「LCCはただ低コストなだけじゃない」 ピーチ流のユニークな働き方とは?:LCC“ピーチ流”の働き方(1/3 ページ)
「FAXはいらない」「備品はネットオークションでの購入もOK」――国内初の本格LCC(格安航空会社)として知られるPeach Aviationがコスト削減と顧客満足度向上の両立をすべく、実践しているユニークな働き方を紹介しよう。
国内初の本格LCC(格安航空会社)として知られるPeach Aviation(以下、ピーチ)。同社は2011年2月に約20人のメンバーで事業をスタートし、2012年3月の初就航時には約200人の規模にまで拡大。関西国際空港を拠点に、現在も徐々にその規模を拡大している。
この成長の裏にあるのが、設立時より掲げている“ピーチ流”の働き方だ。LCCというと「運賃の安さ=あらゆる面でのコスト削減」の印象があるが、ピーチの場合は単純なコスト削減ではなく、同時に「シンプル」「内製」「楽しく」をキーワードとしたワークスタイルを取っている。
スタッフのパフォーマンス向上とコスト管理を両立
ではピーチ流の働き方とは一体どういうものなのか。ピーチでは国内初のLCCとしてスタートするに当たり「どうコスト削減をしながら顧客に対してよりよい商品、運賃を提供できるか」をビジネスモデルとした。そこで行き着いたのが、次のような考え方だ。
- シンプルにいこう
シンプルに仕事をすると、当然それに掛かるコストや仕組みは分かりやすくなる。結果として早く対応できる。
- 内製化しよう
業務をシンプルにしていくと、従来の会社であれば外部委託していたような業務も内部に取り込める。そしてそれがコストに直結する。
- 楽しくやろう
通常の会社とは異なる働き方をすることで楽しむ。結果としてLCCだからできたというようにスタッフのパフォーマンス(モチベーション)が上がる。
ピーチの野村泰一部長(人事・イノベーション統括本部イノベーション統括部)は、「コスト削減というとオフィスの照明を減らしたり最小限の環境で働くなど暗いイメージを持つかもしれないが、そんなことはない」と話しながら「実際、ここ(オフィスの様子)を見てみてください。そんな雰囲気はないですよね」と紹介した。
「私は社内の『チャーシュー部』の部長でもあり、小さい部屋でチャーシューを作ってみんなで食べるという活動をしているが、それもピーチのビジネスモデルと一緒。要は本格的チャーシューは素人には作れないけれど、手順をシンプルにすることで内製化できるところはする。そして完成したものは本格的チャーシューとは違うけど、そこそこおいしい。ピーチのビジネスモデルをチャーシューで実践するという感じ」(野村部長)
ピーチのビジネスモデルを実現する6つの実践
ピーチ流の働き方でいかに低コストで効率的な働き方をするか。現在実施している6つのことがヒントになりそうだ。
- クラウド活用+無線LANでオフィス内をフリーアドレス制にすることで、いつでもどこでも働ける環境作り
- PCは全員ノート型にすることで、ペーパーレス会議や、動いて対面のコミュニケーションを取りやすくする
- FAX廃止、自由席(袖机なし)によるレガシーな働き方を生む産物の排除
- イントラネット内のポータルサイトを構築。そこで情報共有したり、『MOMOYA』と呼ぶIT機器を含めた社内物品の貸し出しページを使って社内物品を部署ごと所有せずにレンタル制にする
- 中古物品の利用や社員からの寄付、ネットオークションの利用など、オフィス用品は基本的に正規ルートではなくユニークな“買い方”をする
- チェックイン機(発券機)など、自分たちでできるものは自作する
1〜4は働く環境作りを追及した上で実践していること。5、6は楽しみながらコスト削減をするという発想から生まれたものだ。
PCは絶対にノート型
まず働く環境については、少ない人数で複数の仕事をこなすために、1人1人が常に最高のパフォーマンスに近い状態になれる環境作りを目指した。つまり、クラウドの活用と無線LAN技術によっていつでもどこでも仕事ができる環境にすることで、各自のアイドルタイムがなくし、すき間時間でも仕事ができるようにしたというわけだ。
社内PCは「絶対にノート」だと決めていた。野村部長が考えるレガシーな企業スタイルは「各自決まった机で、情報は個人のPCの中や印刷してファイルに入れてキャビネットなどで管理。そして会議の時は資料を印刷して紙で複数人に配る」というもの。
「ピーチの場合は情報はクラウド上に保管しており、どこからでも情報にアクセスできる。共有データもアップデート情報も含めて分かるので、もちろん紙で配り直す必要もないし、紙のようにうっかりなくしてしまう心配もない」。ピーチ流の情報管理スタイルである。
「ノートPCであれば、どこにいても机の上と同じ状況をその場で広げられる。つまり、情報を1点に集中できる。加えて、これはLCCのモデルと言えるが、スタッフを1つの拠点に集中することで、対面のコミュニケーションを増やせる。物事を決めるにしても相談するにしても、やはり一番いいのは人と人とが会って話すこと。逆に言うと、そういう環境を作ることがピーチらしく、意思決定の速い進め方になると思っている」(野村部長)
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