パーソルHD、購買改革に本腰 「40項目×2段階評価で検討」→新システム導入の全記録

PR/ITmedia
» 2025年09月17日 10時00分 公開
PR

 「はたらいて、笑おう」――こんなグループビジョンを掲げ、転職サービス「doda」や人材派遣サービス「テンプスタッフ」などを運営するパーソルホールディングス(以下、パーソル)。同社の購買担当者は、ある課題を抱えていた。

 パーソルは、2008年の創業から急成長を遂げ、グループ企業148社を抱えるまでに成長。人材サービス業という特性から集中購買のための組織は作らず、間接材の購買業務はグループ各社に任せ、PCや消耗品など一部の品目をホールディングスの総務部が取り扱う体制だった。購買プロセスを企業ごとに最適化できていた一方で、業務効率化やコスト最適化の点で改善の余地があった。

 コンプライアンスを徹底する観点からも、購買改革で得られる成果が大きいと見込んだパーソルは、改革に本腰を入れるため、2023年に総務購買本部を設置。同社の大橋和彦氏は「グループ全体でデータ経営にシフトするという方針の下、総務購買本部として『何をすべきか』という議論から始めました」と説明する。

 2023年10月、購買改革プロジェクトが始動。その取り組みは、購買システムの導入によって課題解決へと結実する。

photo パーソルホールディングスの大橋和彦氏(グループ総務購買本部 総務購買企画部)

「購買の実態把握が困難」 巨大組織のコストが見えにくい状況だった

 「製造業のように高額な設備投資やレンタル契約は少ないため、購買に関わる統一された組織、ルール、システムを持たずにグループ各社が管理、運用しており、管理工数が重複していたことも課題でした。データ経営に注力するに当たり、データの形式や分類の粒度をそろえる必要もあります。これらを改善するというのもプロジェクトの狙いです」

 上場企業ということもあり社内の決裁規定や承認フローは整備されていたが、購買に関しては「グループの足並みに乱れがありました」と大橋氏は明かす。間接材の仕入れ先であるサプライヤーとのやりとりはメールが中心で、ECサイトを利用する「カタログ購買」についてもグループ各社が独自に契約していた。

 現場の従業員にとっては、「メールでのやりとりが大変」「相見積もりをしたいが、どのサプライヤーに頼めばいいか分からない」といった点が悩みの種だった。煩雑な手続きを避けていつも同じサプライヤーに発注することで、より安価に購買できる機会を逃していた可能性もある。

 サプライヤーへの連絡・依頼は現場の従業員に任せていたが、法律のプロではないため下請法に違反するリスクを排除できなかった。これはガバナンスの観点で大きな問題点だ。

 パーソルの購買担当者にとっては、グループ全体の購買管理に割く工数が課題だった。ECサイトのアカウント管理や支払い処理は各社が対応し、その全体の管理をパーソルが担う。グループ規模を踏まえれば、その手間は想像に難くない。

 経営層からデータ経営の推進を指示されていたが、購買データがグループ各社に散在しており、発注実績などを集めるのに時間がかかっていた。大橋氏は次のように打ち明ける。

 「『どの領域でコスト削減の余地があるか』『調達プロセスに課題がないか』など、購買の実態を把握するのが困難な状況でした」

40項目のチェックシート×2段階の評価で購買システムを選定

 パーソルグループが抱える課題の解決策として、総務購買本部は購買管理システムの導入を決めた。発注をシステム化することでミスを防げる上に、グループ各社のアカウントや購買データを同本部が一元管理できるため管理工数の削減とガバナンスの強化を両立させられると見込んだためだ。大橋氏は「統制強化やデータ経営を早期に実現する方法を考えた結果です」と言い、複数のカタログサービスを横断検索して比較しやすくなる点にも魅力を感じたという。

 「横断検索を取り入れるだけで購買総額を5〜10%圧縮できるという試算があります。パーソルグループ専用の割引価格を反映した自社カタログを組み込むことで、コストの削減につながると期待しました」

 購買システムの導入は、次のフェーズに分けられる。

(1)企画・選定フェーズ:購買改革の方向性や利用システムの要件を検討
(2)導入・定着フェーズ:購買管理システムを導入、運用
(3)改善・維持フェーズ:効果を高めるための取り組みを推進

 パーソルは、2023年10月に購買改革プロジェクトを立ち上げ、改革の方向性を決める工程に着手。その後、ソリューションの調査と比較をして候補をふるいにかけていき、2024年の7月ごろからRFP(提案依頼書)をベンダーに送って検討を重ねた。

 「順風満帆に進んだわけではありません。当社内の検討が不十分だった部分もあり、ベンダーからの質問に答えることで要件が明確になっていきました。『このケースではこんな事例がある』といった具体例を教えていただき、アカウント管理やマスター登録の方法などを検討するのに非常に参考になりました」

 選定に当たって重視したのが「機能」だ。「カタログ購買の横断検索」「自社カタログの追加」「見積もり・発注・検収の法令対応」「購買業務になじみがない従業員でも使える操作性」「アカウントやマスターの管理」「自社システムとの連携」――こうした機能を一つ一つ確認していった。電子帳簿保存法など新たな変化へのシステム対応状況も、検討内容に挙がっていたという。

 大橋氏らは候補を絞り込むために、2段階の評価方法を取り入れた。「評価シート」を使って100点満点で評価する一次評価と、ベンダーのプレゼンを基に判断する二次評価だ。

photo パーソルの評価方法(提供:パーソル)《クリックで拡大》

 評価シートの項目は、前述した機能要件や非機能要件にとどまらない。アップデートや開発ロードマップに基づく「システム老朽化防止」の観点、製品の導入実績、プロジェクト理解といった全40項目を0〜5点で採点。表計算ソフトでA社、B社、C社と一覧で比較できるようにした。

 「導入コスト、運用コスト、追加開発のコストなどを考慮して費用対効果を比較しました。『安くても運用開始が再来年になる』となると私たちの要望に合わないため、導入スケジュールも重視した点です」

 機能、コスト、導入スケジュール――3つの軸で総合的に評価し、重要な項目に重み付けしながら客観的、機械的に採点した結果、合計点が最も高かったのがSB C&Sの間接材購買システム「パーチェスワンクラウド」だった。

「業務をほぼ変えずにやりたいことを実現」 購買システム導入の一部始終

 SB C&SはソフトバンクのIT流通事業を祖業とし、購買支援サービス「パーチェスワン」を通して年間100万件以上の購買関連実務に対応している。パーチェスワンクラウドは、同社が提供するSaaS型の間接材購買システムだ。国産システムであり、日本企業ならではの商習慣や法規制への対応に強みを持っている。

 「システム導入を検討する際、『内製する』『既製品を使う』という2択になります。私たちが手をかけなくてもシステムが進化してくれる点、法対応やセキュリティ対応も利用料に含まれている点などを考慮し、SaaSを選びました。その中でパーチェスワンクラウドを選んだのは、機能評価が高かったことに加え、今後の機能アップデートや法改正への対応に期待できたからです」

 パーソルは、2025年4月にパーチェスワンクラウドの導入作業に着手。「この品目は表示しない」などカタログの制御、従業員アカウントの管理方法の策定、ログイン時のシングルサインオンの設定といった細かい作業が中心だったという。SB C&Sが「AとBを決めてください」と作業内容を提示し、「Aはどうすればいいですか?」「Bはこれでお願いします」といったやりとりを毎週のように重ねたと大橋氏は振り返る。

 7月にリリース準備を終え、セキュリティチェックを終えた8月に運用を開始した。大橋氏は「RFPの段階で最も早い導入スケジュールをご提示してくださったのがSB C&Sでした。その言葉に偽りはありませんでした」と評価する。

 短期間で導入できた背景には、パーチェスワンクラウドの柔軟性の高さがある。SaaSを導入する場合、システムに合わせて業務を変えるケースが多い。しかしパーチェスワンクラウドは企業の事情に合わせてカスタマイズできるため、「業務をほぼ変えずにやりたいことを実現できました。既存のカタログ購買システムから変わったことと言えば、発注時のログイン先と承認フローくらいです」と大橋氏は語る。

 従来のカタログ購買における承認フローは二段階しか設定できず、高額な買い物の場合は別の稟議(りんぎ)システムで承認を得てから購入するルールだった。パーチェスワンクラウドは承認フローを10段階まで組めるため、全て同システム内で完結させられる。カタログの横断検索や操作性の高さなど社内の評判も良いそうだ。

 SB C&Sとパーソルの密な連携も、早期導入に一役買っている。発足したばかりの総務購買本部にとって、SB C&Sの支援は心強いものだった。要件の擦り合わせ時に事例などの参考情報の共有を受けた。データ経営の根幹となるマスターデータの設計やユーザーの権限設定といった複雑な部分については、両社で膝を突き合わせて共に作り上げていった。

購買システムの導入、その先へ 「ここからが本番」

 パーソルの購買改革プロジェクトが成功した理由として、大橋氏はIT部門が最初から参画していたことを挙げる。「購買部門だけで取り組んで社内導入時につまずく」という失敗例が起こりがちだが、総務購買本部とIT部門が両輪で動いたことでトラブルなくプロジェクトを推進できた。進度に合わせて経営管理、財務経理、法務、人事といった関連部署も巻き込みながら、リリースにこぎ着けられた。

 パーソルは現在、パーチェスワンクラウドのカタログ購買機能を中心に利用している。今後は見積・発注機能を整備して、グループ全社に展開する構えだ。その先には、データ経営の実現を見据えている。

 「大きな購買組織による集中購買で管理するのではなく、パーチェスワンクラウドをフル活用することで業務効率化、コスト削減、統制強化を目指します。さらに、蓄積したデータを生かしたデータマネジメントによって適切な購買統制を実現するために取り組んでいます」

 購買専門組織ゼロから始まったパーソルの購買改革。SB C&Sの支援を受けながら、パーソル社内での購買改革に道筋を付けた。しかし、改革がこれで終わるわけではない。機能の拡充、社内での定着、グループ企業への展開など取り組むべきことがある中で、大橋氏は「ここからが本番です」と笑顔を見せた。

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:SB C&S株式会社、パーソルホールディングス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年10月12日