ワタミ復活のために求められる「理念経営」との訣別(2/4 ページ)
外食チェーン大手のワタミは、2015年4〜6月期の連結決算を発表しました。発表された連結決算を見ると赤字幅が拡大し、大変厳しい結果となっています。このような状況のもとで、ワタミの復活は本当に可能なのでしょうか?
ワタミの経営理念には、顧客満足(CS)の最大化の実現を目的とすることが定められており、その点においては、他企業のものと大きな差異はありません。しかし、CSを理念として掲げている他企業と決定的に異なる点は、ワタミの場合、他社と比較して顧客に提供するサービスの中核を為す料理やメニューなどの品質向上・改善に関する「拘(こだわ)り」がやや弱い、と見受けられる点にあります。
CSを追求している企業に共通する点として、商品やサービスの質に「強い拘り」をもっていることが挙げられます。例えばユニクロを展開するファーストリテイリングは、高品質の商品や素材の開発に、極めて熱心な企業として知られていますし、スターバックスコーヒーも、コーヒーやフードの「味」の維持・向上のために、大変な経営努力を重ねています。このように、CSを重視している企業ならばどこでも、自社製品やサービスの品質の向上や改善に「強い拘り」を持っています。
それに比べワタミの場合、「CSを重視した理念」を他社以上に強く訴求している割には、「料理の味覚向上」などの提供サービスの本質に関わる部分に、他社ほどの「強い拘り」が見えてきません。そのせいか、「ワタミ、料理」といったワードで検索を行うと、ワタミを利用したことのある顧客のネガティブなコメントが多数散見されます。理念に基づき、本気で「おいしい料理」の提供などに注力してきたのであれば、これほど多くのネガティブなコメントが散見されることはないだろう、と思います。
このことからワタミでは、理念を「料理の品質向上」といった顧客満足の向上に直結する領域で活用することはせず、従業員のマネジメント領域に限定して活用していたのだろうと考えられます。その結果、顧客満足度を向上させるために有効となる施策の実施がおろそかになり、客離れの加速化につながったのだろうと推察されます。
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