分かっていないと何もできませんよね」

経営層は企業の現在地を知り、次の地点へ行くための道筋を明らかにする必要がある

 現状を観察すれば、どのような活動がどんなアウトプットにつながっているのかが見えるようになる。それによって、適切な人員配置や投資計画など、さらなる成長に向けた計画も描けるはずだ。デジタルツールと組み合わせれば、膨大な組織の活動情報をリアルタイムに把握できるようになり「勝率を上げるためのマネジメントができるようになる」と久我氏は語る。

 Rev Opsの推進において、経営層の役割は重要性が非常に高い。フィールドセールスを中心とした各部門は、ミッションに向き合う中で自組織内のミッションや業務に視界が狭まって個別最適に走りやすいからだ。経営層が全体の結び付きを強め、各組織のデータを横断的に取得して戦略を練っていくことが求められる。その意味で、Rev Opsを先導する役割として「CRO(Chief Revenue Officer)」といったポジションを設ける企業が日本国内でも出始めている。

 「フィールドセールスが何かを議論する際はフィールドセールスが、マーケティングの場合は同じくマーケティングといった形で、自部門が主語になってしまうものです。そんなときに、一歩引いた立場で全体図を眺めて組織間の関係性を示せる立ち位置は非常に重要です」

採用や定着にも効果的! Rev Opsはメリットだらけ

 日本国内でもRev Opsが認知され始めている。収益に関わる部門は特に人員が多い傾向にあり、収益性向上の取り組みによってもたらされるインパクトも非常に大きいと久我氏は期待を寄せる。

 売り上げや利益といった直接的なもの以外に、Rev Opsに取り組むことによる副次的な効果もありそうだ。久我氏はいくつかの考えられるメリットを挙げる。

 「テクノロジーの導入や活用による企業の競争力の格差は今後も拡大することが想定されます。昨今話題になっている生成AIの導入効果を高めるには教師データの質と量が重要で、営業やマーケティング活動などで蓄積されたデータの準備が大前提となります。

 人的資本の重要性が叫ばれ、採用コストやリスキリングによる教育コストの増加、人材の流動性の高まりによる離職も企業の大きな課題となっています。Rev Opsの一環として型化に取り組むことでナレッジやノウハウを蓄積でき、新たな人材を採用した際の組織的な再現性や教育コストの低下も見込めるのではないでしょうか。

 加えて、特にこれからビジネスの中心となる20〜30代はキャリア意識が高く、従来のような根性論による組織よりも科学的な戦略のある組織を求めるはずです。Rev Opsに取り組む企業が増えていくことを願っています」

Theレベニュー会議

 ウイングアーク1stが開催しているセッションシリーズ「Theレベニュー会議」。久我氏がさまざまなゲストを迎え、収益に直接関与する成果や投資を部門横断で連携し、全体収益の最大化を目指すRev Opsについて探究する。2022年に始動した本セッションシリーズはこれまでに、営業やマーケティング、経営企画、営業企画部門の担当者など1500人以上が視聴し、満足度は95%を超える。

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提供:ウイングアーク1st株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年3月15日