地方の観光地を衰退させたのは誰か:水曜インタビュー劇場(観光公演)(6/6 ページ)
海はキレい、山はキレい、でも街が汚い……。有名な観光地でも、老朽化した建物が並んでいるところが日本中にある。政府は「観光立国」を目指すというが、寂れた風景を見るために外国人観光客はやって来るのだろうか。
外国人観光客が増えなかった理由
アトキンソン: マイナス面ばかりを語ってきましたが、「面倒」を避けることでプラスの面も生まれているんですよね。例えば、終身雇用。転職をするのは「面倒」なこと。履歴書を書いて面接を受けなければいけません。もちろんそれだけでなく、会社に就職すれば、そこで新たに人間関係を構築しなければいけません。学校を卒業して、給料が右肩上がりに増えていって、定年まで働くことができれば「面倒」は避けられますよね。
「終身雇用という制度があるのは、日本人が勤勉だからだ」という人がいますが、本当にそうでしょうか。終身雇用があるのは、「面倒」を避ける気質だと思っているんですよ。従業員だけでなく、会社側からしても、新しい人材を探さなければいけないので、それは「面倒」なこと。
土肥: 経営者と従業員の「面倒くさい」が合致したということですか?
アトキンソン: はい。なぜ日本でこれまで外国人観光客が増えなかったのか。その答えのひとつは「面倒だった」からでしょう。たくさんの外国人が日本にやって来れば、いろいろと変えなければいけません。外国人向けの施設をつくるのが「面倒」という意味だけでなく、価値観を変えることが「面倒」なんですよ。
繰り返しになりますが、戦後、日本経済が右肩上がりで成長したのは「面倒くさい」文化という強みがあったから。しかし、少子高齢化で「人口」という強みが失われつつある中で、この「面倒くさい」文化の転換が求められているのではないでしょうか。
(終わり)
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