「ホテルオークラ東京」を建て替えなくてはならない本当の理由:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
「ホテルオークラ東京」の本館が建て替えのために閉館した。海外メディアから「日本的モダニズム建築を守ろう」という動きがあったが、あっさりと工事に着手。その理由は……。
「国策」が大きく関係
「オークラ東京」は今回の建て替えについて「トップレベルのホテルを標榜するわりには施設が追いつていない」みたいな説明をするがしっくりこない人も多いだろう。世界の名門ホテルのトレンドに逆らい、さらに顧客でもある海外のファンたちを落胆させる。そんなリスクに加えて、新国立競技場計画の白紙を後押しした建築コストの世界的高騰という「逆風」もある。総事業費1000億円の巨額プロジェクトを成功に収める勝算はあるのか――。
結論から言ってしまうと、今回の建て替えは勝算があるとかないとかの話ではない。「国策」が大きく関係しているのだ。
遡(さかのぼ)ること3カ月前、不動産デベロッパー大手の森トラストは、国家戦略特別区域の特定事業として計画を進めている「虎ノ門四丁目プロジェクト」の計画名称を「虎ノ門トラストシティ ワールドゲート」に決定したと発表。これは地下4階・地上36階建ての大規模複合施設で、「国際的経済拠点としての発展が期待される、東京における重点エリア」(プレスリリースより)のランドマークになる予定だ。
この「世界に向けた門」のすぐ横にあるのが、「オークラ東京」である。報道によると、オークラ建て替えの検討は、2007年の世界金融危機から行われてきたという。2009年度に赤字転落しているので、グループのけん引役である「オークラ東京」の収益力を強化すべきとなるのは企業としては当然だ。11階のホテル経営より、定期的な賃料収入がある高層オフィスビルにしたほうが収益が安定するのは言うまでもない。そんなオフィスビル志向がわきあがってきたころに、お隣ではオークラの株主である森トラストが国家戦略特区で大規模な都市開発に乗り出す。両者の動きを「無関係」ととらえるほうが無理がある。
実際に森トラストの森章社長の過去の発言を振り返れば、今の建て替えを予見していたかのような言葉がある。『週刊ダイヤモンド』(2011年2月5日)でオークラを買収する考えはないのかという質問に対して、以下のように答えているのだ。
ない。ホテルは儲からない。ホテルは都市開発の添え物として考えるべきだ。割増容積率を活用して、土地代がタダになって初めて事業として成立する。
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