地方の観光地を衰退させたのは誰か:水曜インタビュー劇場(観光公演)(1/6 ページ)
海はキレい、山はキレい、でも街が汚い……。有名な観光地でも、老朽化した建物が並んでいるところが日本中にある。政府は「観光立国」を目指すというが、寂れた風景を見るために外国人観光客はやって来るのだろうか。
水曜インタビュー劇場(観光公演):
日本の人口減に歯止めがかからない。国立社会保障・人口問題研究所によると、2026年に日本の人口は1億2000万人を下回り、その後も減少を続けるという。
未婚の男女が増えて出生率が下がっている中で、少子化対策だけで激減を止めることは難しい。海外から移民を受け入れるべきだという意見もあるが、まだまだ抵抗感を覚える人も多い。
まさに八方ふさがりといった感じだが、人口を増やす方法はあるのだろうか。「人口減少を補うほど多くの外国人観光客を受け入れる、つまり日本が『観光立国』の道を歩むしかない」と語るのは、国宝などの文化財を修繕する「小西美術工藝社」のデービッド・アトキンソン社長だ。彼が語る「観光立国」とは、どういったものなのか。ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則が聞いた。
→日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません(前編)
→訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか(中編)
→本記事、後編)
土肥: 日本の人口減に歯止めがかかりません。出生率を上げるのは難しいし、外国から移民を受ける入れるのも簡単ではありません。ではどうすればいいのか。アトキンソンさんは「外国人観光客を積極的に受け入れるべき」と強調されていますが、日本はどーもズレている。
わざわざお金と時間をかけて、日本のマンホールや自販機を見に来る人は少ない。政府は「おもてなし」戦略を打ち出していますが、礼儀やマナーを体験するためにどのくらいの人がやって来るのか。やって来ても、ビジネスとしてなかなか成立しにくいといった話をされました。
ピントがズレているといえば、観光地の近くに「なんでこんなモノがあるの?」と感じることがあるんですよ。例えば、有名な神社・寺の近くに、地元の人しか利用しない電気屋さんがあったり。その場所においしいカフェがあって、観光客が「また食べに行きたいなあ」となればリピーターがどんどん増えるはずなのに。このような“機会損失”をしているところが日本全国にあるように感じるのですが。
アトキンソン: 地元住民の声を重視するのは大切ですが、住んでいる人の理屈だけで街が設計されていますよね。なぜ街がそのような形になるかというと、これまで外国人観光客の声を聞いてこなかったからではないでしょうか。いや、ひょっとしたら日本人観光客の声すらあまり聞いてこなかったのかもしれません。であれば、そのような一等地に地元の人しか利用しない電気屋さんはできませんから。要するに、観光地として何が必要なのか。何をしなければいけないのか。そうしたことをやろうとしない、という問題がありますね。
あとは「利権」の問題がからんでいるんですよ。
土肥: なんだか物騒な話になってきましたね(苦笑)。
プロフィール:デービッド・アトキンソン
元ゴールドマン・サックス金融調査室長。小西美術工藝社社長。1965年、英国生まれ。オックスフォード大学にて「日本学」専攻。アンダーセン・コンサルティング、ソロモン・ブラザーズを経て、1992年にゴールドマン・サックス入社。2006年に同社partner(共同出資者)となるが、2007年に退社。同社での活動中、1999年に裏千家に入門。2006年には茶名「宗真」を拝受。2009年、小西美術工藝社に入社、取締役に就任。
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