シチズン時計は150TBものデータをクラウドにどう移行したのか? 選定から移行作業、運用まで情シスの挑戦の裏側に迫る

» 2024年03月04日 10時00分 公開
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 日本を代表する時計メーカーであるシチズン時計は、旧来のファイル管理に大きな課題を感じていた。拠点ごとに一般的なファイルサーバを運用していたが、台数も多く、日々のメンテナンスや定期的な更新にかかる管理負荷の肥大化が顕著になっていたのだ。またデータの増大も著しく、更改時のサイジングも困難になっていた。

 ITインフラのクラウド化を進めていた同社は、ファイル管理についてもオンプレミスのサーバからクラウドへの移行を検討していた。クラウドストレージは外資系企業のサービスが有名だが、それらは移行の手間や管理の負荷に加えて、従業員にとって操作性が大きく変わると判断した。最終的に、大規模環境での実績が豊富な国産クラウドストレージサービス「Fileforce」を選択し、まず東京本社のファイルサーバをクラウドに移行した。

 シチズン時計は、ファイル管理のクラウド化にあたってなぜFileforceを選んだのか。シチズン時計と同グループのIT環境を支える担当者に、詳しい話を聞いた。

世界的な時計メーカーが抱えるファイル管理の悩み

 1918年、スイスやアメリカで技術を学んだ山崎亀吉氏が、シチズン時計の前身となる尚工舎時計研究所を設立。1924年に発売した懐中時計「CITIZEN」が、日本を代表する時計ブランドの始まりだった。1930年にシチズン時計が設立され、現代に至るまで長年培ってきた技術を生かした時計部品の工作機械、小型精密加工部品、電子機器、電子デバイス、自動車部品などを手掛けている。

※「崎」は、正しくはつくりが「立」に「可」の“たつさき”

 同社は2023年に中期経営計画「シチズングループビジョン2030」を策定し、“豊かな未来(とき)をつなぐ、Crafting a new tomorrow”を新たなビジョンとして掲げて、従来の「安心」と「信頼」に加えて「感動」を目指すとした。人々の心の豊かさを次世代につなげたいという思いだ。

ALT シチズン時計 情報システム部 IT環境課 担当課長 増田洋氏

 「このグループビジョンで、大項目としてデジタルトランスフォーメーションを挙げており、業務や製品、サービス、企業風土の変革を推進する計画です。もともと課題があったファイル管理についても、業務変革の一環としてより良く働ける環境整備のために取り組んでいます」と、移行プロジェクトを主導したシチズン時計 情報システム部 IT環境課 担当課長 増田洋氏は述べる。

 シチズン時計は製造業という特性上、多種多様なファイルを扱う。一般的なオフィスドキュメントはもちろん、設計や製造に用いる図面や管理表などさまざまだ。これまでは一般的なファイルサーバを各拠点に設置してDFS(Distributed File System:分散ファイルシステム)技術で抽象化し、共有ドライブとしてそれら大量のファイルを管理していた。

 シチズン時計の各拠点で個々にファイルサーバを運用しているため、その運用管理は煩雑だ。トラブル対応やメンテナンスにも時間がかかり、5年ごとの老朽化更新にはデータ移行や切り替えスケジュールの調整など大きな負荷がかかっていた。

ALT シチズン時計 情報システム部 IT環境課 黒瀬大輔氏

 「データの肥大化も顕著でした。設計や製造に関わるデータはできるだけ消したくないですし、その他のデータも重要なものばかりです。従業員に『不要なファイルは削除してほしい』と定期的に案内していましたが当然減りません。図面などもあるのでこちらから削除対象のファイルを指定することもできず、容量はどんどん増えていきました。5年先を見据えたとき、オンプレミスのまま運用を続けるなら大きなサイズを用意し直さなければなりません。

 一方で、この3年ほどは全社の方針としてクラウドシフトを重点テーマとして掲げていることから、拠点間のデータ移動や外部との連携についてもクラウドを活用して効率化する必要があります。そこで、更改に合わせてファイルサーバもクラウド化することを決めました」と、同課の黒瀬大輔氏は振り返る。

シチズンにフィットした国産クラウドストレージ

 ファイル管理のクラウド化を目指したシチズン時計は、多様なクラウドサービスの調査や検討を実施した。クラウドストレージサービスと一口に言ってもさまざまな種類があり、機能、性能も多様だ。

 クラウドストレージの選定をリードした同課 西村光洋氏は、当初はパートナーであるITベンダーの勧めもあって著名なグローバルサービスを中心に調査していたが、シチズン時計のニーズにマッチしないのではないかと考えるようになった。

ALT シチズン時計 情報システム部 IT環境課 西村光洋氏

「一般的なクラウドストレージサービスは、ユーザーアカウントにひも付いた運用がメインで、従来のファイルサーバと使い勝手が大きく変わってしまいます。この変化によって従業員に負担を強いてしまうことが大きな問題だと感じました。

 また、あるグローバルサービスでは、データ移行に3年かかると試算されたり、移行や運用のサポートが不十分だったりと、管理負荷が増大する懸念もありました。他のシステムで利用しているIaaS上にファイルサーバを構築する手法も考えたのですが、やはり実現は難しいと判断しました」(西村氏)

 再検討を余儀なくされた西村氏は、サービス探しから再出発した。そんなとき、ファイルフォースが提供する「Fileforce」に巡り会った。国産クラウドストレージサービスとして知られており、手厚いサービスがポイントの一つだ。話を聞いてみると、運用設計やデータ移行などの計画当初からサポートして、日本企業の細かな要件にも柔軟に対応してくれるという。何より西村氏は、オンプレミスのファイルサーバと同じように利用でき、従業員に強いる変化を最小限にとどめられるという点に注目した。

 「ファイルフォースは、最初のテスト運用や運用設計から導入、設定、データの移行、運用開始後のフォローまで私たちに伴走して手厚いサポートを提供してくれました。私たちのニーズに合わせて、適した設計や設定をアドバイスしてくれましたし、個別のわがままにも柔軟に対応していただきました。

 データ移行の際もしっかり技術支援を提供してくれて、移行ツールの性能も良かったですし、短期間で作業をスムーズに完遂できました。移行にかかった期間は、テスト環境の用意から実作業完了まで約1年ほどです。実はローンチ直後に幾つかトラブルが発生したのですが、ファイルフォースが真摯(しんし)かつ迅速に対応してくれたので大きな問題に発展することもなく、現在は順調に運用できています」(西村氏)

従業員は「移行に気付いていない」 管理負担の軽減にも成功

 Fileforceはファイルサーバと変わらないUIでエクスプローラーからクラウド上のファイルを操作できるアプリケーション「Fileforce Drive」を備えている。移行後の運用フェーズについては、管理者目線でもユーザーである従業員目線でもこれまでとほぼ同様の使い勝手が実現できていると増田氏らは評価する。

photo Windowsのエクスプローラーから使えるFileforce Drive

 「シチズン時計の従業員は、ファイルサーバがクラウドで稼働していることを意識していないと思います。それほど使い勝手がほぼ変わっていないということです」と増田氏は話す。

ALT シチズン時計 情報システム部 IT環境課 外崎敦史氏

 一方で従業員が変化に気付いた点もある。

 「テレワークの際は、VPNに接続して社内のファイルサーバにアクセスする必要があったのですが、移行後は不要になりました。また、以前よりも社外からのアクセスが若干速くなったと国内と海外駐在中の従業員からも評価が高いです」と同課の外崎敦史氏は言う。

 また、外部のパートナー企業とのファイル共有方法も変わったという。

 「これまでパートナー企業とファイルを共有する際の保存先はオンプレミスのサーバにあったのですが、あまり使い勝手が良くありませんでした。今後はFileforceで外部連携用にプロジェクト共有フォルダを作る形で運用できるように環境を整え、活用したいという構想もあります」(増田氏)

 管理者としては、当初の目標通り運用管理の手間を削減できたことも大きなメリットだ。

 「従来はファイルのアクセスログを取るのに別のサーバとシステムを用意して監視していました。アクセスログサーバの管理者が違うため、いざログを見ようとすると担当者に依頼する必要があって、管理者同士で負担を感じていました。今はFileforceで一括管理できるので、トラブルなどにも素早く対応できるようになりました」(外崎氏)

 導入後に標準機能として追加された「ランサムウェア対策機能」についても高く評価している。これはファイルを狙うランサムウェアに対して予防、検知、復旧の3段階の機能を提供するものだ。

 「オンプレミスのサーバでは対応できなかった脅威を防げるため、安心して使えます。他にもセキュリティ対策の面では、クラウド移行に合わせて全ユーザーのアクセス権の棚卸しや見直しを図ることもできました。全従業員が見られるファイルについてはアクセス権をいったん全て削除して、移行後に本当に必要ならばアクセス権を付与してくださいというアナウンスをしました」(増田氏)

 外資系のクラウドストレージの中には権限を細かく付与できないものもあるが、Fileforceは組織や個人単位で柔軟に設定ができるため、こうした対応が可能だった。

 シチズン時計は現時点で、東京本社にある約150TBのデータの移行を完了している。システムの制約などで移行できなかったファイルがわずかに存在するものの、目標の達成率は100%に近いと増田氏らは評価している。

 「今後はグループ各社への展開を検討していきたいと考えています。シチズン時計は、ノンコア業務をできるだけ削減して効率化する取り組みを推進しています。私たち情報システム部門もFileforceでファイル管理に関する定常業務が軽減し、創造的な業務に時間を充てられると感じています。

 Fileforceはランサムウェア対策にも対応していますし、管理者向け機能もどんどん強化されると聞いています。現在の手厚いサポートを維持しつつ、さらに良いサービスへと進化していくことを期待しています」(増田氏)

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提供:ファイルフォース株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年3月20日