ワタミ復活のために求められる「理念経営」との訣別(4/4 ページ)
外食チェーン大手のワタミは、2015年4〜6月期の連結決算を発表しました。発表された連結決算を見ると赤字幅が拡大し、大変厳しい結果となっています。このような状況のもとで、ワタミの復活は本当に可能なのでしょうか?
ワタミ復活のための処方せん
現在ワタミは、不採算店舗の閉鎖や労働環境の改善等に取り組んでいますが、ワタミ復活のためには、それだけでは不十分であると言わざるをえません。前述の点から、ワタミが復活を果たすために必要とされることは、業務の改善レベルの施策ではなく、以下のような抜本的な改革につながる施策の実行になるはずです。
第一の施策は、創業者が策定した現在の「経営理念」を破棄し、従業員の意見を集約した新たな「経営理念」の策定を行うことです。これにより、新生ワタミの生まれ変わった経営姿勢を世間にアピールできると同時に、ブラック批判も払拭(ふっしょく)でき、ブランドイメージも変わってくるはずです。
第二の施策は、従業員満足(ES)を重視した経営姿勢を明確に打ち出すことです。労働環境や人事制度の改善等はもちろんのこと、店舗運営などに従業員の意見を積極的に取り入れていくことにより、従業員の「やる気」を引き出し、顧客により良いサービスを提供する環境を整備していくことです。
併せて、創業者であり大株主でもある渡邊氏の影響力を、最小限にとどめる施策も講じなければなりません。そのためには、金融機関や機関投資家等の協力が欠かせません。
現在のワタミは、会社存亡の危機に立たされています。ワタミの役員会はその状況をよく認識し、勇気をもって上記の施策を実行していく必要があるでしょう。それにより初めて、ブラック企業批判から解き放たれて、「新生ワタミ」として復活できる可能性が見えてくるのだと思います。(川崎隆夫)
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